収入保障保険とは
収入保障保険とは死亡保障のある定期保険の一種で、被保険者が亡くなった場合、一括で保険金を受け取るのではなく、毎月(または毎年など)一定金額が保険期間中に受け取れる生命保険のこと。この受け取り方を年金方式と言います。
例えば、保険をかけた夫(または自分)が50歳で亡くなったとします。定期保険だとこの亡くなった時点で、例えば3000万円の保険金がまとめて支払われます。一方収入保障保険では、例えば20万円が保障期間中毎月支払われることになります。
支払われ方だけが違うように見えますが、保険料なども異なってきます。通常の定期保険と比べながら、詳しく見ていきましょう。
収入保障保険のメリット
収入保障保険は定期保険の一種なので、少ない保険料で大きな保障を得られるというのが基本的なメリットです。その分保険料は返ってこない、掛け捨てというデメリットも存在します。
以下では、それに加えて収入保障保険ならではの特徴を説明します。
定期保険に比べ保険料が安い
収入保障保険で受け取る金額は、何千万円と設定するのではなく、月○万円というように、月(または年)単位で決めます。つまり何歳で亡くなったとしても、月々もらえる年金の額は変わりませんが、若くして亡くなったときと、満了に近い歳で亡くなったときでは支払われる期間が違うため、もらえるお金の総額も異なってきます。
なのでその分、一括で支払われる通常の定期保険に比べて保険料も安く設定してあります。
生活を安定させやすい
一括で保険金が支払われると、お金の管理に困ってしまうこともあるでしょう。しかし収入保障保険では毎月一定金額が支払われるため、一度に使いすぎてしまうことがありません。長期に亘って、残された家族は生活を安定させていくことができるでしょう。
毎月支払われるので、サラリーマン家庭ではお給料が振り込まれていたときと似ており、お金のやり繰りもしやすいかもしれません。
収入保障保険のデメリット
もらえるお金の総額が年々少なくなる
満了時に近ければ近いほど、年金が支払われる期間も少なくなるため、定期保険で同じ歳に亡くなった場合と比べて、受け取るお金の総額が少なくなることがあります。
保険期間中は、何歳で亡くなっても同じ額をもらいたいと考えるのか(定期保険)、満了に近づくにつれて家計のリスクも減るから、年金の総額が少なくても大丈夫と考えるのか(収入保障保険)、自分達がどちらなのか検討してみましょう。
課税対象になる場合がある
後に詳しく説明しますが、月々年金を受け取る場合、相続税に加えて所得税がかかることがあります。その分、もらえるお金が少なくなるということです。
ただし二重課税にならないよう控除があるので、一括でもらう場合に比べて大きく損をするということはありません。
収入保障保険の種類
収入保障保険には通常のものに加えて、がんなど死亡リスクがある病気に備えた保障が付いたものがあります。保険料は異なるものの、保険の仕組み自体が変わるわけではないので、プラスアルファで病気の保障が付く、と捉えてみましょう。
通常の収入保障保険
通常の収入保障保険では、被保険者が亡くなった場合、または保険会社の定める重度の障害(高度障害)になった場合に年金を受け取ることができます。
月々の年金額を自分で設定することができ、5万~30万円程度が一般的です。もちろん年金が上がるごとに、保険料も高くなっていきます。
がん保障付き
死亡保障に加え、がん保障を付けた収入保障保険です。がんだと診断されたらお金がおります。治療や入院などで仕事ができない間の収入を、保障してくれます。通常の収入保障保険よりも保険料は高くなります。
三大疾病(特定疾病)保障付き
がんに加え、急性心筋梗塞と脳卒中になったときにもお金が支払われる収入保障保険です。3つの中では一番保険料は高くなりますが、その分病気への備えができるでしょう。
収入保障保険に向く人とは
収入保障保険に適した人は、次のような家庭です。以下では主に、定期保険と比較して紹介します。
- 小さな子供がおり、貯蓄が少ない家庭
- 子供が就職するまで保障がほしい家庭
安価な定期保険より、更に保険料が安いのが収入保障保険です。貯蓄が少なく、かつ毎月の保険料もあまりかけたくない場合、通常の定期保険よりも収入保障保険を検討した方がいいかもしれません。
また、収入保障保険は60歳や65歳まで入る場合が多く、定期保険の保険期間よりも長く設定する場合があります。子供がとりあえず大きくなるまでの10年間だけ保障が欲しい場合は、保険金が一定の定期保険の方が多くお金をもらうことができ、そちらの方がいいかもしれません。
しかし、「子供が就職するまで保障したい、子供が二人いるから保障期間を長くしたい」という場合は、安い保険料で保障がある収入保障保険の方が良い場合があります。特に、通常の定期保険は更新時に保険料が高くなるので注意が必要ですが、収入保障保険の場合、保険料は変わりません。
住宅ローンの団信代わりになる?
団信とは団体信用生命保険の略で、住宅を購入しローンを払う人が加入する生命保険のこと。ただし、生命保険と言えど団信によって保障されるのは、住宅ローンの返済のみです。つまり団信に入っている場合、被保険者に万が一のことがあれば、その後の住宅ローンは保険によってまかなわれ、また購入した住宅にもそのまま住むことができます。
以下では、団信への加入が必須な場合とそうでない場合に分けて、収入保障保険と比較します。
団信への加入が必須の場合
団信は住宅ローンのみを保障してくれるため、そもそも収入保障保険とは保障内容が異なります。ですので団信が収入保障保険の代わりになることはありません。ただし、団信に加えて収入保障保険に入る場合、もらえるお金を低めに設定した方が無駄がなくて良いでしょう。
また、住宅ローンの返済が支出の中で占めている割合が高い場合や、万が一のことがあっても遺族に貯金を残せる場合は、団信に加えて収入保障保険に入る必要はあまりないといえます。
団信への加入が任意の場合
万が一の場合に備え、住宅ローンのために保険に入る場合、団信と収入保障保険のどちらが得なのでしょうか?答えは、保険に加入する時期によります。
なぜなら、収入保障保険は加入時の年齢を考慮して保険料が決められますが、団信では考慮されないからです。若いとき(30代前半の男性)だと収入保障保険の方が安く、30代後半になってくると団信の方が安くなる傾向にあります。
収入保障保険は年齢に加えて、煙草を吸っていないと安くなる健康体割引などがあるため、若いうちは収入保障保険の方が得かもしれません。ただし、収入保障保険の年金をそのまま住宅ローンに充てる場合は、団信に比べて手続きが煩雑になるというデメリットもあります。
所得補償保険と収入保障保険の違い
両者の保険は名前が似ていますが、いつ支払われるかに大きな違いがあります。収入保障保険は紹介してきたように、被保険者が死亡または高度障害になった場合にお金が支払われます。一方所得補償保険では、被保険者が病気やけがにより働けなくなったときに、お金がおります。
それを踏まえた所得補償保険の特徴には、以下のようなものがあります。
- 現在の収入の最大60%ほどが支払われる
- 保障期間内に病気などにならず、お金を受け取らなかった場合、保険料の一部が戻ってくることがある
- 長期間ではなく、1年ごとの更新が多い
被保険者が病気やけがになったときの家計を保障するのか、亡くなった場合の家計を保障するのか、どちらの生活を優先して安定させたいのかを考えて、検討してみましょう。
収入保障保険を受け取る時にかかる税金
保険金はどんな受け取り方をしようとも、受け取るときに相続税がかかってきます。しかしながら、毎月受け取る収入保障保険にはプラスして、所得税がかかってくるので注意が必要です。
そうなると収入保障保険の方が、一括で受け取る通常の定期保険より損をするような気がしますが、二重課税にならないように課税の方法が決まっているため、受け取る年金全てに所得税がかかるわけではありません。
例えば月15万円の年金を20年間もらうとします。所得税は毎年高くなり、一番高くなる最後の年でも控除がある影響で、所得税は1320円という試算があります。所得税はかかるものの、損だと感じるほどには多くはないでしょう。
また、生命保険に入っていると収入に対して生命保険料控除を受けられるので、生命保険には税金ばかりがかかるわけではありません。
通常の定期保険と比較しながら、検討してみよう
収入保障保険は、定期保険の中でも更に安く、掛け捨ての中ではお得に感じます。子供が大きくなってきたら大きな保障はいらない、でも保障自体は持っていたいという場合には、通常の定期保険よりも適しているでしょう。
一方そもそも貯蓄があり、万が一の場合は大丈夫という場合や、住宅ローンだけが懸念という場合は、収入保障保険は必要ない場合があります。また、大きな保障額を必要とする場合は、保険金が一定な定期保険の方が向いていることもあります。収入保障保険の特徴が自分たちに合っているか、よく考えてみてくださいね。