保健師に聞く「私の仕事」、ママの思いに寄り添うサポーター

保健師とは、地域や企業にいて、そこにいる人々の健康をサポートするための仕事をする人たちです。母子にとっては新生児訪問、乳児健診で会うことが多いでしょう。中野区で働く保健師の土屋優恵さんは、4年間母子の健康を見守る部署で仕事をしてきました。ママたちを見守る中で土屋さんが大切にしていることは「ママの思いを尊重する」「ママも赤ちゃんも一番」ということ。保健師としての土屋さんの考えや、ママたちへの思いを聞きました。

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家族の健康をまるごとサポートする「保健師」

赤ちゃんの新生児訪問や、数ヶ月おきの健診の機会に会うことがある「保健師」。赤ちゃんの発育をチェックしたり、ママが育児に悩んでいないか声をかけたりと、子育て中のママとの関わりが多い仕事です。しかし、出産をするまで保健師のことをあまり知らなかった方もいるかと思います。

「保健師」という名前から、健康に関する仕事だということはわかるものの、病院で診療に関わるわけではありません。健診などが行われる保健センターなどで、地域に住む人たちの健康をサポートしたり、感染症予防などについて指導したりする仕事です。

保健師とはどのような仕事で、その仕事をする人たちはどのようなことを思い、人々の健康をサポートしているのでしょうか。地域の保健師として4年間、母子の健康管理に携わってきた中野区の保健師、土屋優恵さんにお話を聞きました。

保健師 土屋優恵さん

取材先提供

土屋さんは中野区に勤める保健師。看護系の4年制大学で看護師と保健師の勉強をした後、保健師として働き始めました。保健師として初めて配属されたのが、母子の健康を管理する職場。両親学級や、新生児訪問、乳児健診を通して、多くのママたちと関わってきたそうです。

赤ちゃんの健康を見守る仕事として、発達や湿疹などのトラブルに関する相談を受けるほか、ママに対しても、悩みを聞き、安心して育児ができるようにサポートをする仕事をしてきました。

保健師の1日のスケジュール

健診 PIXTA

保健師は1日のうちにどのような仕事をしているのでしょうか。土屋さんのある1日のスケジュールを聞きました。新生児訪問や健診など、予定によってスケジュールは変わるそうですが、今回は「乳児健診がある1日」のスケジュールです。

  • 08:00 出勤(健診の日は準備のために早めに出勤)
  • 08:45 乳児健診の受付がスタート
  • 09:00 乳児健診スタート、健診では全員の健康チェックのほか、個別相談も受け付ける
  • 13:00 乳児健診終了
  • 14:00 昼食後、健診の振り返り、悩んでいるママのサポートについて考える
  • 15:00 担当地区の住民の健康相談、電話対応など
  • 17:15 退勤(残業も時々、月末は報告資料作りなどで忙しい)

中野区の場合、乳児健診は平日の午前中。朝は早い時間から受付がスタートし、多いときには1日に60人~70人ほどの赤ちゃんが訪れるといいます。

土屋さんは赤ちゃんたちの健康チェックのほか、希望者には個別相談も受け付けているそう。赤ちゃんの健康の悩みはもちろん、夜泣きの相談や発育発達の相談まで、色々な悩みを打ち明けてくれるママがいるようです。

午後には赤ちゃんのカルテを一つ一つ確認して振り返り、悩みを抱えているママについてはどのようにサポートするかを考えているという土屋さん。必要性がある場合は、ママが住んでいる地域の担当者に取り次ぎ、サポートを続けられるように手配するそうです。

保健師には地域ごとに担当があり、自分が担当する地域のママについては、連絡を取ったり、健診時に声を掛けたりして見守るようにしているとのことでした。

保健師を目指したきっかけ

大学 PIXTA

もともと看護学校に入学するときには「看護師」を目指していたという土屋さん。しかし、在学中に保健師に関する学習や実習をする中で、保健師という仕事に魅力を感じるようになったといいます。

「病院は、病気になった人が行くところ。でも、保健師は健康を損なう前に、その人たちの健康をサポートすることができると感じたのです」と土屋さん。健康な人たちはさらに健康に、サポートが必要な人には必要なサポートを紹介して安心を届ける。そのような保健師の仕事に惹かれ、卒業と同時に、看護師と保健師両方の資格を取得し、保健師となりました。

ママの思いを尊重して「必要なサポート」をする

ママ 抱っこ 赤ちゃん PIXTA

母子を支える保健師として働き始めた土屋さんには、たくさんの育児相談が寄せられました。ママの思いに寄り添って話を聞く一方、保健師としてどのような答えを出せばよいのか難しいと考えたこともあるといいます。

土屋さんはこのように話します。

「相談をするママたちは皆、赤ちゃんのことを一番に考えています。赤ちゃんの肌に湿疹ができると『私が食べ物を制限すべきでしょうか』と相談されますし、夜泣きでつらくても『誰かに預けるのはかわいそう』と悩まれるのです」

保健師はママと赤ちゃんの健康どちらも大切にしたい立場。赤ちゃんを一番に思うママの気持ちを理解しつつも、ママ自身の生きる楽しさや、心身の健康を守りたいという思いから、どう助言をするか、土屋さん自身も悩んだといいます。

ママと一緒に悩みながらも、さまざまな母子を見てきた中で土屋さんが出した答えは「ママのスタイルを尊重する」ということ。育児に悩むママたちの思いは、すべてが正解。ママの考えや育児のやり方はできるだけ変えず、少し工夫できることや、簡単に取り入れられることをアドバイスするように心がけているそうです。

ママの「よかった」という笑顔が原動力

ママ 抱っこ 赤ちゃん PIXTA

土屋さんが保健師という仕事にやりがいを感じるのは、ママに頼りにされたり、感謝をされるときだといいます。

相談をするママの中には心が追い詰められた状態のママがいるそうで、夜泣きがつらくて悩んでいたママが相談中に泣き出したこともあるといいます。その時、土屋さんは産後ヘルパーや一時預かりのサポートを紹介し、ママが休めるように一緒に環境を整えたそう。

「子供は自分で育てるものだ」という周囲からの言葉に縛られたり、他のママはできているのにという思いになったりして、一時預かりを利用できないママはいると土屋さんはいいます。しかし、こうしたサポートを保健師である土屋さんが勧めることは、ママの背中を優しく押すことになっているでしょう。

こうしたサポートに感謝するママが「良かった」といってくれることや、保健師をしたって「子供が寝返りしました!」と保健センターに報告しに来てくれることが、本当にうれしく、原動力になっているという土屋さん。保健師にとって、サポートした人の笑顔は大きなやりがいになっているのですね。

「『こんなことで』と思うことでも相談して」土屋さんのアドバイス

悩み 相談 PIXTA

自治体で働く保健師として、多くの母子に関わってきた土屋さんに、育児に奮闘するママたちへのアドバイスをもらいました。

「とにかく気軽に。どのようなことでも相談してください。赤ちゃんのちょっとした体調の変化など『病院に行くほどでもないけれど気になる』ということも、相談に乗ります。また、赤ちゃんのことだけではなく、もちろんママのことも。『こんなことで…』とためらうようなことでも構いません。相談中に赤ちゃんが泣いても大丈夫。保健センターは、そうしたことに慣れているスタッフがそろっています。安心してきてください。保健センターで話しにくいことは、電話や訪問でも大丈夫ですよ」

赤ちゃんの健康だけではなく、ママの心身の健康もしっかり見守ってくれる保健師という存在。ママたちにとってはとても心強い存在です。人には話しにくかった心の悩みや、育児の不安なども、地域の保健師に頼ってみませんか?

自治体によっては子育て広場などでの育児相談会や講習会を開いている場合があるそう。こうした場で保健師を見つけ、声をかけてみるのも一つの入り口になるといいます。気になる方はチェックしてみてくださいね。

ママも赤ちゃんも「一番」、保健師は子育ての伴走者

ママ 赤ちゃん 手 PIXTA

保健師という仕事は、老若男女問わずすべての人たちの心身の健康を守ること。小さな赤ちゃんも、その赤ちゃんを育てるママも、両方が一番大切な存在なのだと土屋さんはいいます。

土屋さんはさらに「昔よりも今は核家族が多く、実母が遠方で旦那さんの帰りも遅いなど、ママが一人で子育てする時間があまりにも長くなっています。そのような中で、ママがつらいと感じるのは当然のことです。誰かに頼ったり、助けてもらったりするのはいけないことではなく、むしろ『当たり前』だと思って、さまざまなサポートを受けてほしいと思います」と続けます。

ママも赤ちゃんも、どちらも大切。子育てをしている中で「無理をしているかも」と感じたら、地域の保健師さんに相談をしてみてください。ママが自分を大切にするためのヒントを得られると思いますよ。

<取材協力:中野区 保健師 土屋優恵さん>

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