Ⓒママリ
🔴【第1話から読む】大して打ち解けていないのに「ちゃん呼び」引っ越し先で距離感バグ系ママに遭遇|私のストーカーはママ友
どんどん梓からの執着心が強くなるのを感じる真奈美。しまいには、避けることを諦めることで、心の平穏を保つようになります。そんなある日、梓は引っ越すことになったと言います。
諦めれば、疲れないと悟る
それからも、梓さんの行動は相変わらずだった。バス停での長話、私のSNSへのコメント、そして時折送られてくる、私への独占欲のようなものが滲み出たLINEメッセージ。私はそのたびに、内心でため息をつきながら、当たり障りのない返信を繰り返した。
「あと、1年半か……」
タケルの卒園までの期間を指折り数えるたびに、遠い未来のように感じられた。私は自分を応援してくれる友人の言葉や、健一の共感に支えられながら、なんとか日々をやり過ごしていた。
「今日も、梓さんに捕まっちゃったよ」
「またか。本当に、よく飽きないな、あの人も」
健一の言葉に、私も苦笑する。もう、諦めに近い感情だった。諦めなければ、私が疲弊するだけだと悟っていた。
朗報?ストーカーママと突然の別れ
そんなある日、幼稚園の掲示板に一枚の張り紙が貼られているのを、私は目にした。それは、転園のお知らせだった。
『この度、〇年〇組のサキ・〇〇は、家庭の事情により、〇月〇日をもちまして転園することになりました。』
サキちゃんが転園?つまり、梓さんも引っ越すということ?私はその張り紙を二度見、三度見した。信じられない気持ちで、自分の目を疑った。
まさか、こんな形で「解決」するとは。その日は、バス停で梓さんに会ったけれど、私は張り紙の件には触れなかった。梓さんも、特に何も言ってこなかった。翌日も、その翌日も。いつも通り私に話しかけてきた梓さんだったが、張り紙のことが頭から離れない。
そして、サキちゃんの転園日。バス停で、梓さんがいつもより少し寂しそうな顔で、私に話しかけてきた。
「まなちゃん、サキ、今日が最後の登園なの」
私は「え……そうなんですね」と、とっさに言葉が出なかった。
「そうなの。急なことだったんだけど、主人の転勤で、引っ越すことになったのよ」
梓さんは、少し俯きながらそう言った。その声は、どこか寂しそうで、私は一瞬、胸が締め付けられるような気持ちになった。同時に、体中にじんわりと広がる安堵感があった。
「そうだったんですか……寂しくなりますね」
私は精一杯、心にもない言葉を絞り出した。内心、跳びはねるような喜びを感じていたけれど、それを顔に出すわけにはいかない。
「うん。でも、まなちゃんとは、また会えるよね?」
梓さんが、私の目をまっすぐに見つめて言った。その言葉に、私の背筋が凍りついた。
「え……あ、はい。きっと……そうですよね」
曖昧な返事しかできなかった。最後まで、私に依存しようとする梓さんの気持ちが、痛いほど伝わってきた。
二度と会うことがありませにように、と願うばかり
数日後、梓さんとサキちゃんの姿は、バス停から消えた。私の心は、文字通り、重い荷を下ろしたかのように軽くなった。毎日、バス停に行くのが楽しみになったし、誰かに監視されているような感覚からも解放された。しかし、完全に安心できたわけではなかった。
「もし、またどこかで偶然、遭遇したら……」
そんな不安が、心の片隅に常に残っている。もしかしたら、梓さんは私の連絡先を消していないかもしれない。どこかで見かけたら、またあの長いメッセージが送られてくるかもしれない。
スッキリする結末ではあったけれど、完全に全てが終わったわけではない。この先の人生で、二度と梓さんと会わないことを、私は願わずにはいられなかった。
🔴【第1話から読む】大して打ち解けていないのに「ちゃん呼び」引っ越し先で距離感バグ系ママに遭遇|私のストーカーはママ友
あとがき:解放と残る影
梓の転園により、真奈美は長年の精神的な重圧から解放されます。バス停での監視から解放され、日常には安堵が訪れました。しかし、心の奥底には「もしまた会ってしまったら」という拭いきれない不安が残ります。
完全にスッキリしない結末は、関係の複雑さを物語っていますよね。幼稚園という限られたコミュニティー内のママ友とはいえ、お付き合いの相手によってはとても疲れる状況におちいってしまうこともあるようです。人付き合いの難しさを改めて感じるお話でした。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










