もうやさしくできない日
夫と2人の子どもと穏やかに暮らしていた柚月。そんな日々に、同じ価値観を持つ“気の合うママ友”が現れました。最初は嬉しかった関係が、なぜか少しずつ苦しく、そして怖くなっていったのです。静かな違和感から始まる、ある母親の心の記録です。『もうやさしくできない日』をごらんください。
夫と2人の子どもと穏やかに暮らしていた柚月。そんな日々に、同じ価値観を持つ“気の合うママ友”が現れました。最初は嬉しかった関係が、なぜか少しずつ苦しく、そして怖くなっていったのです。静かな違和感から始まる、ある母親の心の記録です。
園の行事が中止になった夏、あるママさんから「公園で花火をしないか」と声がかかります。久々の外遊びに心が弾む一方で、藤井さんからのLINEには“あなたもそう思うでしょ?”という無言の圧がありました。参加後、起こった出来事に、なぜか責めるような藤井さんの視線。そして夜、藤井さんの長文メッセージに柚月は凍りつきます。
2学期が始まり、藤井さんと距離を取る柚月。しかし、噂話、ママたちの視線、そして“近づく車輪の音”が、彼女の気配をじわじわと近づけてきます。「見られている気がする」が確信に変わったとき、柚月のなかで“ただの違和感”は“はっきりとした恐怖”へと姿を変えます──。
「子どものために」「関係を壊したくないから」そうやって、自分の感情を押し殺し、“受け容れて”きた柚月。しかし、藤井さんからの常識を逸した連絡、執拗な干渉、そして身勝手な価値観の押し付けは続き──その夜、柚月は“限界”を静かに迎えます。これは“優しさ”の終わりを告げる夜の記録。
藤井さんによる終わらない追及、止まらない干渉。柚月は「優しさ」の皮を被った我慢が、自分をすり減らしていたことにようやく気づきます。「子どものため」ではなく、「自分を守るために」。限界の夜、柚月はついにその胸のうちを言葉にします──“もう、やさしくできない”。