赤ちゃんに医療保険は、基本的に不要
入院や通院でかかった医療費を保障してくれる、医療保険。パパママの中には不慮の事故や病気に備え、医療保険に加入している方がいるのではないでしょうか。
赤ちゃんが生まれると「この子にも保険をかけるべき?」と気になるもの。しかし、赤ちゃんには自治体の医療費助成制度があります。医療保険に加入させる必要はないのでしょうか。
ファイナンシャルプランナーの鈴木さや子さんによると、基本的には赤ちゃんに医療保険は不要とのこと。多くの自治体では赤ちゃんに対しては通院、入院共に無料、もしくは一定額以上の部分は助成という制度を実施しているため、多額の医療費に苦しめられる可能性は低いといえるからです。
医療保険を検討したほうがいい場合もある?
基本的に不要といえる医療保険ですが、一方で、医療保険を検討したほうが良い場合があるといいます。それはどのようなケースなのか、鈴木さんに聞きました。
自治体の子供に対する医療費助成が受けられない、または充実していない場合
鈴木さんによると、自治体の医療費助成制度が不十分だと感じる場合には、医療保険を検討しても良いそう。医療費助成には自治体によって差があり、手厚い自治体では子供が18歳になるまで通院、入院共に無料になる一方、充実していない自治体では、3歳以上の通院は助成対象にならない自治体もあるようです。
特に赤ちゃんのうちは、意外と入院する機会が多いもの。厚生労働省が平成26年10月21日から23日に、医療機関13,573施設を対象に行った、入院者の年齢別受療率の調査によると、0歳児10万人当たりの入院者は1,062人でした。これは60歳以下の年齢層では最も多い数字です。1~4歳でも10万人あたり170人と、未成年の中では0歳の次に高い割合となっています。入院の機会が多く、助成制度の対象ではない場合は注意が必要です。
また、医療費助成自体に所得制限がある自治体があるといいます。所得制限により医療費助成が受けられない場合には、医療保険に加入することを検討してもよいでしょう。
- 厚生労働省「2 受療率 」厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/02.pdf,2017年6月26日最終閲覧)
健康保険外の医療費が不安な場合
子供の医療費助成制度では、健康保険外の医療費は助成対象になりません。例えば入院した場合の個室での差額ベッド代や食事代、付き添いベッド代などです。さらに鈴木さんは、子供が2人以上いる場合に、1人とママが付き添い入院している間、他の子供の面倒を見る人がいないときのベビーシッターや一時保育サービス費がかかることを指摘します。
医療保険に加入していて、入院に対する保険金がおりた場合には、こうした費用に回すことができるでしょう。それでも数回の入院では支払った保険料に対して保険金が得とはいえませんですが、比較的入院の機会が多く、健康保険外の費用がかかった場合は、医療保険で受け取るお金は心強いと考えられます。
納得して医療保険に入るとしたら、どんな選択肢がある?
では、ママが自治体の医療費助成制度や、保険外の内容について理解した上で「我が子には保険を検討したい」と考えたとき、どのような保険を考えることが良いのでしょうか。
鈴木さんに、ママが安心でき、さらに家計への負担が少ない保険について聞きました。
安価で幅広い保証の「共済」なら安心が安く手に入る
鈴木さんが「ママの不安を解消する保障が一通り入って、お得感があります」と話すのは、共済保険。
例えば全労済が販売する、こくみん共済のキッズタイプでは、月掛金900円(2017年6月時点)で、以下のケースについて保障を受けることができます。
- 入院(事故、病気)
- 通院(事故)
- 骨折、脱臼(事故)
- 損害賠償責任を負うとき
- 扶養者である契約者の死亡、重度障がい(事故、病気)
- 本人の死亡、重度障がい(事故、病気)
- 身体に障がいが残ったとき(事故)
「それぞれの保障の金額自体は小さいのですが、幅広い保障を月900円で受けられるという意味では、共済がとても優秀です」と鈴木さんはいいます。
特に鈴木さんがポイントとしているのは、入院保障の日数上限。民間の保険会社が60~120日に対し、こくみん共済では365日。その他の都民共済、コープ共済では360日としています。入院日数の上限は、一度退院してもすぐにリセットされず、同じ病気で180日以内に入院した場合はどんどん積算されていくのだそうです。
同じ病気で細切れ入院する場合には、保障日数が長い方がよいといいます。子供の入院では、少しでも退院に不安があるうちは医師の近くにいてほしいという思いから、入院が長引いてしまうことがありそうですね。その場合には、保障日数が長い共済に助けられるかもしれません。
また、子供向けの共済は、子供が18歳~20歳になったときには大人向けの保険に自動移行されます。移行までは保険料が上がらないまま継続できるのがうれしいですね。
学資保険の医療特約に注意、保険と貯蓄は分けること
子供の医療保険以外に、学資保険に医療特約を付ける形でも、子供の医療に対する保障をつけることが可能です。
しかし、鈴木さんは「できれば『保険』と『貯蓄』は分けるべきです」といいます。その理由は、医療特約を付けることにより、貯蓄のためのはずだった学資保険が元本割れしてしまい、何のために学資保険にお金を払っているのかを見失ってしまう可能性があるからだそう。
鈴木さん自身も、お子さんが小さかった頃、あまりよく考えず、広告のキャラクターに惹かれて学資保険を契約し、医療特約をつけていたそう。しかし、後々お金についてきちんと考えたところ、医療特約の保障を受けたことはないのに、貯蓄として契約した学資保険が元本割れしていることに気づき、特約はすべて外したといいます。
ご自身の経験からも、貯蓄と保険は分け、何が必要で何が不要か、一つ一つ考えて契約することが大切だとアドバイスをしてくれました。
基本的には自治体の助成で十分、不安にはできるだけ負担のない「安心」を
鈴木さんによるはじめのアドバイス通り、子供の医療費は、基本的には自治体の助成制度を利用していれば十分に補助され、家計を圧迫するほどではないでしょう。その上で、健康保険外の出費に不安がある場合や、自治体の助成を受けられない、もしくは充実していないと感じるときには、医療保険を検討してもよいかもしれません。
もし医療保険を検討する場合には、子供の生活の中で負担する可能性がある医療費部分について、広く保障してくれ、できる限り家計の負担にならないものを選択するようにしましょう。
まずは自治体の助成制度を確認し、家庭では医療保険に加入する必要があるかを考える機会を設けても良いかもしれませんね。
鈴木さや子さんプロフィール
1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP(R)・キャリアカウンセラー。家族が笑顔になれるための生活に役立つお金の知識を、主に女性向けに、セミナーやコラム記事などを通じて情報発信。保険などの商品を一切販売しないFPとして活動中。
専門は教育費・保険・住宅ローン・マネー&キャリア教育、確定拠出年金。女性の心に寄り添う個人相談にも力を入れている。企業講演の他、小・中学校や地域コミュニティなどでの講演やワークショップなど、保護者や親子向けイベントも行う。中学生・小学生の母。
また、女性に特化して相談・講演を行う「みらい女性倶楽部」も運営。同団体での活動は、加入サポートや相談など主にiDeCoに関する情報発信をしている。