「本当の正義はかっこいいものではない」やなせたかし先生が子供たちに遺してくれた言葉

子供たちが大好きな「アンパンマン」の生みの親であるやなせたかし先生。アンパンマンを初めて出版した時は、「グロテスク」「くだらない」と批判ばかりだったそうです。それでもやなせ先生が貫きたかったことは「正義とはかっこいいものではない」「自己犠牲なしの正義はありえない」というものでした。その思いを込めた名言を集めました。

アンパンマンの父、やなせたかし先生

アンパンマンの産みの親である、やなせたかし先生をご紹介します。

  • 出身:東京都北区
  • 享年:満94歳(2013年10月13日逝去)
  • 1966年 詩集『愛する歌』で出版界にデビュー
  • 1973年 子供向け「アンパンマン」を出版
  • 2013年 遺作「アンパンマンとりんごぼうや」発売。これが最後の作品となる

戦後、クズひろいの会社で働いた後、高知新聞に入社し、その後上京しました。

三越に勤めていたこともあり、宣伝部でグラフィックデザイン等をしていたそうです。三越で働く傍ら、新聞などに漫画を発表し、漫画家としての道を歩み始めました。

その後漫画を本業とするため三越を退社しましたが、仕事が無い時期も続き、厳しい時代もあったそうです。

そんな時には漫画ではなくても、放送作家や舞台美術の仕事も請け負い「困った時のやなせさん」と呼ばれていました。

サンリオと仕事をしていた時期は、お菓子のパッケージを手掛けたり、詩集を出すなど、漫画ではない活動も活発だったようです。

その後、フレーベル社から絵本「アンパンマン」を出版し、大ヒット。まさに「なんでもやさん」から絵本作家になられたんですね。

アンパンマンへのこだわり

子供向けのアンパンマンは1973年に出版されましたが、本当は1969年にアンパンマンは誕生していました。

しかしこの当時のアンパンマンは大人向けの作品であり、あんぱんが顔なのではなく、あんぱんを子供たちに配る「人」だったのです。

やなせ先生は初代アンパンマンを作った理由について次のように語っています。
(NHKの爆笑問題ニッポンの教養という番組で話された言葉です)

ぼくは老人なので、昔戦争に行った事がある。

正義というものは簡単に逆転するんだ。僕らが戦争に行く時にも、これは正義の戦いで、つまり困ってる民衆をたすけるために行くんだって言われて言われたんだ。
そのつもりだったんです。でも終わってみると正義は向こうの国にある。

すると、どっちでも正しいことは何かというと、
「ひもじい人を助ける」ことじゃない?それはどっちの国へ行っても正しいわけ。

だからですね。そういうヒーローを作ろうと思って、作ったんです。 出典: blog.goo.ne.jp

自らが戦争にいかれた経験から「本当の正義とは」ということを考えたやなせ先生。

その結果は「ひもじい人を助ける」ことだったんですね。ですから、ヒーローは勇ましくかっこいい存在ではなく「アンパンを配る人」だったのです。

その思いは、子供向けになったアンパンマンにも受け継がれています。

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子供にも伝えたい「本当の正義」やなせ先生の名言10選

ここからはさまざまなインタビューや書籍で誕生した、やなせ先生の名言をご紹介します。

1.ほんとうの正義とは・・・

ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そして、そのためにかならず自分も深く傷つくものです。 出典: blog.livedoor.jp

この言葉は第1作『あんぱんまん』のあとがきに綴られたものです。

やなせ先生が最初に描いたアンパンマンは、今のアンパンマンのように可愛らしいものではなく、胴が長くて衣装は薄汚れていました。

困っている人に顔を分けてあげるシーンも、今のように顔の隅っこだけではなくて、もっとガッツリとあげてしまい、顔がほぼ半分になって飛んでいる場面も。

その様子はグロテスクと言われ、編集者からは不評でした。

しかし、やなせたかし先生は『正義はかっこよくない、そして自己犠牲なしに有り得ない 』という信念から、アンパンマンを書き続けたのです。

2.バイキンマンにはバイキンマンなりの正義がある

アンパンマンもバイキンマンを殺したりしないでしょ。 だってバイキンマンにはバイキンマンなりの正義を持っているかも知れないから。 出典: www.news-postseven.com

正義というものは一つだけではない。これはやなせ先生が戦争に出兵したときに感じたものです。中国の人民を救うための戦争に出兵したはずが、日本はいつのまにか侵略者とされていました。

相手には相手の正義があったのです。正義は勝者にあり、すぐに反転してしまうもので、お互いに自分の正義を信じているものです。

それをばいきんまんという存在を殺さないということで表しているんですね。

3.不幸せでなければ幸福は分からない

不幸せでなければ幸福は分からない。ピンチを切り抜けることがギャグであり希望である。それがないと漫画は描けない。それを信じないと生きていかれない。(NHK100年インタビューより抜粋) 出典: ami-go45.hatenablog.com

戦争に出兵し、作家になってもなかなか売れず、多くのピンチを迎えてきたやなせ先生のこの言葉は、生きているみんなに気づきと希望を与えますね。

自分が今不幸せだと感じたら、その不幸せがあるからこそ幸福がわかると思い、とにかく日々を生きていくこと。いつか切り抜けられると信じて希望を持つこと。

これは人間が何かにつまずいた時に絶対に必要なことだと感じます。

4.現在と未来が全てだから・・・

現在と未来しかないの。 そうすると、現在とその未来をなるべく楽しく、なるべく面白く、生きたほうがいいんです 出典: shuchi.php.co.jp

やなせ先生は晩年のインタビューで、がんになった話や、心筋梗塞になった話、目が見えなくなった、耳が聞こえなくなった等の話をして、「ぼくはもう死んでしまう」と言います。

それなのにいつも、笑っているのです。

生きている限り、なるべく楽しく面白く生きようという思いが強く感じられます。アンパンマンのように明るく周囲を照らし続けてくれる、やなせ先生の強さを感じる言葉です。

5.アンパンマンが暴力的だ、と言っている人へ

アンパンマンが暴力的だ、と言っている人に、俺はこう言うんだ。

じゃああなたは風邪を引いたとき、ばい菌を殺しちゃかわいそうだから と言ってそのままにするんですか?

風邪薬を飲みますよね。


薬を飲むということは、ばい菌に対してアンパンチを喰らわせているのと 同じなんです。

かと言って、治ったらもう風邪を引かないかと言えば、また引くんですね。

アンパンマンとばいきんまんの闘いはそうやってずっと続いていく。
でもそれが健全な状態なんです。

国家でも、独裁国家で反対がないというのは危険な状態で、
その国はいずれ滅亡します 出典: kugyou.com

テレビ番組でやなせ先生が語った言葉です。

ばいきんまんを暴力でやっつけることを批判する意見もあります。しかし、現実の中にも、やなせ先生が例に挙げたように、風邪菌をやっつけたり、手洗いでウイルスをやっつける場面はありますよね。

そして、やっつけたとしてもウイルスはまたやってきますし、ばいきんまんは何度でもアンパンマンに勝負を挑みます。

悪と正義はこうして共存していくのです。

子供向けの絵に描いたような正義ではなく、「現実の正義」を目指して仕上げた作品だからこそ、ばいきんまんを自ら叩いてやっつけるシーンは、必要だったのかもしれません。

6.生きていることが、理屈なしに大切なのです

生きていることが、理屈なしに大切なのです。

今日まで生きてこられたのなら、少しくらいつらくても明日もまた生きられる。

そう思って、とにかく生きてみる。

そうやっているうちに、次が拓(ひら)けてくるのです。 出典: blog.livedoor.jp

やなせ先生の著書「明日をひらく言葉」につづられたメッセージです。

やなせ先生は「生きる」ことをとても大切にしています。やなせ先生自身、大好きだったお父さんを幼い時に亡くし、弟は戦争で亡くしました。

うまくいかない時も、辛くて死にたくなる時も「いきていることが大切」という言葉、とても重いものです。

やなせ先生もアンパンマンが批判される時代や仕事がない時代を乗り越えて拓いた道を生きた本人。私たちにも、どんな時も生きることが大切で、とにかく命を抱きしめ、希望を捨てないことを教えてくれています。

7.正義のための戦いなんてどこにもないのだ

正義のための戦いなんてどこにもないのだ。正義はある日突然逆転する。正義は信じがたい。逆転しない正義とは献身と愛だ。 出典: www.world-blog.jp

戦争の恐ろしさを知っているやなせ先生の言葉です。

正義のための戦いなんてなく、「正義のため」に爆弾を落とせば罪のない子供が死ぬことになり、人々が飢えてしまうのです。

正義のために人を殺すことは、本当の正義ではない。戦争による「正義」は、勝ち負けによって簡単に逆転してしまうのです。

逆転しない正義は、戦うことではなくて「愛」と「献身」。傷ついた人を癒し、飢えた人に一切れのパンをあげること。

これは戦争に反対するやなせ先生が亡くなるまでずっと語り続けてきた言葉です。

8.絶望のとなりには必ず希望がある

絶望の隣に

だれかが

そっと腰かけた

絶望はとなりの人に聞いた。

『あなたはいったい誰ですか?』

となりの人は微笑んだ。

『私の名前は希望です』 出典: seseragi-sc.jp

やなせ先生が著書の中に書いた詩「風の口笛」です。

絶望のすぐとなりには希望がいる。絶望して泣いている時にも、その隣には必ず微笑んでくれる希望があるということを教えてくれる言葉です。

戦争、飢餓、父親や弟との別れなど、絶望を数多く経験してきたやなせ先生が、子供たちに伝えたいことがこの言葉に詰まっているようです。

9.アンパンマンに宿した永遠の命

僕は死んじゃいますしね。 でもね、アンパンマンそのものは、どうも生きるんじゃないかと思いますよ。 出典: www.nhk.or.jp

やなせ先生にとってアンパンマンは「息子のようなもの」なのだそうです。

世代を超えて愛され続けるアンパンマンは、自らの死後も生き続けることを、やなせ先生は望み、信じていたんですね。

その希望は見事に今叶い、やなせ先生が亡くなった後も変わらずアンパンマンはみんなに愛され続けています。
やなせ先生はアンパンマンに、永遠の命を宿してあげたんですね。

10.生きとしいけるものには 天命がある

見おぼえのある
絶望の岸
ここまで何度か
追いつめられて
助からないと思ったが
奇跡的に
九死に一生
なんとか生きのびてきた

生きとしいけるものには
天命がある
もはや
無駄な抵抗はせぬ
ゼロの世界へ
消えていくでござる
拙者覚悟は
できているから
あせらず
しばらく
お待ちくだされ 出典: ameblo.jp

やなせ先生が生前に書いた「天命」という詩です。

なんどもピンチを切り抜け生きてきたやなせ先生。どんどん年老いて、もはや自分の死期を感じてもなお、仕事をし続けてきたやなせ先生。

仕事が大好きだったそうです。もう死ぬ覚悟はできていると、たくさんのインタビューで応えながらも、まだまだアンパンマンと共に生きたいという思いを持っていたのでしょうね。

この詩の言葉の重みは、やなせ先生が亡くなってさらに増したのではないでしょうか。生きることにとにかく一生懸命で真摯だった、やなせ先生の人生をそのまま詠った詩のようですね。

今も生き続ける、やなせ先生の温かい正義感!

やなせ先生が亡くなり、たくさんの人は大きな衝撃を受けました。

アンパンマンの声を担当している女優の戸田恵子さんは「アンパンマンは泣くと(涙の水分で)顔が重くなるから泣かないよ。でもふとした瞬間に涙がこぼれそうになる」と話されたそうです。

スタッフの方や声優の方、そしてたくさんのアンパンマンファンに惜しまれて旅立っていったやなせ先生。

しかし、やなせ先生が子供たちに伝えたかった正義感や、命を大切にする気持ちは、アンパンマンを通じてこれから先の子供たちにも脈々と受け継がれていくことでしょう。

やなせ先生の言葉を、アンパンマンを通じて、これからを生きる子供たちにも伝えていきたいですね。

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