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【医師監修】妊娠中でも漢方薬は飲んでいい?

「妊娠中は薬の服用を控えた方が良い」という話を聞いたことがある方も多いと思います。妊娠中は、薬の成分が胎盤を通って胎児の体内に入ることで影響を及ぼす可能性があるからです。ただし、「妊娠中には薬が飲めない」ということではなく、医師や薬剤師の指示のもと適切に使用すれば問題ありません。では、漢方薬の場合はどうなのでしょうか。今回は妊娠中における漢方薬の服用についてご紹介します。

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妊娠中でも漢方薬は飲んでいい?

漢方には「安胎薬(あんたいやく)」と呼ばれる薬があります。安胎薬(あんたいやく)とは、母体および胎児の発育に好影響を与える漢方薬のことで、妊娠中のさまざまな症状に対して使われます。

その他、つわりやむくみ・貧血の改善、子宮の収縮を抑えることによる流・早産の予防に対して漢方薬が処方されることがありますが、一方で妊婦には慎重に使用すべきものもあります。

西洋薬でも漢方薬でも、妊娠中の服用は自己判断せず、医師や薬剤師の指示を守って服用することが大切です。

出典元:
  • 田中良子(監)「薬効別服薬指導マニュアル 第8版」p966〜967(じほう,2015)
  • 嶋田豊(監)「漢方薬辞典 改訂版」p102(主婦と生活社,2016)

妊娠中に注意した方がよい漢方成分

妊婦 PIXTA

その人の体質によって、使うべき漢方薬は異なります。

漢方では、妊娠中の母体を「体力がない」「病気に対する抵抗力・反応が弱い」状態と考えます。そのため、「体力がある」「病気に対する抵抗力・反応が強い」人向けの漢方成分は原則として避けることが多いです。

例えば、利尿作用のある乾姜(かんきょう)、牛膝(ごしつ)、呉茱萸(ごしゅゆ)、薏苡仁(よくいにん)などの生薬は、体力があって病気に対する抵抗力・反応が強い人向けの漢方成分なので、妊娠中の服用は積極的にはされません。

ただし、これらの成分を絶対に妊婦が服用してはいけないというわけではありません。あくまでも「慎重に使ったほうが良い成分」です。

症状を改善することを優先して、上記の成分が含まれている漢方を使うこともあるので、自分の判断で服用を中止せず、医師・薬剤師の指示に従うようにしてください。

出典元:
  • 嶋田豊(監)「漢方薬辞典 改訂版」p103(主婦と生活社,2016)
  • 福岡県薬剤師会「17.妊婦への投与に注意が必要な漢方薬」(https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/17.pdf,2020年10月21日最終閲覧)

妊娠に伴うつらさを緩和してくれる漢方薬

妊婦 つらい PIXTA

漢方医学では、「気(き)・血(けつ)・水(すい)」が体内でバランスよく巡っている状態を健康と考えます。

つまり、この「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の流れが滞ることや、それぞれの量が不足することによって、妊娠時に不調が現れるというわけです。

  • 気(き):元気の「気」や気力の「気」のことで、生活する上で必要なエネルギー
  • 血(けつ):血液とその働き
  • 水(すい):汗、涙、消化液、リンパ液をはじめとする血液以外の体液とのその働き

例えば、むくみの原因は「水」の流れが滞っていることが原因です。

そのほか妊娠時によくみられるめまい、便秘、頭痛なども「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の異常によって生じると考えられています。

漢方薬にはさまざまな生薬を組み合わせることで、「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の異常を改善し、体調を整える効果が期待できます。

ただし、頭痛ひとつをとっても「水」の滞り、「気」の逆流・停滞、「血」の滞りなどさまざまな原因が考えられるため「気(き)・血(けつ)・水(すい)」にどんな異常があるかは医師や薬剤師でないと判断が難しいのが実情です。

漢方薬は妊娠に伴う諸症状の改善に使われますが、妊娠中に服用可能な漢方薬でどれが自分に合うのか、まずは医師や薬剤師に相談してみることをおすすめします。

出典元:

自己判断はせず医師に相談を

妊婦の方の中には「西洋薬を飲むのには抵抗があるけど、漢方薬なら大丈夫」と安易に服用される方がいらっしゃいます。

しかし、すベての漢方薬を妊娠中に服用できるわけではありません。漢方薬の中には妊娠中の服用は避けるべきとされているものもあります。

「漢方薬なら安全に使える」というイメージがあるかもしれませんが、妊娠中は特に慎重に使う必要があるので、医師または薬剤師に相談した上で服用するようにしましょう。

出典元:
  • 嶋田豊(監)「漢方薬事典 改訂版」p102-103(主婦と生活社,2016)

オンライン薬局YOJOで漢方薬について相談する

執筆:薬剤師 加藤智之
北里大学薬学部を卒業後、大手ドラッグストアに就職。市販薬や健康食品・サプリメントの相談販売、処方薬の調剤業務に従事。その後、不妊専門クリニックの門前薬局にて、多くの不妊患者へ服薬指導を行った。現在はオンライン薬局YOJOにて、一人ひとりの体質に合わせた漢方薬の提案やサービス開発に従事している。

監修:医師 辻裕介
順天堂大学医学部卒業。ヘルスケア・フィットネスアプリのFiNCで事業開発。順天堂医院にて臨床と研究に従事した後、2018年12月にオンライン薬局「YOJO」を展開する株式会社YOJO Technologies設立。

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