【事実1】不妊症の48%は男性側に原因があります
多くの男性は、まさか自分に不妊の原因があるわけがないと思い、なかなか検査や不妊治療に協力してくれないことがありますよね。
でも、実際はWHO (世界保健機構)の調査によると、不妊の原因の48%は男性側にあるのです。
つまり不妊に悩む約半分のカップルは、男性も不妊治療を受ける必要があるということなので、まずは夫婦そろって不妊検査をすることが大事です。
【事実2】12人に1人の男性が不妊症
国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、6組に1組のカップルが不妊治療を受けています。
不妊の原因の約半分が男性にあるので、およそ12人に1人の男性が不妊症なのです。まったく他人事ではないんです。
放送作家の鈴木おさむさんは、妊活の早い段階で検査を受けて男性不妊だと判明し、奥さまの大島美幸さんと二人三脚で不妊治療に取り組まれていましたね。
【事実3】男性不妊の8〜9割は精子や精液に原因があります
よく男性不妊というと、勃起障害(ED)とか射精障害を想い起こす人も多いと思いますが、それよりも精液や精子に問題がある場合がほとんどです。
精液や精子に問題がある状態のことを「造精機能障害」と呼びますが、およそ8〜9割の不妊原因がこれにあたる、と言われています。
つまり、男性には早めに精液検査を受けてもらうことが必要なのです。
精液検査でわかる!精液にみられる問題とは
【精液量】量が多くないと精子の数が少なくなるため、妊娠しづらくなります。WHO(世界保健機関)では、1回の射精の基準値は1.5ml以上とされています。
【濃度】1mlの精液のなかに、どれくらい精子が含まれてるかで計測します。WHOの基準では1ml中1,500万個以上が正常な濃度となっています。
【運動率】活発に動いている精子が精液のなかにどのくらい含まれているかを見ます。正常な運動率は32%以上です。
【奇形率】正常な形をしていない(授精能力が低い)精子が精液にどれくらい含まれているかを見ます。正常な精液は、奇形率が96%未満であることがひとつの基準となります。
これらの検査項目ですべて基準を満たした場合、正常な精液であると考えられます。
なんと、5〜6割の程度しか男性の精子が正常ではないので、半分弱の男性は精液検査で何らかの異常が見つかります。
ただし、精液検査の結果はかなりの振れ幅があることでも知られています。結果が良くないという場合には、複数回の検査を受けることが推奨されます。
※ なお、女性は月経時の検査があったりするなど時期的なタイミングを調整する必要がある一方で、男性の精液検査はいつ検査しても問題ありません。
【事実4】100人に1人は無精子症
精液のなかに精子がない状態を「無精子症」と呼びますが、不妊症の男性の約6人に1人が無精子症です。
不妊症でない男性も含めた一般男性で考えると、100人に1人は無精子症です。
15歳以上の日本人男性は約5000万人いるので、無精子症の男性は約50万人いる計算になります。「意外と多い!」と思われた方も多いのではないでしょうか。
無精子症の場合、自然妊娠はできないので必ず不妊治療が必要になります。
【事実5】無精子症でも6割の場合で、精子を取り出せる可能性があります
無精子症は「閉塞性無精子症」と「非閉塞性無精子症」の2つに分類されます。
「閉塞性無精子症」は精巣の中で精子が作られているにもかかわらず、精子の通り道が閉塞しているのが原因となります。「非閉塞性無精子症」は精巣内で精子が全く作られていないか、作られていても極めて少ないことが原因となります。
無精子症のおよそ2割が該当する「閉塞性無精子症」であればそもそも精子はきちんと作られていて、8割が該当する「非閉塞性無精子症」だと約半分の場合(つまり無精子症のうち4割の場合)で精巣内で精子が作られているので、精子を取り出すなどの治療が可能です。
つまり無精子症だと診断されても、6割の場合で精子を取り出せる可能性があるので、諦めるにはまだ早いです。
無精子症と診断されたダイアモンド☆ユカイさんは、閉塞性無精子症でした。諦めることなく治療を受けて、双子の赤ちゃんを授かっています。
無精子症の治療でも助成金が出るようになりました
これまで自治体によってバラつきがあった男性不妊への助成金対応ですが、今年(平成28年)から国によるサポートもあり、全国で無精子症に対する一部の治療に助成金が出るようになりました。
自治体によっては、国がサポートする助成金に上乗せする形で支給されるケースもあるので、一度最寄りの自治体に確認してみてくださいね。
【事実6】35歳をすぎると精子も老化傾向が見られます
卵子が老化して妊娠率が下がるというのはよく知られていることですが、35歳を過ぎると精子も同様に老化して妊娠率が下がる傾向があると最近わかってきました。
妻が35〜39歳の場合、夫が5歳年上だと、夫が同い年の場合と比べて妊娠率が40%低くなるという調査結果もあります(もっとも妊娠率が高くなる排卵日4日〜1日前の数値)。
なるべく早めに検査を受けてもらい、男性の精液・精子の状態をチェックしておくことが大事です。
【事実7】男性不妊が専門の泌尿器科医は50名未満
男性不妊は泌尿器科医が診察することができます。日本生殖医学会に登録している男性不妊を専門とする泌尿器科医の数は50名未満と、残念ながらまだ国内では非常に少ないです。
多くの婦人科・不妊治療クリニックだと泌尿器科医がいないため、夫婦で一緒に専門的な治療を受けることができない場合も多いです。その場合、男性不妊を専門とする泌尿器科などへ紹介され、別々に治療を受ける必要があります。
不妊検査・治療は夫婦で一緒に受けることが大事なので、男性不妊の泌尿器科医がいる病院での受診も検討してみてくださいね。
まずは検査を受けるところから始めましょう
不妊治療は夫婦で一緒に検査を受けるところから始まります。
男性で精液に「やや異常あり」程度だったとしても、たとえば男性の精子の運動率が悪く、女性が卵管閉塞気味だった場合は、授精しづらくなり不妊になりうるのです。
これは2人で検査を受けて、お互いの状況をきちんと病院側であわせて見ることが大事ということです。
男性不妊での原因が早期に見つかった場合、治療自体も早く済み、かつ成功する可能性が高いと言われます。
男性不妊がわからないまま時間が過ぎていくと、女性はどんどん妊娠率が低下してしまうためです。早めに不妊の原因と向き合うことで、女性が若いうちに不妊治療を受けられるようになり、それが不妊治療の成功につながるのです。
不妊治療は治療自体は費用もかかりますし、体力的にも精神的にも負担は少なくありません。それを少しでも早く終結させ、パートナーの女性を救うのは、「まず夫婦で一緒に不妊検査を受けよう」という男性の少しの勇気なのです。
最初は精液検査や触診など、男性としては抵抗がある部分も大きいとは思いますが、今回ご紹介した男性不妊に関する事実をぜひ共有していただき、お互いに妊活・不妊治療への理解を深めていただければと思います。
東京で不妊治療セミナーが開催されます
本記事の監修をしていただいている不妊治療専門クリニック「京野アートクリニック高輪」で、これから不妊治療について検討している方向けにセミナーが開催されます。
ぜひ不妊治療への理解を深めて、ご夫婦でセミナーに参加されてみてはいかがでしょうか?