個人年金保険とは
個人年金保険とは生命保険の一種で、国民年金や厚生年金に加え自分で積み立て、老後に備えるための保険です。公的年金のもらえる額がどんどん減っていくと言われているなか、自分で備えようかな...と思っている人が頭に浮かべるものとして、個人年金保険があります。
自分で積み立てるのに、もしもらえる年齢になる前に亡くなったらどうなるの?と思うかもしれません。でもそこは大丈夫。保険ならではの特徴として、万が一保険金を受け取る前に亡くなった場合は、それまでの保険料に相当する額を受け取ることができます。
例えば60歳など、ある年齢に達すると毎月年金を受け取るという仕組みは個人年金保険に共通しています。
個人年金保険の種類
個人年金も他の生命保険と同じようにいくつかの種類に分かれるのですが、その前に押さえておかなければいけないポイントがあります。それは年金の受け取り方です。
受け取り方といっても、月々もらうかまとめてもらうか、という話ではありません。
個人年金保険にはある特徴があります。それは、亡くなったあとも年金が支払われる期間があること。これを保証期間といいます。この保証期間のあとにも年金が続くものがありますが、その受給は亡くなった時点で終わりになります。
保証期間のあと、生きている限り年金がもらえるか、一定期間しかもらえないか、全くもらえないかによって保険の種類が違うのです。
保証期間付終身年金
この保険は名前の通り保証期間があり、そのあとは亡くなるまで年金がもらえるタイプです。
保証期間中は、亡くなったとしても年金が支払われ続けます(または一括で受け取ります)。その後も亡くなるまで年金が支払われますが、亡くなった時点で年金は終了します。
生きている間はずっと年金をもらって、生活に不安がないようにしたい...そう思う方に向いている保険かもしれません。
保証期間付有期年金
こちらは保証期間のあと、ある時期まで年金を受け取れるタイプ。保証期間付終身年金では保証期間のあと、亡くなるまで年金を受け取れますが、保証期間付年金保険では、例えば70歳までと決めたら、そのあと生きていたとしても、年金受給は終了します。
60歳の定年から、65歳の公的年金受給が始まるまで、その期間のお金を確保したいと思っている人などは、こちらの保証期間付有期年金を選ぶでしょう。
確定年金
確定年金は上の二つと違って、保証期間しかないタイプの保険です。つまり保証期間中は生きていても亡くなったとしても年金が支払われ続けます。ですが、例えば保証期間を70歳までとした場合、その後年金がもらえることはありません。
夫婦年金
若いうちはあまり想像しないかもしれませんが、パートナーのどちらかが先立たれたあとのことは、歳を重ねるにつれて気になってきますよね。
夫婦年金は、どちらかが生きている限り年金がもらえます。例えば、夫が先に亡くなったとしても、自分が生きていたらそのまま年金は支払われ続けます。夫婦両方とも亡くなったときに、年金はそこで終了します。
定額年金と変額年金の違い
個人年金保険の種類がわかったところで、次は定額年金と変額年金の違いを見ていきましょう。先ほどは受け取りの方法や期間の違いに注目しましたが、今度はもらえるお金の金額の話になります。将来どれくらいもらえるのかというのは、一番気になるところでもありますよね。
個人年金保険は払う保険料をどのように運用するかでも、以下の二種類に分かれるのです。
定額年金
定額年金は、払った保険料の運用を保険会社にお任せし、将来もらう年金の額も決まっている(定額)年金保険のこと。主な特徴として、以下の二つが挙げられます。
毎月、または毎年保険料を払う場合、控除を受けられることがあります。自分で保険料を運用する自信がない、絶対損はしたくないと思う場合は下の変額年金より向いているでしょう。
- 年金が払った保険料を下回ることがない(損することがない)
- インフレに弱い
必ず払った分以上のお金を将来受け取れるというのは、老後の備えとしては安心ですよね。その分、たとえ運用が上手くいったとしても、それに併せてもらえる年金が増えることはありません。
インフレに弱いというのは、どういうことでしょうか?大きなインフレがあった場合、お金の価値は下がり、物価は今よりも高くなりますよね。なのでもらえるお金の金額自体は減らなくても、実質もらえるお金は(そのときの物価に比べて)少なくなってしまうのです。
変額年金
変額年金は、定額年金とは違い、自分で保険料を運用していく保険です。将来受け取る年金も、自分の運用次第で変わってきます。その特徴としては、以下の3つが挙げられます。
- リスクが大きい
- インフレに強い
- 一時払いのタイプが多い
変額年金では、上手くいけば定額年金よりも多くの年金を受け取ることができますが、上手くいかなかったら払った保険料よりも少ない年金しか受け取れないこともあります。得する一方で、損することもあり、定額年金よりリスクの大きい保険といえるでしょう。良くも悪くも自分次第の保険ではありますね。
一時払いというのは、保険料を契約のときにまとめて支払うことです。なので、まとめて払う分の貯金がないとそもそも変額年金に入るのは難しいでしょう。
ちなみに変額年金には、米ドルなど外貨で運用していくタイプもあります。
個人年金保険のメリット
個人年金保険の種類はわかった。でもやっぱり知りたいのは、老後に備える保険として、どういったメリットがあるのかというところですよね。
お金を残したいと考えるとき、多くの人が思いうかべるのが貯金です。ただ、貯金だけでは思ったように貯まらず、貯まりはするけれど増えはしません。一方、株などの投資はお金を増やすためにやるけれど、その分損することもありますよね。個人年金保険というと、その中間のようなイメージです。
以下では、貯金、投資と比べた中でのメリットを紹介します。
確実にお金を貯められる
個人年金保険の一番のメリットは、確実に老後のためのお金が貯められるところでしょう。毎月、または毎年一定のお金が例えば口座から引き落とされるので、意識しなくても勝手にお金は貯まっていきます。また定額年金にすれば、投資のように損するというリスクがありません。
お金があると使ってしまう、貯金が苦手という方が、確実に老後のためにお金を残しておきたいと考える場合は、個人年金保険は向いているでしょう。
銀行よりもお金が増える
低金利と言われる時代、銀行にお金を預けたとしても増えるお金は微々たるものですよね。同じ貯金をするなら、より利率のいい個人年金保険で積み立てた方が将来もらえるお金は増えるでしょう。
また銀行に預けたとしてもすぐ引き出すことができますが、個人年金保険の場合はそうはいかないので、着実に貯めていくことができます。
控除がある
毎月、または毎年個人年金保険の保険料を支払っている場合、控除を受けられることがあります。会社員は年末調整で手続きをすれば、還付金を受け取れます。支払う税金が、保険のおかげで減るというのは家計にとってプラスですね。
個人年金保険のデメリット
個人年金保険のメリットを見たあとだと、老後の備えとしてとても良い保険に感じるかもしれません。でもどんな保険にも、メリットがあれば必ずデメリットもあります。
以下の点をしっかり踏まえてから、個人年金保険を検討してみてくださいね。
中途解約が難しい
中途解約自体はできるのですが、そうすると支払った保険料を下回るお金しか戻ってこないことがあり、結果損することがあります。なのでなかなか中途解約しようとはなりません。
年金受給開始までに、万が一現金が必要になったとき、銀行に預けておけばすぐに取り出せますが、個人年金で積み立てていたら、すぐに現金を受け取ることが難しくなってしまうのです。
個人年金保険の契約は長期にわたります。払ったお金の融通が利かないのが、場合によっては大きなデメリットになってしまうでしょう。
他の金融商品に比べると利率が低い
個人年金保険、特に定額年金の場合はその安定性が売りですが、その分他の金融商品に比べると利率は低いです。銀行よりは高いですが、お金を増やす目的には向いていません。
貯金はある程度あるから、どうせお金を運用するなら増やしたいと思っている人は、保険ではない他の商品を考えた方が良いでしょう。
保険会社が破たんするともらえるお金が少なくなる
個人年金保険は長きにわたって入ります。その間に保険会社そのものが破たんする可能性だってありますよね。会社がつぶれても、もらえるお金がゼロになるわけではありませんが、当初もらえるはずだった金額よりは少なくなる恐れはあります。念のため、加入する前に確認しておくと良いでしょう。
老後資金づくりに個人年金保険は本当に必要?
国民年金と、サラリーマン世帯は厚生年金と、強制的に払っている保険料に加えて、自分で入る個人年金保険。保険料も決して安くはありませんし、個人年金保険に入るには、現在の家計にある程度の余裕があることが前提となりそうです。
特に会社員家庭では、公的年金は給料から自動的に保険料が引かれているので、老後のために備えている感じがあまりしませんよね。でも実質は、個人年金保険はプラスアルファの保険なのです。
以下ではお金の話や保険の加入率などを見ながら、自分達にとって個人年金保険は必要なのかどうか、今入るべきなのかどうかを考えてみましょう。
個人年金保険にかかるお金、もらえるお金はどれくらい?
生命保険文化センターの調査(平成21年度時点)によると、個人年金保険の保険料は一世帯、ひと月あたり約1万5000円です。将来もらえる年金の平均は10万円弱。
厚生労働省の調査(平成22年度時点)によると、サラリーマン世帯の公的年金受給額は、夫婦二人で約23万円。これは、夫婦二人が生活していける必要最低限だと考えられている金額とほぼ同じです。
その家庭が個人年金保険に入り更に10万円受給したとすれば、老後資金としては安心できる金額となるでしょう。逆に一万を超える保険料は、死亡保障や学資保険、民間の医療保険にも加入していたとすれば、決して少なくない保険料だと言えるでしょう。
どのくらいの人が加入しているの?
個人年金保険への加入率は、年齢によって変わります。こちらも生命保険文化センターの調査(平成21年度時点)によると、30代前半では1割強、40代前半では3割弱です。
思ったより少ない気がしませんか?これは、若いうちは老後の生活そもそもを意識することが少ないこと、また特に、会社員の場合は厚生年金ももらえるため、個人で入る必要がないと考える人もいるからでしょう。
子育て世代は保険の優先順位を考えよう
ママリの子育て世代には小さな子供がいる分、何かあったときのリスクがその他の世代よりもたくさんあります。つまり、老後の心配の前に、その他のリスクがあるということです。
例えば、家計を支えている夫または自分が職を失ったとき、病気で働けなくなったとき、困るのは老後の前に今の生活ですよね。そういった場合は、同じ民間保険でも医療保険や、また万が一に備える死亡保障の方が重要かもしれません。
またいつでもお金を取り出せる銀行の預金の方が、さまざまなリスクに対応できるという柔軟性があります。貯金として残す分があった上で、また株など投資性のあるものも考えながら、個人年金保険を検討していきましょう。