保育士資格はあるけれど・・・。潜在保育士が増えていくのはどうして?

連日のニュースで待機児童問題や保育園不足が叫ばれていますが、特に足りないのは保育士の数と言われています。資格を持っている『潜在保育士』。その数は約68万人と多いにも関わらず、何故現場で働く人が少ないのでしょうか。今回は保育士として現場で勤めてきた私の観点からこの問題を考えていきたいと思います。

保育士が置かれている厳しい現状とは

現在、現役で働いている保育士の数は約40万人とされています。

雇用体系は正規職員、臨時職員、派遣職員、パート職員など幅広く、働く場所も認可保育所(公立・私立)、認証・無認可保育所等と様々です。

基本的な労働時間は8時間でシフト制となっていますが、実際は就業前後のサービス労働は当たり前です。

また拘束時間が長く、責任も大きくなる正規職員になるよりも、派遣やパートといった立場で働くという方も増えているように思えます。

給与面は一般職に比べるとだいぶ低く、平均215万円ほど。手取りの給与が月額14万円という保育士のニュースも話題になりました。

実際、都心よりも地方の方が給与面の低さが目立っていると感じます。

働く立場が変わって思ったこと

私自身、保育士養成の短大を卒業した後に新卒採用で公立保育所の臨時職員として働き始めました。その時の経験談をお話したいと思います。

駆け出しの新人時代

保育士

臨時職員として働いていましたが、早番・普通番・遅番は正規職員と同じように回ってきますし、始業時間が8:15のところを30分前には絶対出勤して室内の環境整備や保育の準備を整えます。

その後は早番保育を受けている子供達を迎えに行き、自分のクラスで保育を開始します。

慌ただしく午前中の活動を終え、昼ご飯を食べさせてその後は子供を見ながら保育士も昼食。ゆっくり食べられる訳もなくかきこんで食べていました。

昼休みも1時間保障されているものの、眠れない子供がいたら傍について寝かしつけをしたり、保育日誌や連絡帳を記入したりという時間を考えると15分ほどしか休まなかったことも。

終業時間は17:15で基本的に残業をすることはありませんでしたが、残業をしている正規職員に「お先に失礼します」と申し訳なさそうに声をかけていくのが慣例となっていました。

給与や人間関係の問題もありました

保育士

給与は日給制ということもあり、月によって月額がバラバラ。

手取りが16万円の時もあれば14万円という時もあり、ボーナスももちろん無いので実家暮らしでなければ生活出来ませんでした。

また、女性だけの職場ということもあってか人間関係の難しさも感じました。

当時の職場は正規職員よりも臨時職員の方が多く、正規職員に対する不満や不平をぶつける人や本人が不在のところでの陰口の言い合いが日常茶飯事でした。

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転職して正規職員へ

保育士

現在は転職をし、正規職員として働いていますが以前よりもサービス労働は増えました。内容は事務処理や保育準備といったものが大半です。

臨時職員時代には無かった職員会議や研修なども増え、大変だなと感じることが多いものの保育について深く意見交流をする場にもなり、毎日が勉強の連続です。

給与面では安定した月給をいただき、産休育休制度などの福利厚生も整っているので、先輩保育士のほとんどが産後は復帰して働いている環境です。

働く立場が変わっても自分が臨時職員時代に感じたことを今も忘れず、一緒に働いている派遣職員やパート職員に敬意を払うよう心がけています。

潜在保育士とは?どうして「潜在」となってしまうの?

潜在保育士とは保育士や幼稚園教諭といった免許を取得しているけれど、保育園などで働いていない人を指します。

その数は全国で約68万人いるとも言われています。

現役で働いている保育士が約40万人とされていますから、その数の多さに圧倒されますね。

それだけの潜在保育士がいるのにも関わらず、どうして保育士として働かないのでしょうか。深く掘り下げていくとそこには多くの理由がありました。

1.給料が安く、仕事内容に見合っていない

お金

私の経験談にもあるように給料が安すぎると思います。子供達を怪我なく安全に、楽しく生活出来るように最善の手を尽くしているにも関わらずです。

国は新たに保育士に対して給料を上げていくという話になっていますが、きちんとそれがすべての保育士に行き渡るのかどうか疑問です。

また、ただ単に給料を上げただけでは保育士が増えるとは限りません。

2.責任の重さが全て正規職員へ。

悩む

国はただ「人を増やせば良い」と考え、准保育士制度などを進めようとしています。

また子育て経験のある方を積極的に保育士とみなして一緒に勤務させたり、産休育休代替として保育士の派遣会社から派遣職員を雇っている自治体もあります。

しかし、現場ではそういった正規職員ではない職員が増えることによって、何か問題が生じたときの責任が全て正規職員へとしわ寄せがきています。

育児と保育は似ているようですが違うものです。私達保育士は日々子供たちのために学び、より良い保育が出来るよう奮闘しています。

同じ方向を向いて保育をしていかなければならないという点で、共通理解をもつための時間や知識を身につけてもらわなければこの問題は解決しないと思います。

3.自分の子育てを大事にしたい。

育児

保育士も子供がいる方は多くいます。保育士を職業と選ぶくらいなので子供が大好き。自分の子供は自分の手でなるべく育ててあげたいという気持ちが強いと思います。

仮に産休・育休制度が整っていても預ける場所が無く困っているのは保育士ママも同じなんです。

中には自分が勤務している園に預けられるケース(私立が多いようです)が稀にありますが、同じ園内にママがいるのに子供の立場から考えると非常に切ない気持ちになると思います。

私も娘が生まれて子育てをしていく中で「自分の子供も十分に育ててあげられないなんて悲しすぎる」と感じることが多かったです。

4.悩みの尽きない保護者対応。

保育士

子供の保育をしていることだけが保育士の仕事ではありません。保護者対応も必要なスキルとなっており、その対応に悩まされることも多々あります。

例えば「スプーンや箸といった食具の使い方」「トイレットトレーニングの進め方」といった育児面での保護者対応ですが、「保育園だけに任せておけば良い」という人が増えているように思えます。

確かに働いているママにとって保育園でやってもらえれば助かることです。しかし、保育園のみで進めても家庭で出来なければ子供の自立には繋がりません。

また、理不尽な要求をする保護者もおり、クレームという形で役所に投書や電話を入れたりするケースもあります。

こういった保護者対応に悩み心的ストレスを抱えて退職をする人が後を絶ちません。

5.肉体的にも精神的にも辛い。

保育士の仕事は体が資本です。抱っこやおんぶをするのは日常茶飯事、子供と一緒に鬼ごっこをして走り回るなど体を動かしていることがほとんど。その影響で腰痛に悩まされる方が多いようです。

それでも仕事を休むわけにもいかず、腰痛防止バンドや整骨院に通ってメンテナンスを欠かせないという先輩もいたほどです。

また職場の人間関係で悩むこともあり、新人時代は職場で何回泣いたか数え切れません。

多くは自分の手際の悪さもあるのですが、威圧的な言葉で指導をしてくる先輩もおり「もう辞めたい」と思ったことが何度もありました。

私の場合、そういった先輩以外にも頼りにできる先輩がいたので悩んでいる時は相談に乗ってもらえましたが、言えずに精神的に参ってしまい病欠や退職に至る人もいます。

子供達を健やかに育てていくには、保育士自身が肉体的にも精神的にも健康であることが求められていると思います。

ツイッターでも潜在保育士からの声が・・・

保育士

多くのメディアで『潜在保育士』について取り上げられるようになり、ツイッターでも反響がみられています。

その中にはご自身が現役で働いている保育士や潜在保育士であるという方もおり、リアルな声が聞こえてきました。

「理想の教育」の正反対。

保育士

本当にその通りだと思います。子供達にやってあげたいことは沢山あるのに現実はそう言うわけにもいかず…。胸が締め付けられる思いですね。

事務処理、持ち帰り当たり前、クレームなど数多の問題。

事務

正規職員への仕事の比重が多く感じられます。これが当たり前になってしまっている風潮をどうにかしていかなければいけません。

政府は現場をもっと知るべき。

国会議員

共感ボタンを連打したいほど共感しました。

現場を知らない人たちが話し合っても一向に解決には向かいません!政治家に「一日保育士体験」を義務付けてほしいほどですね。

待遇改善も大切!だけどもっと大事なことは

保育士

『潜在保育士』について話してきましたが、保育士は子供達にとって両親とはまた違った特別な存在の大人であると私は考えます。

仕事内容は大変だけれど、子供達の成長を間近で感じられるこの仕事を誇りに思っていますし、やりがいも感じています。

それでもこれだけ多くの潜在保育士が存在するということは「やりたくても出来ない」という問題につながっています。

もちろん待遇改善は大切だと思います。生活していく上でお金は大切ですし、モチベーションアップにもなります。

しかしそれはただのばらまきに過ぎません。もっと政府は保育士の仕事について評価するべきだと思います。

保育士はただ子供達の世話をしているだけの仕事ではありません。子供一人ひとりに合った関わりや保育について日々学んでいます。

世間の保育士に対するイメージを覆していかなければ、根本的な潜在保育士の問題解決には至らないと私は考えます。

「潜在保育士」 についてもっと詳しく知る

本記事は必ずしも各読者の状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて、医師その他の専門家に相談するなどご自身の責任と判断により適切に対応いただきますようお願いいたします。なお、ママリ編集部のコンテンツに対する考え方(または取り組み)についてはこちらもご覧ください。

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