未受診妊婦と赤ちゃんの命...大切な2人の命を守るには

一度も妊婦健診に行かないまま分娩を迎えてしまう「未受診妊婦」。母親はもちろん赤ちゃんも危険にさらしてしまう未受診妊婦を増やしてしまう原因は、経済的な問題や知識を得る場所が足りないことにあるようです。また、家庭や周囲の環境の問題で誰にも相談できず、孤独になってしまうことも選択肢を狭めていると考えられます。未受診妊婦を減らし、母親と赤ちゃんを守るためには何ができるのかを考えました。

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妊婦健診に行かない「未受診妊婦」

未受診妊婦とは、妊娠をしたのに妊婦健診に行かない妊婦のことを指します。医療機関を十分に受診しないまま自宅で出産をしたり、車中で出産になったりするケースも確認されています。

分娩が始まって初めて病院を受診したり、救急車を呼んだりする場合には「飛び込み出産」と呼ばれ、妊娠中の経過がまったくわからぬまま出産をすることになり、妊婦と赤ちゃんにとって危険です。

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未受診妊婦のリスクは

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大阪府は2010年、府内の未受診妊婦の出産に関する実態調査を行いました。その結果、妊婦健診を受けずに飛び込みで出産を行うことの様々なリスクが明らかになりました。

未受診妊婦を受け入れない医療機関は多い

調査によると、大阪府で分娩を取り扱っている160の施設のうち65の施設は、未受診妊婦を受け入れたことがない、あるいは受けないとの回答でした。

2010年、大阪府内の分娩1000件あたりの未受診妊婦発生は2件。約500人に1人の妊婦が未受診という状況でしたが、それでも受け入れをしていない病院は多く存在します。

ハイリスクな分娩ではNICUの設備など高度な医療が必要な場合があり、設備がない病院や、設備があったとしても空きがない病院では分娩を断るケースがあるようです。

死産の確率は妊婦健診を受けていた場合の約5倍

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調査によると、未受診妊婦とそれに準ずる状態の妊婦185例のうち、3例は死産。計算上、1000分娩あたり19.7例は死産ということになります。妊婦健診を受けた場合の死亡率は2008年の調査で1000分娩あたり4.0例。約5倍もの確率で死産してしまうということになります。

仙台市立病院が行った別の調査では、2003年1月より2007年12月の5年間に飛び込み出産で生まれた赤ちゃん60人のうち、小児科入院は37%,低出生体重児は18%,早産児は13%といずれも高頻度で医療が必要になっていたことがわかっています。

未受診で出産することは、赤ちゃんを命の危険にさらすことになるのです。

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なぜ未受診妊婦になるのか

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大阪府の調査では、未受診妊婦自身に「なぜ未受診だったのか」を問いました。その結果以下のような回答がありました。

  • お金がない、経済的に苦しかった 33%
  • 妊娠に気づかなかった、妊娠したら何をしたらよいか知らなかった 21%
  • 育児(他に子供がいる場合)、引越し、介護などで多忙だった 10%
  • 離婚、不倫など家庭の事情 10%
  • 相談相手がいなかった 7%

経済的な理由を挙げる未受診妊婦が多くいることがわかります。妊婦健診は自治体からの補助が出るものの、全く無料で出産までの健診を受けられるわけではありません。

ライフネット生命が2013年に行った調査では、健診や通院・入院・分娩にママ達が支払った費用は平均27.3万円であることがわかりました。6~10万円と答えた方が全体の20.2%と最も多い一方で、16%の方は41~50万円負担したと答えており、大きな開きがあります。

また、未受診妊婦の中には望まない妊娠であったケースも多いといわれていますが、中絶費用も一般的な病院で10~11万円程度かかります。中絶、健診どちらの費用も支払うことができず、結果として未受診妊婦となってしまったケースも多いかもしれません。家庭の事情で未受診、相談先がなかったからという声があることから想定すると、お金の面でも誰かに助けを借りることが難しい状況であったと考えられます。

その他、妊娠に気が付かないケースや、妊娠がわかっても何をするべきかわからなかったという回答も5人に1人にのぼります。未受診のままでいることの危険性や、赤ちゃんを守るために必要なことを知る術はなかったのでしょうか。

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望まない妊娠をしない、赤ちゃんと女性を守るためのしくみづくりを

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未受診妊婦について、まず残念だと感じるのは「望まない妊娠」であることです。経済的な問題で中絶されず、出産に至ったとしても、出産した母親が子供を育てることはできないケースもあるでしょう。

赤ちゃん自身は10ヶ月間、お腹の中で精一杯成長してきたのですが、まず、愛してほしい母親に愛されないことは、心が痛みます。そして望まない妊娠をして出産した女性も、心と体に深い傷を負うことになります。そうなる前に、まずは望まない妊娠をしないためのしくみが必要です。

現在の避妊方法としてもっとも低価格な方法はコンドームを使うことです。これは男性側に大きな責任があり、性行為によって妊娠の可能性がある以上は男性が責任を持ってするべきです。しかし、実際には正しく使われない、または使用されないことで妊娠するリスクがあります。一方で、女性側が行うことができる避妊方法であるピルやリングといった方法は、一定のコストがかかります。

妊娠を望んでいない女性のために、もう少し低価格で避妊できるしくみがあれば、望まない妊娠を減らすことができるかもしれないと思います。

妊娠して、中絶せずに赤ちゃんを産むのであれば、赤ちゃんと女性を守るための制度でしっかりと健康を守り、支えてあげる社会制度が必要です。現在でも、健康健康に入っていれば、出産資金の貸付制度を利用できる場合がありますが、それを知らない人が多いことも事実でしょう。こうした制度を誰にでもわかるように、周知するべきなのではないでしょうか。

また、出産した後に母親、または父親が育児をすることができない状態であれば、赤ちゃんを大切に育て、幸せにできる施設や制度も大切です。現在では一時的に子供を育てられない場合に、その子を預かり養育してくれる里親制度や、養子縁組をして継続的に子供を育ててもらうことができる制度があります。子育てができないからといって、子供を幸せにできないわけではありません。

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未受診になる前に相談できる窓口を

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大阪府では未受診妊婦の問題を解決するため、2011年10月から「にんしんSOS」という相談窓口を設置。電話やメールで、名前を名乗ることなく妊娠に関する相談をすることができます。

「産もうかどうか悩んでいる」
「妊娠したけれど自分では育てられない」
「出産したいが費用がない」

このような相談に無料で答えてもらうことができます。この窓口を設置した翌年から2年連続で未受診妊婦は減少しました。産めないと考えている妊婦に対して、どのような選択肢があるのか案内する窓口があることで、未受診のまま分娩に至ってしまう妊婦が減り、結果としてハイリスクな分娩が減ったことになります。

このような取り組みはまさに、女性と子供を救う取り組みですよね。ぜひ他の自治体にも水平展開され、どの自治体で思わぬ妊娠をしてしまったとしてもすぐに相談できる窓口があるとよいと思います。

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生まれる前の命に目を向けて、大切な2人を救う手を

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未受診妊婦問題は、「妊婦」だけにとってのリスクではなく、お腹に宿っている小さな命も危険な目に遭わせてしまう問題です。命を宿している女性はもちろん、出産を決めた以上はお腹の赤ちゃんの命も同様に、社会が救うべき命だといえます。

大切な2人の命を救うには、たくさんの手が必要です。自治体や相談窓口が、母親に選択肢を伝えること。社会制度が母親とお腹の赤ちゃんの健康を守ること。医療が出産を助け、赤ちゃんが生き始めるサポートをすること。その他にも必要な手がたくさんあるでしょう。

全ての赤ちゃんが母親と共に暮らすことは、現実的に難しいかもしれません。しかし、多くの手が母親と赤ちゃんを支え、生きていける道を照らしてあげることが、2人の生きる希望につながるのではないでしょうか。

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