Ⓒママリ
翌朝、私は固い決意を胸に、保育園へお迎えに向かいました。ユウコさんを見つけたら、周りの目があっても、勇気を出して話しかけると心に決めていました。しかし、その日はユウコさんに会えませんでした。
「いつもとお迎えの時間が違ったんだ…」
家につき、メイがお気に入りのテレビ番組を見始めたとき、バッグの中で、スマホが震えました。画面を見ると、そこには「ユウコさん」の名前が。思わず足が止まりました。ユウコさんからなんて、一体何の用だろう?
一瞬、電話に出るのをためらいましたが、意を決して通話ボタンを押します。
ハルコ「…もしもし」
ユウコ「あ…ハルコさん?…あの…」
電話口のユウコさんの声は、いつもの強気な感じではなく、どこか歯切れが悪く、ためらっているような様子でした。
ハルコ「…どうかしたの?」
ユウコ「あのね……その……例の商品券のことなんだけど……」
商品券…。その言葉が出た瞬間、私の体はこわばりました。やっぱり、あの件だ。
ユウコ「…見つかったの」
ハルコ「え…?」
見つかった?聞き間違いだろうか?
ハルコ「ほ、本当…?どこにあったの?」
ユウコ「それが……その……ココナの習い事のバッグの中に……紛れてて……」
ハルコ「えっ…?習い事のバッグ?」
ユウコ「うん……今日、そのバッグの中整理してたら、奥の方から出てきて……」
子供の習い事のバッグ…?どうしてそんなところに?
ユウコ「たぶん…あの日、カウンターの上に置いてあったバッグも置いていて。私が無意識に入れちゃったんだと思う…他の書類か何かと間違えて…」
そう言って、ユウコさんは言葉を続けました。
ユウコ「本当に……ごめんなさい……!」
その声は、震えていました。
ユウコ「ハルコさんのこと、あんなに疑って……ひどいこと言って……本当に、申し訳ないと思ってる……」
ハルコ「…………」
私は、すぐには言葉が出てきませんでした。安堵の気持ちと、これまで受けた仕打ちに対する複雑な感情が、一気に押し寄せてきました。
ユウコ「最初は疑うつもりじゃなかったんだけど……でも、結果的に完全に疑ってかかってしまったの。もっと、ちゃんと自分で探すべきでした。本当に、ごめんなさい……」
必死に謝罪の言葉を繰り返すユウコさん。その声からは、後悔の念が伝わってきました。
まずは、見つかって本当によかった。
心の中に浮かんだのは、その安堵の気持ちでした。これで、私の疑いは晴れる。もう、冷たい視線や無視に怯えなくて済むんだ。
ハルコ「…そっか……見つかって、よかったね……」
私は、少し震える声で、そう答えるのが精一杯でした。
でも――、この話はこれで終わりにはできません。私にも、言わなくては気が済まないことがあるのです。
たった1つのできごとで見えてしまった、ママ友の本質
このお話では、同じ園に子どもを通わせるママ友同士のトラブルが描かれます。内向的なタイプ主人公・ハルコと仲良くなったのは、明るい人柄のユウコ。2人は同い年で子ども同士も仲がよく、送り迎えで顔を合わせるうちに徐々に距離を縮めていきました。
ところがある日、ユウコの商品券の所在がわからなくなるトラブルが発生。ユウコはその日に自宅に遊びに来ていたハルコを疑い始めます。当然、ハルコは身に覚えがありませんが、盗っていない証拠も出せない状態。2人の仲は険悪なものになってしまいました…。
トラブルを通じて見えてきたのは、明るい性格だと思っていたユウコの、相手を疑ってかかる本質。見たくない部分を見てしまったハルコは、ママ友との付き合い方を見直す決心をします。誰に降りかかるかわからないトラブルから、人付き合いについて改めて考えさせられる作品です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
サムネイルイラスト:まい子はん