母体保護法で守られない命がある、悲しい選択の前にできることを

母体保護法は、女性の生命や健康を維持するため、不妊手術や人工妊娠中絶を条件付きで認める法律です。しかし、この法律で守られない命があります。それは、お腹に宿った命です。人工妊娠中絶では年間約18万人の胎児がなくなっています。女性には、悲しみや罪悪感から心理ストレス症状が出る場合があります。中絶は「育てられない」と判断した人たちにとっては必要な処置ですが、それ以前に望まない妊娠をしないための対策をすることが必要なのではないでしょうか。

PIXTA

母体保護法とは

女性の生命、健康を保護するための法律の中に「母体保護法」があります。母体保護法の中には、不妊手術、人工妊娠中絶、家族計画指導にかかわる事項が記載してあります。

不妊手術、人工妊娠中絶は、母体保護法の中では以下のことを指すとされています。

この法律で不妊手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で厚生労働省令をもつて定めるものをいう。
この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。 出典: law.e-gov.go.jp

不妊手術は医師が行うことができ、人工妊娠中絶は、さらに都道府県ごとの医師会が指定した「指定医師」のみが行うことができると定められています。

不妊手術や人工妊娠中絶を行う条件についても、法律の中で決められています。

母体保護法に定められた適応

法律 PIXTA

不妊手術を行う条件については以下のように決められています。

一  妊娠又は分娩が、母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの
二  現に数人の子を有し、かつ、分娩ごとに、母体の健康度を著しく低下するおそれのあるもの 出典: law.e-gov.go.jp

人工妊娠中絶を行う条件は以下のように決められています。

一  妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二  暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの 出典: law.e-gov.go.jp

不妊手術、人工妊娠中絶ともに、誰でも希望すれば受けられるものではなく、受けてもよい条件が決められています。日本産科婦人科学会雑誌に掲載された「診療の基本」では、人工妊娠中絶について「母体保護法」に規定された条件に当てはまる場合のみ認められているもので、患者の希望によって行うものではないと明記しています。

つまり、母体保護法に当てはまらないと指定医師が判断した場合は、本来、人工妊娠中絶を行ってはいけないことになっているのです。

出典元:

日本の中絶件数とその理由

中絶 PIXTA

条件付きではありますが、人工妊娠中絶を行うことは、母体保護法の中で認められています。日本では今も、さまざまな理由で妊娠を継続できない女性が、指定医師の手によって人工妊娠中絶の手術を受けています。

しかし、女性1人で妊娠することはありませんし、何もしていないのに妊娠することはありません。なぜ、授かった命をこの世に産まないという選択をすることになるのでしょうか。

日本人の死因2位に近い、中絶件数

厚生労働省によると、平成26年度の人工妊娠中絶件数は、181,905件。平成23年以降、中絶の件数は減り続けていますが、今でも年間で約18万人の胎児がなくなっています。

18万人という数字は、厚生労働省が発表した平成26年の死因第2位、心疾患の196,760人に近い数字です。死因第1位が悪性新生物(癌)で367,943人、3位は肺炎で119,566人。

2位と3位の間には、実は中絶となった胎児18万人が入るのですが、胎児はまだ生まれていないため、この数字にはカウントされません。しかし、命の重みは、生まれてきた前も後も、変わらないように思えませんか。

中絶をした理由

女性 後ろ姿 PIXTA

宮崎県が平成26年9月から平成27年5月にかけて行った調査で中絶経験をもつ196人の女性が挙げた理由は下記の通りでした(複数回答)。

  • 子供は欲しかったが、経済的な理由で産めなかった:102人
  • 産み育てる自信がなかった:59人
  • 子供はいるのでこれ以上欲しくなかった:35人
  • 望んだ妊娠ではなかった:31人
  • 産みたかったが周囲(パートナー以外)が反対した:30人
  • 産みたかったがパートナーが反対した:29人
  • 仕事を辞めたくなかった:25人

経済的な理由をあげる人が最も多く、次に産み育てる自信がなかったという声がありました。複数回答であるため、単独の理由ではなく複合的に「お金がなく、育てられる自信がない」という状況もあったかもしれません。

他にも周囲の反対や、先に生まれた子供の子育てや仕事を理由とする回答がありました。

避妊しない理由

コンドーム PIXTA

同調査で、人工妊娠中絶を選択した196人に「今回の妊娠について避妊をしましたか」と質問すると、以下の結果になりました。

  • いつも避妊していた:36人
  • 時々避妊していた:86人
  • 避妊していなかった:69人
  • 無回答:3人

いつも避妊していたと答えた方がいる一方、毎回は避妊していなかった、もしくは避妊しなかったという方が155人にのぼりました。妊娠は一度だけの行為でもあり得るもの。毎回避妊をしなければ、妊娠の可能性は十分にありますし、避妊をしていても100%でないこともあります。

また、避妊をしなかった人になぜかを聞くと、以下のような回答がありました。

  • 相手が協力してくれない:18人
  • 妊娠しないと思った:16人
  • めんどうだから:4人
  • 費用がかかるから:1人
  • わからない:17人
  • その他:7人

相手の協力がないことや、妊娠はしないと思ったという理由があがりました。避妊は女性だけで行うことが難しく、男性の協力が必要です。避妊の必要性を認識しながら、パートナーに要求することができなかったのかもしれません。

また、生理周期上、当日は「安全日」だと感じたとしても、避妊は必ず必要です。排卵日はずれる可能性があり、絶対に妊娠しない日を特定するのは非常に困難です。また、膣の外で射精しても、射精前に精子が膣内に入っている可能性があるため、確実な避妊方法とは言えません。精子が膣内に入らないようにコンドームを着用するか、女性側がペッサリーなどの避妊方法を活用する必要があるでしょう。避妊薬については専門医に相談をしましょう。

出典元:

中絶後、ストレス症状が現れることがある

青空 PIXTA

中絶を行うことは、本意なことではない場合が多いでしょう。お腹の中に命として存在し、一生懸命生きようとしていた子を、産んであげることのできない状態にしてしまうことは、辛いものです。

中絶のあと、自身の悲しみや罪悪感から、ストレス症状が現れる場合があります。PAS(中絶後後遺症候群)とは、中絶によって心理的な不調のことを指します。中絶後、2割程度の人がPASとみられる状態になるといわれています。

妊娠を継続しないことを選択した女性は、手術によって体が傷つく以外に、心の面でも大きなダメージを受けています。周囲に相談ができればよいのですが、中絶の事実を人に話すことは勇気が必要かもしれません。体の傷は癒えても、心の傷はなかなか癒えるものではないでしょう。

できれば、こうしたつらい経験をすることがないよう、妊娠する前の段階でできることをしておきましょう。

出典元:

「中絶」を選択する前にできることを

デート PIXTA

人工妊娠中絶は、女性の体を守るために認められていることです。女性の健康や経済を守るために、今もたくさんの人がそれを必要としていることは確かなことです。

しかし、18万以上の胎児の命は、いったい誰が守ってあげられるのでしょう。生まれてきた赤ちゃんは大きな声で泣き、ママの愛情を求めることができますが、お腹の赤ちゃんにはそれができません。パートナーの男性も、命を作ることはできても、守ることを考えていない状態にあるかもしれません。

現実として「育てられない」という事実がある以上、妊娠をする前に、男性も女性も、できる限りのことをしましょう。まずは避妊をすること。悲しい経験をする人を減らすために、必ずしなくてはいけないことです。

つらい選択をする前に避妊をする、必ずしてもらうという選択を。一人一人が忘れないことで、悲しく消えてしまう命を減らすことができるのではないかと思います。

記事の感想を教えてください

7月1日~7月17日に記事の感想をご投稿くださった読者のみなさまの中から、抽選で10名様に「ギフト券」500円分をプレゼントさせていただきます。なお、当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせて頂きます。

「中絶」「妊娠」「母体保護法」 についてもっと詳しく知る

関連する記事

出典元一覧

本記事は必ずしも各読者の状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて、医師その他の専門家に相談するなどご自身の責任と判断により適切に対応くださいますようお願いいたします。なお、記事内の写真・動画は編集部にて撮影したもの、または掲載許可をいただいたものです。ママリ編集部のコンテンツに対する考え方(または取り組み)についてはこちらもご覧ください。

カテゴリ一覧

フォローすると公式アカウントから、最新の情報をいち早くお届けしています!