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ママから自分に戻る時間を。けっさくくん演じた歌手が懐メロに込めるメッセージ

「歌に対象年齢はない」。こう語るのは、2011年から7年間、Eテレ『フックブックロー』、『フックブックローミニ』に出演していた谷本賢一郎さん。番組では、人形たちとともに数々の懐かしい名曲を歌い、子供だけでなくママたちの心もとらえました。子供が生まれるとつい自分が好きなものから遠ざかりやすいママたちに対し「子育てが大変なときこそ、親子でママが好きな曲を聴いてほしい」と話す谷本さんに、お話を聞きました。

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Eテレ『フックブックロー』で活躍、谷本賢一郎さん

「はしっても あるいても ちきゅうのスピードは おなじです」こんな歌で始まっていた、Eテレの教育番組『フックブックロー』。現在は放送を終了していますが、あのオープニングソングは印象深いですね。

番組内で唯一、人間の登場キャラクターとして人気を集めていたのが、平積傑作(ひらづみけっさく)こと、谷本賢一郎さん。番組内では「けっさくくん」の愛称で親しまれていましたが、実は番組に出演するまでは挫折と苦労の連続だったといいます。

夢をあきらめきれない会社員から「けっさくくん」へ

カメラマン大島さん撮影 Ⓒママリ

谷本さんが音楽に目覚めたのは中学生のころ。先輩から借りたCDでビートルズを知り、その歌声に憧れたと振り返ります。「自分もビートルズのようになりたい」と大学生からは時々都内で歌っていたものの、歌手になるきっかけをつかめず、一度は一般企業に就職。それでもやはり夢をあきらめきれず、退職して都内のロックバーで働き、お客さんを相手に歌っていたといいます。

「夢を追ってバーで歌い始めたのですが、実は3年経ってもお客さんを呼べなくて…。『もう田舎に帰ろうか』と思ったこともあるんです。それでも『まだやりたい』という気持ちだけで続けていたら、お笑いのステージを主催している方から声をかけていただいて、替え歌を歌う仕事をはじめました。それが30歳のころ。歌手を目指してから10年以上経っていましたね」

ステージで歌う谷本さんを見た『フックブックロー』制作担当者から出演の話があったのは、さらに5年後。約15年間、夢をあきらめずにいた結果の出会いでした。

声がかかったきっかけの一つは、インパクト。当時からけっさくくんのトレードマークであるツイストパーマを逆立てたヘアスタイルだったことから「人形に負けないインパクトがある」という理由で声がかかったそう。髪型はアメリカのミュージシャン、ボブ・ディランに影響をうけたといい「この髪型でよかったと思いました」と谷本さんは朗らかに笑います。ステージで観客を楽しませる姿も、担当者の心をつかんだのかもしれませんね。

「日々はんせい堂」で得たもの

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番組の中では、古書店「日々はんせい堂」で働く青年、平積傑作としてパペットとともに歌声を聴かせてくれた谷本さん。同僚役であるパペットとのやり取りは、不思議とすぐに慣れたといいます。

「お芝居は『フックブックロー』が完全に初挑戦。人間相手のお芝居ですら一切してこなかったので、パペット相手が『やりにくい』という感覚はありませんでした。放送が続いていくと、だんだん彼らが人形だということを忘れて、日々はんせい堂の仲間「しおりさん」や「もくじい」の表情を感じ取れるようになりました」

パペットには、人形操演者と声優の魂が込められていると語る谷本さん。とくにお芝居の部分は、操演と同時に声優が声を当てているため、より一体感が生まれ、生の会話に近く演じられたそうです。

「歌う」喜びから「届ける」喜びへ

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