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子供を社会全体で見守り育てていく、それを「保育」という。

まだ子供のいない方、妊娠中の方、子育て中の方、皆さんは「保育」をどのように捉えていますか?「保育」を、家族や保育施設の人たちが行うもの、と考えている方は多いのではないでしょうか。しかし、今回行われた保育環境について考えるイベント「みんなの保育の日」で語られたのは、社会全体で子供を育てようという新鮮なメッセージでした。

4月19日「みんなの保育の日」

2017年4月19日水曜日、平日の13時から六本木で保育関係者が登壇する子供と保育と社会についてのイベントがありました。

4(フォー)19(いく)という語呂に合わせて、4月19日は「みんなの保育の日」として、日本記念日協会に正式認定されています。

イベントのコンセプトは、なぜ社会で子供を育てることが大切なのかを考えること。保活に苦戦するママだけでなく、子育てをする環境に悩むママたちに、このイベントのメッセージをお伝えします。

保育関係者が総勢に…!

イベントには、保育士、保育施設運営者、大学教授、ジャーナリスト、メディアの編集者などの保育関係者が集まりました。

中でも、グローバルキッズ取締役の田浦秀一さん、茶々保育園グループCEOの迫田健太郎さん、リズム学園学園長の井内聖さんの3名は、保育施設を運営する側の視点から。

ジャーナリストの治部れんげさん、「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。」の著者である境修さん、日経DUAL編集長の羽生祥子さんは、日本の保育環境を社会問題として取り上げていました。

課題は「保育」を背負う人の少なさ

クレヨン amana images

「子供は社会で育てよう」というイベントのテーマ通り、課題として登壇者が口を揃えたのが「保育を誰が行うのか」でした。現状、保育は子供の親やその家族、それから保育施設が担うものと認識されているかと思います。

保育園を開園しようとすると、地域に反対されるニュースは皆さんもご存知でしょう。「保育園に入りたいのなら田舎に引っ越せば良い」というような声が出てくるのが現状です。保育を地域や社会が担うものではなく、家族の問題だと捉えられている良い例ではないでしょうか。

また、「2001年から待機児童を解消すると言って約16年、驚くほどにも増えているのは保育園ではなく、保育士でもなく、児童たちです」と懸念するのは羽生さん。保育園不足と待機児童を社会問題として認識が足りていないことの表れなのかもしれません。

そして、増え続けている待機児童の他にも、発表されていない潜在待機児童が約80万人いると説明する治部さんは、日本国民の消費税を1%上げたら問題は解決するのでは、と話します。

消費税の増加が適切な対策かどうかは分かりませんが、そのような議論が行われていないことも、「保育」を社会の課題として捉われていない証拠でしょう。

では、「社会で子供を育てる」とはどのようなことなのでしょうか。

子供だけの世界で子供は育たない

編集部撮影

「社会で子供を育てる」ということは、「地域と保育施設」の関係性がより協力的であることではないでしょうか。

保育施設の運営を成り立たせるには、どうしても地域の方の協力なくしてはできないと口を揃えて登壇者の田浦さん、迫田さん、井内さんは言います。新しく開園する場合は、予定地を決めてから、幾度の説明会を開き、納得のいくまで話し合います。

保育園がどれだけ必要なのかを説明し、地域の人が納得したあとも、子供たちを社会の一員として積極的に施設交流を開いたり、地域の人たちに感謝の気持ちを込めてマルシェを開いたりとコミュニケーションを続ける。他人とのコミュニケーションや子供たち同士でのコミュニケーションを生み出し続けることで、子供たちを育むことができると3名は話します。

「子供だから…」という考え方ではなく、子供と大人は同等の立場であり、子供は地域の一員であり、社会の人であると考えることが大切だと茶々保育園の迫田さんは話します。子供をだましだまし保育するのではなく、社会や地域というホンモノをたくさん見せてあげることが大切であり、そのホンモノを見せるためには地域の協力が必須だと。

子供だけの世界で子供は育たない。

保育園を新たに開園するためにはもちろん、その後の子供たちの保育や教育、成長にも絶対的に地域住民の協力が必要なのです。

パパが言う「預けられないので働けません。」の効力

編集部撮影

「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。」の著者である境さんは、若い夫婦が急激に増え、都心よりで働かないと通勤が大変という状況がある中、都心に保育園を作ると地域の方からの反対の声が多いと話します。

ジャーナリストの治部さんは、待機児童を減らしたいのであれば子育て世代だけでなく、それ以外の世代の人たちを味方にすることが大切であると話し、日本企業の働き方について指摘しました。どちらも子育てと仕事(職場)の両立が難しい現状を懸念しています。

待機児童という沼にハマると、結局仕事ができないのはママ。

そこで治部さんは、子供を預けることのできなかったパパたちが上司に「子供が預けられないので働けません。」と言ってみてはどうかと提案します。ママだけでなくパパも職場に向かって発言していくことで、子育て世代以外の人が、現状の保育の実態に危機を感じるはずだと言います。

待機児童で騒いでいるのは結局女性。保育園に入らせるために、試行錯誤して働くのも女性。この状態では、なかなか国全体で課題を共有するのは難しい。

パパたちも同じように危機感を持ってもらい、会社に訴え、そして会社側が危機感持ち、何かアクションを起こす。これも、社会で子供を育てる環境をつくるための1つの手ではないでしょうか。

保育者と保護者が共同運営する「共同保育」

編集部撮影

皆さんは「共同保育」をご存知ですか?

境さんがおすすめする共同保育とは、保育者と保護者、地域の方が運営、保育をする場所です。小規模で異年齢というのが特徴。認可外ですが、安心して自分の子供を預けられる共同保育所では、保護者も運営に携わるため、保育者と密にコミュニケーションを取ることができます。

また、年齢でのクラス分けがないので、子供同士の関係も子供たちが自然に作るようになると堺さんは話します。

地域の方と保護者、そして保育者が協力して造り出す保育所は新しい保育のあり方のひとつでしょう。

私の娘が通っている保育所では、保育者と保護者のコミュニケーションをスムーズに行うよう、毎日帰りに5分ほど話す時間をとっています。子供1人1人の保護者とです。ママにとって朝の5分と夕方の5分ほど貴重な時間はありません。保育者と話す機会は大切だと思いますが、毎日はさすがに…と思っていました。

しかし、共同保育は保護者も運営側に立っているので、常にコミュニケーションが必要で、運営会議等もあるようなので驚きました。

保護者が運営に関わることで、預ける場所から一緒に作っていく場所に変わり、子供を一緒に育てるという感覚が深まるのではないでしょうか。

地域が子供を見守る社会

子供 amana images

子供を地域で育てる限り、「地域の人の協力」それに限る、と井内さんは話します。保育園を作るだけが待機児童や保育のゴールではなく、その後どう関わっていくのかも非常に重要なことなのだと。

保育園さえ増えれば、待機児童が解消するわけではありません。安心して安全な場所に預けたい、というのは大前提ですが、その大前提が子供を育てる場所では、難しいのです。ご存知の通り、子育ては一筋縄ではいきません。

だから、様々の人たちの理解と手が必要なのです。

そして、そういう環境こそが「社会で子供を育てる」ということなのではないでしょうか。

取材後記

小さな出来事から感じる「社会で子供を育てる」ということ PIXTA

今回のイベント、会場は六本木でした。

来場者の9割ほどは地下鉄で来られたのではないでしょうか。私も地下鉄を利用して会場に向かいました。特に私が利用した大江戸線の六本木駅は日本で最もホームが深いそうです。

私にも子供がいます。

会社から会場に向かう長い深い道を歩いている時に感じたのは、子供と一緒にはとても来られる場所ではないということ。1人でもかなり遠く感じた道のりを、子供と一緒だったら気が遠くなってしまうでしょう。

駅にはエレベーターが設置されていますが、ベビーカー2台程しか乗せられない小さいもの。利用者が子供連れ以外にもいることと考えると、エレベーターを乗るのにどれだけ待たされるのでしょうか。エレベーターの場所も分かりにくく、探すのも大変です。

この日、ベビーカーで恐縮そうにエレベーターへ乗るママの姿を見て、数年前の自分を思い出し心苦しくなりました。

子供がいけないのか、子供を連れている母親がいけないのか…。迷惑だろうな、と周りに気を遣い、いつも母親たちは頭を下げながら道を歩くのです。

こんな毎日の出来事が「子供は社会で育てる」ということに紐づくのか、と考えさせられた瞬間でした。

保育に対する考え方を、保育に関わる人達から変え、ママ達から変え、そして子育て世代ではないみんなの考えも変えることができたなら、「子供は国の宝だ」という言葉が綺麗事ではない日が来るのではないかと私は思います。

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