Ⓒママリ
約束の火曜日。私は少し早めに保育園へメイを迎えに行き、その足でユウコさんの住むマンションへ向かいました。
メイは「ココナちゃんち、行くのー?」と、朝からずっと楽しみにしていて、私の手を引きながらスキップせんばかりの勢いです。
ハルコ「メイ、あんまり急ぐと転ぶよ」
メイ「だって、早くココナちゃんに会いたいんだもーん!ブロックで一緒に遊びたいの!」
ハルコ「ふふ、そうだね。楽しみだね」
マンションに着き、インターホンを鳴らすと、すぐにユウコさんが笑顔で出迎えてくれました。
ユウコ「いらっしゃーい!ハルコさん、メイちゃん!待ってたよー!」
ココナ「メイちゃーん!」
メイ「ココナちゃーん!」
子供たちはすぐに手を取り合って、リビングの方へ駆けていきました。ユウコさんに促され、私もリビングへ。広々としていて、おしゃれなインテリアで飾られた素敵なお部屋でした。
ユウコ「どうぞどうぞ、適当に座ってて!すぐお茶淹れるね」
ハルコ「わあ、素敵なお部屋ですね。ありがとうございます、お邪魔します」
リビングのソファに腰を下ろすと、ユウコさんはキッチンへ向かいました。子どもたちは、リビングの一角にあるキッズスペースで、早速おもちゃを広げて夢中で遊び始めています。その楽しそうな声を聞きながら、私は少しだけホッとしました。やっぱり、娘が楽しんでくれるのが一番うれしい。
ユウコさんがお茶とお菓子を持ってきてくれて、私たちはいろいろおしゃべりをしました。ユウコさんは本当に話し上手で、私があいづちを打つだけでも、会話がどんどん弾んでいきます。
ハルコ「ココナちゃん、もうひらがな書けるんですね!すごいなあ」
ユウコ「そうなのよー。なんか、いつの間にか覚えててさ。メイちゃんは?」
ハルコ「うちはまだ全然…自分の名前がやっとかなあ」
ユウコ「まあ、そのうち覚えるよ!子どもそれぞれのペースがあるからね」
そんなたわいもない会話を続けていると、あっという間に時間が過ぎていきます。子供たちもすっかり打ち解けて、キャッキャと楽しそうな笑い声が部屋に響いています。
そろそろお昼寝の時間も近づいてきたので、私たちは名残惜しい気持ちを抱えつつ、お暇することにしました。
ハルコ「ユウコさん、今日は本当にありがとうございました。とっても楽しかったです。メイもすごく喜んでました」
メイ「ココナちゃん、バイバーイ!また遊ぼうね!」
ココナ「うん!バイバーイ!」
ユウコ「こちらこそ、来てくれてありがとう!楽しかったね。またいつでも遊びに来てよ!」
ハルコ「はい、ぜひ!じゃあ、失礼します」
ユウコさんとココナちゃんに見送られ、私たちはマンションを後にしました。
帰り道も、メイは興奮冷めやらぬ様子。私も、ユウコさんと話せて、楽しい時間を過ごすことができたと満足していました。
家に帰り着いて家事が落ち着いたタイミングで、私はユウコさんにお礼のLINEを送りました。
「今日はありがとうございました!とても楽しかったです。また遊んでくださいね」
ごく簡単なメッセージです。
すぐに既読がつき、返信がありました。でも、その内容は、私の予想とは全く違う、思いもよらないものだったのです。
ユウコ「こちらこそありがとう!楽しかったね!ところで、ちょっと聞きにくいんだけど…」
え?なんだろう?改まった感じの文章に、少しだけ胸がざわつきました。
ユウコ「ハルコさんの鞄の中にさ、封筒に入った商品券が混ざってたりしてない?実は、キッチンのカウンターに置いてたやつが見当たらなくて…。勘違いだったら本当にごめん!」
…商品券?封筒?
私は一瞬、何のことか分かりませんでした。ユウコさんの家のキッチンカウンター?私は今日、リビングからほとんど動いていません。キッチンに近づいた覚えも、封筒を見た記憶も全くありません。
でももしかしたら、子どもたちが遊んでいるうちに、何かのはずみでメイが間違えて私の鞄に入れてしまった可能性もゼロではないかも?混乱しながらも、私はすぐに自分の鞄の中身を全部出してみました。財布、スマホ、ハンカチ、ティッシュ、化粧ポーチ…。商品券らしき封筒はありません。念のため、メイが持って行った小さなリュックサックの中も確認しましたが、中に入っていたのは、お気に入りのぬいぐるみと、ぐちゃぐちゃになった折り紙だけでした。
私は急いでユウコさんに返信しました。
ハルコ「LINEありがとう!商品券のことだけど、私はキッチンには近づいてないし、封筒も見てないんだ。念のため、自分の鞄とメイのリュックも確認したけど、やっぱり入ってなかったよ。お役に立てなくてごめんね」
そう送った直後、私のスマホが鳴りました。通話の着信です。ディスプレイには、「ユウコさん」の名前が表示されていました。
たった1つのできごとで見えてしまった、ママ友の本質
このお話では、同じ園に子どもを通わせるママ友同士のトラブルが描かれます。内向的なタイプ主人公・ハルコと仲良くなったのは、明るい人柄のユウコ。2人は同い年で子ども同士も仲がよく、送り迎えで顔を合わせるうちに徐々に距離を縮めていきました。
ところがある日、ユウコの商品券の所在がわからなくなるトラブルが発生。ユウコはその日に自宅に遊びに来ていたハルコを疑い始めます。当然、ハルコは身に覚えがありませんが、盗っていない証拠も出せない状態。2人の仲は険悪なものになってしまいました…。
トラブルを通じて見えてきたのは、明るい性格だと思っていたユウコの、相手を疑ってかかる本質。見たくない部分を見てしまったハルコは、ママ友との付き合い方を見直す決心をします。誰に降りかかるかわからないトラブルから、人付き合いについて改めて考えさせられる作品です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
サムネイルイラスト:まい子はん