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雨の日の図々しいお願い
久しぶりに自宅へ遊びに来てくれた友人の佳代。積もる話に花を咲かせ、楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。しかし、彼女が帰ろうとしたとき、外ではポツポツと雨が降り始めていたのです。
「あ、雨降ってるね。ねえ、使ってないビニ傘(ビニール傘)とかない?」
佳代から発せられたその言葉に、私は思わず心の中でムッとしてしまいました。
わが家は駅まで向かうバス停がすぐ目の前にあり、少し走れば20秒ほどで着く距離です。それなのに、当然のように「もらえる傘」を探す彼女の態度に、違和感を拭えませんでした。
返ってこない善意
私が彼女の言葉にムッとしたのには理由がありました。
以前も同じような状況で佳代に傘を貸したことがあったのですが、結局そのまま返ってきていないのです。それどころか、他の友人数名も同じように傘を借りて返してくれていません。友人を家に招くうちに、わが家の傘立てはどんどん寂しくなっていきました。
現在、わが家にある大人用の傘は、たったの2本。しかもそのうち1本は骨がゆがんで壊れかけています。
「今日は傘が全然ないの、ごめんね…たくさんあったんだけど、誰も返してくれなくてさ~」
角が立たないよう、冗談めかしてそう伝えてみました。貸せない申し訳なさと、暗に「前回のも返ってきていないよ」というメッセージを込めたつもりでした。
「ビニ傘なら返さなくていい」という価値観のズレ
ところが、私の言葉を聞いた佳代は、悪びれる様子もなくこう言ったのです。
「んー、まあ、ビニ傘だしねぇ」
その一言に、私は言葉を失いました。彼女にとってビニール傘は、コンビニで手軽に買える「使い捨て」のような感覚だったのでしょう。借りたものを返すという最低限のマナーよりも、「ビニ傘程度で細かいことを言う方がおかしい」という空気が流れた気がしました。
結局、彼女はしばらく雨宿りをしてから、止み間を狙って帰っていきましたが、見送った後の私の心は、外の天気以上にどんよりと曇っていました。
自分にとっての「当たり前」を見直してみたけれど
その夜、帰宅した夫に一連のできごとを話しました。
「ビニール傘って、返さないのが一般的?大して高くない傘だし、私が細かすぎるのかな」
私の問いかけに、夫は少し考えてから答えました。
「ん~金額の問題じゃないと思うよ。たとえ安価なものでも、困っているときに助けてもらったことを、次に会うまでちゃんと覚えていられるかってところじゃない?」
確かに、3ヶ月に一度しか会わないような間柄だと、ビニール傘を借りたこと自体忘れてしまうこともあるかもしれません。私自身も、絶対に忘れない自信があるかと聞かれれば、不安になることもあります。
でも、相手の傘が減ってしまうことで困るかもしれないと想像することはできるはず。
自分と相手にとっての当たり前は違うと理解した私は、傘を貸すことを辞めようと思いました。それは親切心ではなく、なあなあな関係を許してしまう隙を作っていたのかもしれません。
次に雨が降ったときは、「すぐ近くのコンビニで安く買えるよ」と伝えればいい。もし家に予備の傘があって貸そうと思う状況なら、返ってこなくてもいいと思って貸すことにします。そうすれば、あとでこうしてモヤモヤすることもないですからね。
1本の傘を通して見えたのは、物の価値ではなく、人との距離感の保ち方と、価値観の違いの受け止め方でした。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










