精子バンクとは
精子バンクとは、不妊治療をしている夫婦、シングルマザーとして子供を生み育てたいと考えている人を対象に、登録ドナーより無料、無償で精子提供を行っている機関のことです。国内では、日本精子バンクや専門の病院がその役割を担っています。
不妊の原因の約40%が男性側にあるといわれており、治療を重ねてもなかなか子供を授かることができず、どうしても子供が欲しいという場合に選択できる方法です。
日本精子バンクでは、精子ドナーに対しさまざまな身体的検査や心理テスト、書類審査を実施しており、信頼性と安全性を担保しているようです。
精子提供は他人の精液を用いる特殊な方法なため、希望者の意志が十分に確認されます。さらに、精子提供を受けるにあたり、臨床心理士のカウンセリングを受ける必要があるようです。
夫はいらないけど子供は欲しいと思う女性が増加
大切な人と結婚し、やがて妊娠出産を経験するという人生を思い描く女性は多いかもしれません。
その中で、結婚をしないという選択をする女性が増えていますし、夫はいらないけれど子供は欲しいと思う女性もいらっしゃいます。
精子バンクについては、欧米よりも後進的なイメージがある日本。結婚やパートナーと共に人生を歩む道を選ばず、シングルマザーという選択をしてでも、子供を授かれるのであれば精子バンクを利用すればよいのではないか、という意見を持つ人がいます。
一方で、子供はほしいが、シングルマザーとして妊娠、出産、育児をしていく自信が持てないから精子バンクは利用しないという考え方もあります。出産後、子供にパパのことをどう説明するのかなど、倫理的課題ももちろんあります。
子供が欲しいと思う気持ちは理解できます。しかし、育児は想像以上に大変なものです。生まれてからの、子育てや子供の将来などをしっかりと考えた上で選択をするべきでしょう。
精子バンクの利用は法的夫婦のみ?
未婚の方の精子バンクの利用は、日本産科婦人科学会が倫理的に問題があるという見解を発表しています。法的に婚姻している夫婦で、心身ともに妊娠・分娩・育児に耐え得る状態にあることが必要とされており、戸籍謄本の提出を求めることを病院やクリニックに推奨しています。
日本産科婦人科学会のガイドラインではサポートできない独身女性を助けようと、日本精子バンクのようなボランティアの精子バンクや精子提供サイトが存在します。
法的には問題ないようですが、日本産科婦人科学会が倫理的に懸念するというほど、シングルマザーとして妊娠、出産、育児をしていくことは大変なことなのでしょう。選択は人それぞれですが、子供は大切なひとつの命。1人で育てていくという覚悟は並大抵のことではないのかもしれません。
- 日本精子バンク「精子ドナーとは?」(http://japanspermbank.com/,2017年6月28日最終閲覧)
- 日本精子バンク機構「次の世代へ命を繫いでいくために」(http://japan-reproductive-organization.net/,2017年6月28日最終閲覧)
- はらメディカルクリニック「非配偶者間人工授精(AID)」(http://www.haramedical.or.jp/content/artificial/000095.html,2017年6月30日最終閲覧)
精子バンクの在り方とは?女性と生まれてくる子供の気持ち
精子バンクの利用が必要な妊娠希望者には意志を確認した上で、条件に適応しているかどうか判断されます。
精子提供をする人、精子提供を受けて妊娠出産を望む人、精子提供によって生まれてくる子供、それぞれに気持ちがあり、少し複雑な過程ですが、精子バンクにたどりつくまでの経緯はさまざまです。特殊な機関ですが、子供を授かりたい親の気持ちに寄り添ってくれる場所です。
精子バンクの利用理由や事情は人それぞれですが、利用については大人の都合であることに変わりはありません。
もし将来会話の流れで、子供に自分の生い立ちのことを聞かれたらどのように話しますか?伝え方は人それぞれだと思いますが、「あなたは愛されて生まれてきたんだよ」ということを伝えられるとよいなと私は考えています。
精子提供を希望する女性たち
日本精子バンク機構では、各種検査や書類審査を通して高い安全性と信頼性を持つ人だけが精子ドナーとなっています。
ドナー検査では、「大学卒業証明書」を提出しなければなりません。学歴が高く容姿端麗、運動神経もよいという好条件のため、精子提供を希望している依頼者からも信頼されているといいます。
子供にはできるだけ良い遺伝子を受け継いで欲しいと思うのが親心。精子提供を受けて子供を授かれるのであれば、できるだけ希望の遺伝子を求めたいという気持ちを持つ女性もいると思います。
もし、シングルマザーとして子供を授かりたいと願っている人は、妊娠や出産のこと、その後の生活のことなどしっかりと計画を立てておくことも大切なのではないでしょうか。
育児は楽しいこともありますが、辛いこともたくさんあります。子供を授かった瞬間から親になります。子供の気持ちに寄り添い、大切に育てていけるように準備できるとよいですね。
生まれてくる子供への伝え方
精子提供は事前にドナーの資質を確認することができます。でも、たとえ親が好んだドナーだとしてもそれは生まれてくる子供にとっては関係のないことです。
しかし、成長とともにふとした会話の中で、子供が自分の出生について質問してくることがあるかもしれません。特にシングルマザーとして育児をする場合は、父親がどこにいるのかどのような人なのか気になる子供もいると思います。もし質問された場合はどのように伝えますか?
精子バンクを利用して妊娠出産に至った場合、そのことを子供に話すか話さないかはそれぞれでしょう。大切なのは子供が疑問に思った時、ママがどう不安を解消し、愛されていることを伝えることができるかではないでしょうか。
- 日本精子バンク機構「ドナーについて」(http://japan-reproductive-organization.net/info.html,2017年6月28日最終閲覧)
- ダイヤモンド社書籍オンライン「乳がんのリスクを知るために遺伝子検査を受けるべきか」(http://diamond.jp/articles/-/131040,2017年6月30日最終閲覧)
- 一人ビジネス経営研究所「右肩上がりの生殖ビジネス(=精子バンク) 理想の相手がいなければ”理想の精子”を」(http://intelligenceofficerclass.com/右肩上がりの生殖ビジネス,2017年6月30日最終閲覧)
生まれてくる子供のことを第一に考えて利用を検討しましょう
精子バンクは男性側の不妊が原因で子供が欲しくてもなかなか授かることができない夫婦や、シングルマザーとして子供を持つことを希望している女性のためにある機関です。
精子提供を希望する理由はさまざまだと思います。待ち望んで授かった命は愛おしいですが、子供の成長とともに出生について説明をする時がくるかもしれません。
どのような理由であれ、子供を生み育てるという決断はそう簡単にはできないと思います。精子バンクは子供が欲しい親の気持ちに寄り添った制度ですが、生まれてくる子供の気持ちに寄り添えるのは生む側であり、守るべきものであると私は思います。
精子バンクの利用を考えたときは、どうして精子バンクが必要なのか、子供の気持ちに寄り添えるかを考えて欲しいと思います。