ⓒnegiii51
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親なのに、息子のことがわからない
知的障害を伴う自閉スペクトラム症のたつきくんを育てる母・NEGIさん。NEGIさんには「絶対に息子の笑顔を守って育てる」という育児の目標がありました。
たつきくんに障害があると知り「かわいそう」と繰り返す祖母への反発心もあり、たつきくんのことは誰にも隠さず、悲観せずに子育てをしようと決め、それを実現しながら育児を続けていたのです。
自分が子どものころの記憶を頼りにたつきくんに歩み寄ろうとするNEGIさん。しかし、たつきくんを理解することは難しく、親なのに息子のことをわかってあげられないことについて、悲しいと感じることがあるようです。
かわいそうな子なんかじゃない
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NEGIさんは育児の壁にぶつかっても、泣くことができずにいました。泣いたら、息子のことを悲観することになり、反発している祖母からの「かわいそう」という言葉を認めることになってしまうからです。
「絶対に守る」という気持ちを持ち続けていたNEGIさんに、ある転機が訪れます。
それは、NEGIさん自身が幼いころに通っていた幼稚園の説明会。自らの楽しかった記憶を頼りに、たつきくんを入園させることを考えますが、いざ説明会に行ってみると、ほかの子どもとたつきくんの発達の差を目の当たりにすることに。
「このままでいいのだろうか」「息子のことがわからない」そんな思いがだんだんとNEGIさんを追い詰めていきます。
母自身の不安に寄り添う存在との出会い
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息子を幸せにしたいと強く願いながらも、理解しにくい息子の行動や思うように進まない発達に心が折れかけていくNEGIさん。できることが増えていくことが当たり前ではなく、できることが増えるのかもわからない。障害のある子どもを育てる親の気持ちがていねいに描かれ、胸に響きます。
NEGIさんは、園の説明会で息子のことを打ち明け「よく頑張ったわね」という言葉を受け取ります。これがきっかけで不安を打ち明けることができ、NEGIさんは自分自身の気持ちに向き合ってくれる存在を得られたのでした。
障害のある子どもを育てる母がいだく不安も、子どもに向ける温かい感情もていねいに描いたエッセー。不安を打ち明けることができたあとのNEGIさんの表情が明るくなっていく様子に、読者も温かい気持ちになれる作品です。