ちょこんと生えた乳歯にきゅん!一方で気になる「子どもの歯並び」
生後7~8か月ごろになると、赤ちゃんには小さくてかわいい歯が生えはじめます。
ほんの少しだけ顔を見せる乳歯にウキウキ!これからの成長がより一層楽しみになる時期でもありますよね。
しかしその一方で気になりはじめるのが、「子どもの歯」についてのお悩み。
など、気になることはたくさんありますよね!小児歯科の先生に直接聞くという機会もあまりなく、結局何が正しいのか分からなくなっていませんか?
小児歯科医に聞きました!子どもの歯並び・噛み合わせ、どうケアすればいい?
そこで今回は、気になる「子どもの歯」に関するお悩みや疑問について、小児歯科医の平場鉄也ドクターにお話を伺いました。
Q:ママ・パパからよく受ける、子どもの歯に関する相談は?
「未来のことを心配する質問より、虫歯や噛み合わせ、歯並びなど、すでに起きている問題に関しての質問が多い印象です。」
「歯並び」「噛み合わせ」について
- 歯並び・噛み合わせが悪いので矯正した方がいい?
- 前歯のガタガタが気になる
- 歯が変なところから生えてきた
「歯磨き」「虫歯」「フッ素」について
- 下の前歯が生えたばかりだけど、歯医者さんに行った方がいい?
- いつから歯磨きしたらいいですか?
- 小さい子どもの歯磨きのやり方を教えて欲しい
- 虫歯があるか心配
- フッ素は塗った方がいいの?
Q:歯並びは遺伝するのでしょうか?
「遺伝は、歯並びの良し悪しを決める上で、一つの要素ではありますがすべて遺伝で決まるわけではありません。感覚的には半分ぐらいが遺伝の要因。残りの半分ぐらいは日常の生活習慣や姿勢と関係していると感じます。
子どもは近くにいる親御さんを見て育つので、その姿勢や生活習慣などは自然と子どもに引き継がれます。そのため、結果として口元も似てくるんですね。
その反面、生活習慣や姿勢が改善されると、お子さまの歯並びがよくなることは十分にあると思います。」
Q:歯並び・噛み合わせが悪くなる原因について教えてください
姿勢や食事も原因の一つ
「歯並び・噛み合わせが悪くなる要因には、遺伝的なものと、生活環境や生活習慣などの後天的なものがあります。
骨格的な遺伝に加え、親御さんの生活習慣、普段の姿勢や食事のとり方も影響してきます。」
今すぐチェック!歯並び・噛み合わせによくない「姿勢」と「対策」
「歯並び・噛み合わせに悪影響を与えてしまう姿勢は、本当に多岐にわたります。普段のお子さまの様子を観察し、当てはまるものがないかチェックしてみましょう。」
Q:歯並び・噛み合わせによくない「姿勢」とは?
- 猫背
- 前傾や後傾の姿勢
- うつぶせ寝
- 足を組む姿勢
- 頬づえ
「人間は常に真下に向かって重力がかかっています。キレイな歯並び・噛み合わせを目指すためには、その力のかかり方を前後左右バランスよく整えることが大切です。」
Q:姿勢が悪いとどうなるの?
「姿勢が悪く、からだへの重力のかかり方が不均等になると、上下の顎の位置関係に影響が出ます。下顎が上顎に対して前にずれれば受け口(反対咬合)になってしまうことも。
また、歯列の内側から歯や顎の骨を押し広げる役割をする『舌』、反対に外側から押し込む役割をする『唇』の力のバランスにも乱れが生じ、歯並び・噛み合わせが悪くなってしまうことも考えられます。」
Q:キレイな歯並び・噛み合わせのために家庭でできることは?
正しい姿勢がとれる環境作り
「食卓のテーブルや椅子を、そこに座れば正しい姿勢をとりやすいよう工夫してあげましょう。食器を持ちやすいものにするのもおすすめです。
また、普段からなるべく自分の足で歩く時間を増やし、足腰の強化をはかりましょう。抱っこひもの長時間使用は避けたいですね。」
お口周りの体操
「ブクブクうがいには、唇の力がつく、頬などの緊張緩和、マッサージ効果も期待できます。あっかんベー、いないいないばあっ!など、表情の変化を楽しむ遊びも、口周りや表情筋を鍛えることができますね。
また、『ポッピング』というお口周りの体操もおすすめ。舌全体を上顎に吸い付け、舌の裏のひも(舌小帯)を伸ばしたあとに、『ポン』と音を出します。」
Q:姿勢をよくすることで得られる他のメリットは?
「姿勢をよくすることは、人間の本来の設計図通りであるということ。そのため、さまざまな臓器や運動器官が、最大限の機能を発揮することができます。
また、身体的な負担が減ることで、余裕が生まれおのずと集中力が上がったり、集中力の持続につながったりします。健全な姿勢や歯並び・噛み合わせは、人間の土台の部分として非常に大切だと思います。」
離乳食期こそ大切!歯並び・噛み合わせによくない「食事」と「対策」
次は、こちらも歯並び・噛み合わせに影響を与えるという「食事」について。離乳食期から身につけておきたい「食べ方」について、詳しく教えていただきました。
Q:歯並び・噛み合わせによくない「食事(離乳食)」とは?
- 正しい姿勢で座らないまま離乳食を与える
- 食材の硬さ・形などが、歯の生え方と合っていない
- 飲み込んでいないのに次々与えてしまう
- 味が濃すぎる
- 足の裏がきちんとついていない
「一般的に、大人と同じものを食べられると言われる1歳半は、やっと最初の奥歯が生えはじめる時期。奥歯がない時期に、奥歯4本を使って食事をしている大人と同じものを与えるのは、ちょっと早すぎるという印象です。
足が床についていない状態で食事をすると、からだに思うように力が入らず、噛んだり飲み込んだりする動作がやりづらくなってしまいます。
また味が濃すぎると、噛まなくても味がするため、いつの間にか噛まないで食べる癖もついてしまいます。」
Q:よくない「食事(離乳食)」が身についてしまうと?
正常な歯列・噛み合わせへの成長を妨げてしまいます
「正しい歯並び・噛み合わせには、舌や唇の“力のかかり方”が大きく関係しています。
特に食事のときは、顎・唇・舌すべてが大きく動き、歯や顎の骨に対して一番強い力がかかります。この力がバランス良くかかることが、正常な歯列・噛み合わせの成長につながっていきます。
反対に、間違った食べ方・飲み込み方が離乳食を通して身についてしまうと、キレイな歯並び・噛み合わせには成長しにくくなってしまいます。」
Q:離乳食の進め方が早いと、どんなデメリットがあるの?
『上手な嚙み方』が身につかない
「前歯を使うとき、顎は上下垂直的に動きますが、奥歯の場合はそれに加え横にも動きます。まだ前歯しか生えていない時期に、いろいろなものを食べすぎると、奥歯を上手に使う感覚が育ちにくくなります。
当然、食材が大きかったり硬すぎたりしても、適切な大きさまですりつぶすことができませんよね。
また、よく噛むことができず丸のみになってしまうと、喉周りの筋肉が鍛えられないまま成長してしまう。つまり、上手な飲み込み方が身につかないんです。」
噛む力が強くなりすぎる
「早い時期に硬いものを食べるということは、早くから噛む筋肉をトレーニングしてしまうということ。その結果、実年齢ではついていなくていい過剰な噛む力がついてしまいます。」
乳歯の奥歯が生えづらくなる
「前歯しか生えていない時期に強い噛む力がつくと、奥歯から乳歯が生えてきたとき、自分の噛む力でこれから生えようとする乳歯の力を止めてしまいます。
結果として、奥歯の乳歯の高さが出ないことにつながり、前歯が深く咬みこむ過蓋咬合(かがいこうごう)になりやすくなってしまいます。」
Q:家庭でできる対策は?
- よい姿勢で食事ができる環境を整える
- 月齢だけではなく、歯の生え方も考慮に入れながら離乳食を進める
- よく噛んで食べられるよう薄味にする
- 一口の量に注意する
- 食事の意欲を引き出す
「一口の量は、お子さま本人の親指くらいが目安で、飲み込むまで次は入れないようにしましょう!また、食事の意欲を引き出すために、食事以外の時間の活動量を上げ、おなかをすかすよう工夫するのもいいですね。
ただ、なかなかこんなにたくさんできないよ…という声もいただきます。無理のない範囲で、ゆっくりと取り組んでいただけたらうれしいです。」
平場ドクター教えて!小児歯科デビューのタイミングと乳歯のケア
ここからは、たくさんのママやパパが気になる小児歯科デビューのタイミング、覚えておきたい乳歯のケア方法について教えていただきましたよ!
Q:小児歯科デビューはいつごろがおすすめですか?
「0歳の時期をおすすめしたいのですが、実際は症状が出てから受診する人がすごく多いんです。
基本的な運動、言語、情緒などと同じく、歯並び・噛み合わせと関係の深い姿勢や食事の仕方なども、3歳ごろまでに確立されると言われています。
この0歳〜3歳の時期こそ、歯並び・噛み合わせをよい方向へ成長させるためのアドバイスができる、一番大切な期間なんです。」
Q:受診の目安はありますか?
歯並び・噛み合わせに関して
「歯が生える前からの受診が理想で、生後外出が可能になったタイミング(2〜3か月)ごろがおすすめです。小児歯科医としての視点から、気をつけていただきたい姿勢や授乳方法についてお話しができるかと思います。」
虫歯に関して
「虫歯については、困ってから受診するのではなく、お子さまや保護者の方が困らないためにも、歯が生えはじめる7〜8か月ごろの予防受診をおすすめします。
歯ブラシの使い方、食生活についてのアドバイスなど、虫歯予防のためにできることはたくさん!歯ブラシが苦手で、家では泣いてしまうというお子さまも、虫歯ができる前のフォローをぜひお近くの小児歯科で行ってもらってください。」
Q:乳歯のケア方法について教えてください
虫歯になりやすく、削れやすい
「乳歯は、成熟した永久歯と比べ虫歯になりやすく、永久歯よりもやわらかいため、食べるときや就寝時などの歯ぎしりによって、削れやすいという特徴があります。」
歯ブラシとフロスを使ってケア
「基本的には歯が生えはじめたら、最初から歯ブラシで磨いていただきたいです。また、乳歯の虫歯の大半が、歯と歯の間の虫歯が原因。歯の間が詰まっている箇所は、フロスを兼用するのがおすすめです。
ただ、特に3歳未満のお子さまは、歯ブラシが苦手で泣いてしまうことも多いですよね!そういうときは、泣かせない努力をするより、最初から泣く前提で、声をかけながらゆっくりと歯ブラシに取り組んでもらうとよいと思います。」
歯磨き粉は基本的にはなしでもOK
「歯磨き粉は、基本的に無理に使う必要はありません。歯磨き粉の薬効成分より、歯ブラシやフロスで物理的に汚れがとれているかの方がはるかに大切。
味付きの歯磨き粉は、歯磨きへのモチベーションアップになる場合は使っていただいても大丈夫です!ただ、まずは歯磨き粉無しで一通り磨き、最後の仕上げで少し使ってもらうのがおすすめです。」
平場ドクターからママ・パパたちへメッセージ
「お子さまの歯並びや噛み合わせは、すべて遺伝で決まっているわけではなく、日常の生活習慣や食事とも関係して、よい方向にも悪い方向にも成長します。」
0歳〜3歳の時間を有意義に使いましょう!
「年齢が小さいときに、歯並び・噛み合わせを少しでもよい方向に向けるための知識やアドバイスがあれば、その子の成長する時間をより有意義に使えると思います。
お子さまは日々成長していくので過ぎた時間は戻りません。だからこそ、早めに歯医者さんで歯並び・噛み合わせのためにできることのアドバイスやサポートを受けていただければと感じます。」
悪くならないために小さいときから歯医者さんへ
「今は『虫歯ができないように歯医者さんへ』という時代。歯並び・噛み合わせについても『悪くならないために小さいときから歯医者さんへ』を多くの方に知っていただきたいと思っています。」
生活習慣に着目した診断とお子さまに合った治療法を提案!「Sodachi歯科プロジェクト」
理想の歯並び・噛み合わせには、小さいころからの生活習慣が大切。今できることからはじめてみよう!そう思った方もきっと多いですよね!
そんなみなさんにぜひ知って欲しい、あるプロジェクトがあるんです。小さいころからの生活習慣に着目した診断と、お子さまそれぞれに合った治療法を提案してくれる「Sodachi歯科プロジェクト」です。
自分自身では意識できない赤ちゃんのため、少しでも不安や疑問を感じたらぜひ気軽に来院してみてくださいね。みなさんの小児歯科デビューを応援しています!
監修:高田泰、平場鉄也