©ママリ
画面に映る、知らない笑顔
スマートフォンの画面を見つめたまま、私は小さくため息をつきました。SNSのタイムラインに流れてきたのは、周囲のママたちの楽しそうな写真。
「みんなで集まれて楽しかった!」
「離乳食の情報交換、助かるー!」
そこに、私と娘の姿はありませんでした。
それは、地域の支援センターが月に1回開催している、乳幼児の集まりで出会ったママたちでした。3回目の参加となった前回の集まりで、ようやくみんなでLINEグループを作り、「これからよろしくね」と言い合ったはずだったのです。
それなのに、私以外のメンバーはいつの間にか個別に連絡を取り合い、すでに次の約束を取り付けて集まっていました。
「…やっぱり、私だけ浮いてたのかな」
頭をよぎる寂しさを振り払うように、私は隣で無邪気に手足をバタバタさせている生後3ヶ月の娘・紬(つむぎ)の頭をそっと撫でました。
埋まらない「3ヶ月の壁」
思い返せば、集まりの席での会話には、どうしても埋められない溝がありました。私以外のママたちの子どもは、みんな生後6ヶ月。
「寝返りはもう打った?」
「離乳食の進め方、どうしてる?」
飛び交うのは、今の私にとっては少し先の未来の話ばかりです。まだミルクとねんねが中心の3ヶ月の紬を育てる私には、実感を伴った会話ができません。
それでも孤立したくなくて、私は必死でした。
「スプーンはどんなものを使っていますか?」
「最初はやっぱり1回食ですか?」
と、自分から積極的に質問を投げかけ、会話の糸口を探しました。皆、その場では優しく教えてくれましたが、会話が一段落すると、自然とまた6ヶ月児ママ同士のリアルな悩み相談へと戻っていってしまいます。
同じ3ヶ月ほどの赤ちゃんを連れたママも一人いましたが、少し雰囲気が合わず、連絡先を交換するような深い関係にはなれませんでした。
「3ヶ月の差って、想像以上に大きいんだな…」
悪気がある人は誰もいない。みんな、今の自分の育児に必死なだけ。分かっているからこそ、誰にもぶつけられないモヤモヤが胸の中にたまっていきました。
初めてのギャン泣き
少し焦りを感じていた私は、気分を変えようと、今度は別の児童館へ足を運んでみることにしました。
新しい出会いがあれば、今度こそ気の合うママ友ができるかもしれない。
そんな期待を胸にドアを開けましたが、結果は予想もしないものでした。
中に入った瞬間、それまでおとなしかった紬が、見たこともないような声でギャン泣きを始めたのです。
まだ場所見知りや人見知りをするような月齢ではないはずです。普段、地域の支援センターではどれだけ人がいても泣きませんし、保健師さんに抱っこされても平気でニコニコしている子なのに、なぜかその狭い施設では激しく泣きじゃくってしまいました。
あやしても、抱っこをしても、いっこうに泣き止む気配はありません。周りの目が痛く感じられ、私はいたたまれなくなって、結局そのまま逃げるように家に帰ってきました。
「私の焦りが、紬に伝わっちゃったのかな…」
夕方のリビングで、疲れ果てて眠る紬の寝顔を見つめていると、涙がこぼれそうになりました。子どものためにお友達を作ってあげたいのに、自分のためにも話し相手が欲しいのに、空回りばかりで心がポキリと折れかけていました。
焦らずに、私たちのペースで
その夜、帰宅した夫に一連の出来事を話しました。夫は「そっか、それは寂しかったね」と私の気持ちを受け止めてくれた後、優しくこう言いました。
「紬はまだ3ヶ月だし、ママ友作りも焦らなくていいんじゃない? 紬が泣いたのも、その場所の匂いや響きが、たまたま合わなかっただけだよ。まずは美咲と紬がリラックスして過ごせる場所をじっくり探してみた方がいいと思う」
夫の言葉に、肩の力がふっと抜けるのを感じました。
私は「ママ友を作らなきゃ」「周囲に追いつかなきゃ」というプレッシャーで、一番大切な“目の前の我が子との時間”を純粋に楽しむことを忘れていたのかもしれません。相手のママたちも、ただ同じ月齢同士で話が盛り上がっただけで、私を仲間外れにする意図なんてなかったはずです。
今でも、SNSで見かけるママたちの輪を見て、少し胸がチクリとすることはあります。
それでも、私は児童館のイベント情報を調べるのをやめていません。ただし、これからは「友達を作るため」ではなく、「私と紬が楽しい時間を過ごすため」に参加してみようと思っています。
子どもの成長スピードはそれぞれ。親の歩幅もそれぞれです。いつか自然と「お疲れ様です」と言い合える、気の合う誰かに出会える日を信じて。今は、この小さな手を握り締めながら、私たちのペースで一歩ずつ進んでいこうと思います。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










