Ⓒママリ
ユウコ「本当に……ごめんなさい……!」
電話口で繰り返される謝罪の言葉。商品券が見つかったことへの安堵と同時に、見つかるまでの期間、私がどれだけつらい思いをしてきたかが、改めて胸に迫ってきました。
ハルコ「…うん。見つかって、本当によかった」
まずは、その気持ちを伝えました。なくなってしまったと思っていたものが無事に見つかったのだから、それは純粋によかったと思えることでした。
でも、それだけでは終わりませんでした。私の心の中には、どうしても伝えなければいけない気持ちがありました。
ハルコ「…でもね、ユウコさん」
ユウコ「…うん…」
ハルコ「正直に言うと……すごく、悲しかった」
ユウコ「……そうだよね……」
ハルコ「私が盗んだって、決めつけられてて…。電話で言われたことも、保育園で無視され続けたことも……本当に、つらかったんだよ」
謝ってくれている相手に、追い打ちをかけるようなことは本来言いたくないものです。でも、ユウコさんには自分がしたことの重さをきちんと理解してほしかったのです。
ハルコ「メイもね、ココナちゃんと遊べなくなって、すごく悲しんでたんだよ」
ユウコ「メイちゃんまで傷つけて……。私、本当にどうかしてた……。思い込みでした。返す言葉もありません……」
ユウコさんの声は、どんどん涙声になりました。その謝罪は、心からのものであるように感じられました。
しばらくの沈黙の後、ユウコさんが言いました。
ユウコ「あの……明日からはまた、これまでみたいに仲良くしていただけますか?」
ハルコ「え……」
その言葉に、私は少し戸惑いました。普通に、仲良く?
あれだけの対応をされて、これまでのようにできるだろうか。
正直、自信はありませんでした。
心の中には、ユウコさんに対する不信感や、恐怖心が残っています。
でも、ここで「無理だ」と突き放すのも違う気がしました。ユウコさんは、きちんと自分の非を認めて謝ってくれた。そして、メイとココナちゃんの関係を考えれば、親同士が険悪なままなのは良くない。
ハルコ「…うん。そうだね。私も、そうしたいよ」
そう答えるのが、精一杯でした。本心からそう思えたかというと、まだ複雑な気持ちが残っていましたが…。
ユウコ「本当に、ありがとう……!」
ユウコさんは、心底ホッとしたような声でした。
ユウコ「ではまた明日、保育園で…!本当に、ごめんなさい」
ハルコ「うん、また明日ね」
そう言って、電話を切りました。
(ふぅ……)
大きなため息が、自然と漏れました。とりあえず、疑いは晴れた。一番大きな問題は解決したんだ。よかった、本当によかった。
そう思う一方で、胸の中には、もやもやが残っていました。
(ユウコさんとのお付き合いを続けたら、また何かあった時に、同じように疑われるんじゃないか?また、あんな風に無視されるんじゃないか…?)
そんな不安が、どうしても拭えません。この数日の悲しくて怖いできごとが、トラウマのように蘇ってきます。「メンタルが弱い」と言われればそれまでかもしれないけれど、本当にきつかったのです。
ユウコさんはしっかり謝ってくれたことは理解していても、心がなかなか追いつきません。明日、私はちゃんと「普通」に振る舞えるだろうか…。不安な気持ちを抱えたまま、夜は更けていきました。
たった1つのできごとで見えてしまった、ママ友の本質
このお話では、同じ園に子どもを通わせるママ友同士のトラブルが描かれます。内向的なタイプ主人公・ハルコと仲良くなったのは、明るい人柄のユウコ。2人は同い年で子ども同士も仲がよく、送り迎えで顔を合わせるうちに徐々に距離を縮めていきました。
ところがある日、ユウコの商品券の所在がわからなくなるトラブルが発生。ユウコはその日に自宅に遊びに来ていたハルコを疑い始めます。当然、ハルコは身に覚えがありませんが、盗っていない証拠も出せない状態。2人の仲は険悪なものになってしまいました…。
トラブルを通じて見えてきたのは、明るい性格だと思っていたユウコの、相手を疑ってかかる本質。見たくない部分を見てしまったハルコは、ママ友との付き合い方を見直す決心をします。誰に降りかかるかわからないトラブルから、人付き合いについて改めて考えさせられる作品です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
サムネイルイラスト:まい子はん