助産師に聞く「私の仕事」、家族のはじまりをサポートする幸せ

妊娠から出産、そして産後にかけてママと深く関わりのある「助産師」。妊娠中の生活についてアドバイスをくれたり、出産や産後の生活をサポートしてくれたりとても頼りになりますよね。助産師とはどのような人が目指し、どのような仕事をしているのでしょうか。病院と地域で助産師として働く中原千晶さんは「自らの子育てを通して『出産』はゴールではないと気付いた」といいます。助産師になるまでの道のりや、仕事のやりがいについて聞きました。

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家族のはじまりを支える「助産師」

出産のとき、陣痛で苦しむママのそばで「がんばれ」「もうすぐだよ」と勇気づけてくれたり、出産後に赤ちゃんのお世話について優しく教えてくれたりする助産師さん。妊婦さんやママになったことで、はじめて助産師さんと関わりを持った方は多いのではないでしょうか。

「ママが赤ちゃんをこの世に産み出す」という大仕事のそばにいて、家族がはじまる瞬間をサポートする仕事。助産師はなぜ助産師を目指し、そして何を思ってお産の現場にいるのでしょうか。助産師として10年以上活躍している中原千晶さんにお話を聞きました。

助産師 中原千晶さん

取材先提供

中原さんは福岡県北九州市出身の助産師。地元で看護師として4年間勤務した後、助産師の資格を取得するために助産師学校へ行き、総合病院の助産師として4年半勤務しました。

その後ご自身の出産を機に退職し、現在は2人のお子さんを育てながら地域で働く助産師として、母子訪問員(区に所属する保健師や助産師が産後のママ達の自宅を訪問する活動)や、企業内での育児相談員として働いています。また、産後のママの悩みを聞き、孤独感を解消するための育児相談室「mom's room」を運営するなどの活動もしています。

働き方別「助産師の仕事」

出産 PIXTA

では、具体的に助産師さんはどのような仕事をしているのでしょうか。中原さんの経歴にもあるように、助産師の働き方にはいくつかのパターンがあります。1つは病院内の助産師という働き方。もう1つは地域で働くというパターンです。

その他にも「助産院を開院する」などがありますが、中原さんの場合の1日のスケジュールを教えていただきました。

病院で働く助産師

総合病院で働いていたころの中原さんの職場は3交代制や2交代制。当時、日勤の場合は以下のような仕事内容でした。

  • 出勤 朝8時ごろ出勤し、担当する妊産婦さんの情報収集、その後申し送り
  • 勤務 1日かけて担当の妊産婦さんのケアをする(点滴・注射・トイレや洗髪ケア・授乳指導)
  • 退勤 17時ごろ退勤するが、お産が続いている場合は残業することもある

中原さんが総合病院で働いていたころは、助産師や看護師が点滴や注射を行っていたため、朝はまず点滴の交換のタイミングを考えながら、赤ちゃんとママのバイタルサインをチェックするなどの健康管理から始めます。妊婦さん、産婦さんどちらを担当するかはその時によって違うのだそうです。

産婦さんの場合は部屋に回ったタイミングで授乳をしていれば、授乳指導を行います。また、1日のどこかで赤ちゃんの健康チェックも行います。妊婦さんを担当する場合、安静状態でシャワーを浴びることができない人や、トイレに行くこともできない人もいます。そうした方のケアも一人ひとりに合わせて行っていたそうです。

1日に10人ほどの妊産婦さんを担当し、一人ひとりの状態に合わせて行うため、ほぼ1日がかりになってしまいます。お昼休憩ができないこともありました。また、日によってはお産の担当になる場合もあり、その場合は産婦さんの出産のサポートをします。退勤時間は17時ですが「あと少しで生まれそう!」という時には残業をして見届けることもあったそうです。

地域で働く助産師

新生児 体重 PIXTA

現在は小学生と幼稚園児の2人のお子さんを育てながら、地域の助産師さんとして働いている中原さん。1日のスケジュールは、子育てを考えた時間割に変わりました。

  • 08:30  次男を幼稚園バスに送り出す
  • 10:00  母子訪問1件目
  • 11:15  母子訪問2件目
  • 12:30  母子訪問3件目
  • 14:00  自宅に戻る
  • 14:30  幼稚園のバスが自宅に到着

母子訪問をする日のスケジュールは上記のようになっています。また、育児相談室を開いたり育児相談員として企業内で働いたりする日は時間を変更してお迎えに行くこともあるのだそうです。

上のお子さんはすでに4年生なので、鍵を持って小学校に通ってくれるといいます。「私がやりたい仕事をするために、子供たちも頑張ってくれているんです」と話してくれた中原さん。子供たちの協力は、働くママにとって頼もしいですね。

助産師を目指したきっかけ

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中原さんが助産師を目指したきっかけは、小学生の頃に幼馴染の家に赤ちゃんが生まれたこと。3人姉妹の末っ子として生まれた中原さんにとって、赤ちゃんを見るのは初めてのことでした。

「なんてかわいいんだろう」と感動したという中原さん。その時、赤ちゃんのそばで、赤ちゃんにたくさん触ってお仕事をしている助産師さんを見て「助産師さんっていいな」と思ったそうです。

その後「獣医」や「看護師」に憧れることがありましたが、基本的には医療職に深い関心があったという中原さん。看護師として働き始めてからも担当が産科と他科の混合病棟で、赤ちゃんに関わることもでき、とても楽しくやりがいもあったのだといいます。しかしやはり産科のスペシャリストである助産師への憧れが消えることはなく、4年間の看護師としての実務のあと、助産師になることを決め、助産師学校に通ったそうです。

総合病院の助産師を辞めたあと、地域の助産師になるきっかけになったのは、自らが一人目の産後に育児のつらさから産後うつのような症状になったこと。「誰かに話したい、相談できる場所があれば」と思ったことから、自分自身が新生児訪問をする母子訪問員になることを決めました。長男が1歳のころに一時保育を週2回利用して始めたそうです。

今までで辛かったエピソード

保育器 PIXTA

助産師という仕事に長い間憧れて、やっと助産師になることができた中原さん。夜勤でたくさんの新生児のお世話をすることも、お産が辛い妊婦さんから腕を強く握られたり蹴られたりしても、まったく辛くないのだとか。「出産は女性の大仕事です。そばにいさせてもらえるだけで幸せに思っています」と話してくださいました。

しかし、病院勤務で唯一の辛かった経験は、死産に立ち会ったこと。元気に生まれてくるはずの赤ちゃんが、亡くなって生まれてきたのを見たときはとてもつらかったそうです。一番つらい思いをしているママと悲しみを分かち合い「次に元気な赤ちゃんを産むまで、私は助産師を辞めずにここにいる」と約束しました。

中原さん自身もお産が怖くなり、しばらくは外来の助産師として働きました。数年後、その妊婦さんは同じ病院にやってきて、帝王切開で元気な赤ちゃんを出産したそうです。中原さんは「別の病院で産むこともできるのに、悲しい記憶がある病院にまた産みにきてくれたことがとても嬉しかったです。」と話してくれました。

地域の助産師としてつらかったのは、母子訪問員を始めたばかりのころ。あまり母子訪問の仕組みが広まっておらず、ママに電話をかけても怪しまれたり、冷たい反応をされたりすることが多かったことがつらかったといいます。しかし、今では仕組みについて自治体が説明するようになり、そうした反応はなくなったそうです。

助産師としてやりがいを感じるときは

手を握る PIXTA

病院助産師としてやりがいを感じたことは、ママが無事に出産をしたときだといいます。「無事」ではなかった場面を見ているからこそ、元気に赤ちゃんが生まれることにやりがいを感じました。「病院助産師だったころは、助産師としてのゴールは『出産』だったのです」と中原さん。

しかし実際には出産はゴールではなかったことを、自身の出産を機に知ることになりました。第一子の出産の後、子育てで行き詰まり、毎日が辛くてイライラしていました。ご主人に冷たくあたってしまったことも。出産は決してゴールではなく、その先にママたちの辛さがあると学んだといいます。

その結果として始めた母子訪問では、とにかくママたちの声を聞くことがやりがいだといいます。小さな「困った」という思いを引き出すために、まずは自分が子育てで困ったことを話すことで「助産師」という立場のハードルを下げ、ママの話しやすい状況を作っているという中原さん。「いろいろな気持ちを抱えるママの声を聞くことで、助産師としての引き出しが増えた。それが自分の仕事につながっていることがやりがい」と話してくれました。

「不安な時は1歩踏み出して」中原さんからのアドバイス

電話 PIXTA

病院助産師として働き、今はママとして子育てをしながら地域の助産師として、ママを支える仕事をしている中原さんに、ママたちへのアドバイスをもらいました。

「ママたちは1人ではありません。必ず見守ってくれる人がいます。子育てに不安があるときは、まず地域の保健センターなどに電話をしてみましょう。連絡先は、妊娠中に自治体からもらったお手紙などに書いてあるはずです。病気ではないような『ちょっとしたこと』と感じることでも大丈夫ですよ。育児は育児書通りにいきません。相談を受ける人は、ママの現実をわかっている人がいます。まずは1歩踏み出して、声を出してみましょう。」

1人目の子育ては誰でも初めての経験。不安になったり辛くなったりすることは誰にでもあります。「この程度の辛さで電話していいのかな」と感じることもあるかもしれませんが、まずは電話してみましょう。自治体の相談窓口の他にも、中原さんがお仕事をしているような、ショッピングセンターなどで開かれている育児相談室を利用するのもよいですね。

助産師は、ママと赤ちゃんにとって欠かせない「道しるべ」

助産師 PIXTA

助産師は、ママと赤ちゃんが元気に生活していくために、まず初めに出会うことができる道しるべのような存在。妊娠中から出産までのママの不安に寄り添い、産後は子育ての初めの一歩を踏み出すために、すぐそばでサポートしてくれます。

さらに退院後も、地域の助産師たちがママを見守ります。困っているママの不安や辛さに寄り添い、声を聞き、ママと赤ちゃんが笑顔で暮らしていけるように助けてくれます。

まさに「家族」のはじまりをサポートする役割を担う助産師。まるで女神様のように見えることもあるその仕事ですが、素顔は想像していたよりもずっと「1人の女性」に近く、だからこそできるきめ細やかな気遣いや声掛けがあるのだと感じました。

育児で困ったことがあるママ、心の中に不安があるママ、ぜひ地域の助産師に相談をしてみましょう。導いてもらう道しるべの先に、家族の幸せがきっとあるはずですよ。

<取材協力>助産師 中原千晶さん

助産師による育児相談室 mom's room

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