母乳ブームの中、苦しんでいるママがいるのを知ってほしい
2016年6月11日にNHKのドキュメンタリー番組・目撃!日本列島で放送された「『母乳ブーム』のかげで-追い詰められる母親たち」という放送回が、ツイッターを中心に話題になっています。
母乳ブームと名付けられた現代において、ママたちはどのように追い詰められているのでしょうか?
番組の中で特に印象的だった部分を紹介します。
母乳ブームはなぜ起きている?
粉ミルクが手中だった高度経済成長期とは違い、近年では「母乳が一番」という考え方がママたちの中で浸透しています。
研究が進むにつれ、母乳が持つ医学的な価値がわかってきたためです。
番組では母乳のメリットとして、感染症にかかりにくくなる、アトピー性皮膚炎の発症をおさえるなどの効果が報告されていることにも触れています。
また、粉ミルクメーカーは粉ミルクを母乳に近づける研究が続けられていますが、免疫成分など、現段階では人工的に作れないものがあることもわかってるといいます。
このようなことを知ることで、「母乳で育てたい」と考えるままが増えたのかもしれません。
混合?完母?ママたちの関心はやっぱり母乳
番組内では、子育て相談会に訪れるママの4割りが「母乳が出にくい」などの母乳に関する悩みを抱えているとしています。
そんなママたちが、乳児ママ同士で話すときによく口にする言葉に「完母(カンボ)」「混合(コンゴウ)」「完ミ(カンミ)」というものがあります。
混合(コンゴウ)とは混合栄養育児のことで、母乳と粉ミルクの両方を使っていること、
完母(カンボ)とは完全母乳育児の略で、粉ミルクを使わずに母乳だけで育てていること、
完ミ(カンミ)とは粉ミルクだけで育てていることをさします。
そして、粉ミルクを使っているママの中には、完全母乳のママに引け目を感じる人も少なくありません。
母乳の通信販売も問題に
母乳育児を巡る情報の多さがママたちをさらに苦しめているという側面も指摘されています。
番組では、母乳の出が悪く、赤ちゃんが乳首を強く吸うために痛みに悩んでいたママが、対処法をネットで検索するものの、さまざまな情報がでてきてどうしたらいいのかわからなくなってしまった…と語りました。
「乳首をくわえさせたいのに、授乳しようとすると脂汗が出るような痛みがある」と話すママ。
同じ悩みを経験したことのある方も多いのではないでしょうか。
さらに、インターネット上には母乳の通信販売をするサイトも存在するといいます。
昨年、実際にネットで販売されていた商品から、通常の1000倍の細菌が検出され、厚生労働省が注意を促す事態になりました。
追い詰められる母親たち
みなさんは「インターネットで売られている、よくわからない母乳を購入する母親が悪い」と思いますか?
番組では、ある小児科医が、ママたちを支援するためにNPOを設立したことを取り上げています。
「ネットで母乳を売買することも悪いけれど、それ以上に母親がそこまで追い詰められているということが問題。
母乳で育てることは大事だが、母乳だけでなくていい。
母乳を宗教のように考えて、母乳でなければだめだ、母乳をあげなければいけないというように押し付けてしまう傾向は、大きな問題だ」
その小児科医が語ったこの言葉が、とても印象的でした。
産院が「母乳信仰」を植えつけている場合も
母乳育児の失敗からうつ病を発症してしまったママのエピソードも紹介されました。
そのママが出産した病院では授乳指導に力が入れられていた、産後、母親の体力が回復しない中で、1日ごとの母乳の量に目標が課せられていたといいます。
「3時間おきに起こされて、地獄の合宿という状態だった
この経験があったから「母乳で育てなければならない」と考えるようになった」
ママはこう語っていました。
彼女は退院後に徐々に母乳がでなくなり、頭の中は母乳のことでいっぱいになってしまったと言います。
母乳の悩みに子育てのつらさが重なり、不眠や聴覚過敏など、うつの症状が出はじめたものの、まわりのママ友からは理解されず、夫からも「母親はみんなやってることだよ」と言われてしまう…。
彼女の脳裏をよぎったのは「母親失格」の4文字だったそうです。
「同じように悩んでいました」ママたちの悲しい声
番組放送後、ツイッターには同じように母乳で悩んだ経験のあるママたちからさまざまなコメントが寄せられました。
「母親失格」。私も思っていました
可愛いはずのわが子を可愛いと思えないほど、追い詰められてしまった方も。
ママ友や産院からの「母乳で育てるのが一番」という圧力も、悩めるママをさらに苦しめる一因になっているといえそうです。
負け組みたいな気持ちに…
過去に、母乳が出なくて悩んでいたママからのメッセージです。
「粉ミルクで育てても元気に育っている」このひと言につきますよね。
国や産院も母親を追い詰めているのでは?
初めて子育てを経験するママにとって、産院での指導は子育ての価値観形成に大きく関わります。
国や産院は母乳育児のメリットだけを強調せず、母乳に過度にこだわる必要がないということも一緒に広めるべきなのかもしれません。
子供の笑顔と、元気に大きくなることが最優先
番組の最後では、母乳が出にくいことに悩むあるママが出した結論が紹介されます。
彼女はパパに毎日話をきいてもらい、その会話をとおして、子供と向き合う時間の大切さに気付いたといいます。
「母乳母乳と強く思いすぎていたけど、結局は子供の笑顔と、子供が元気に大きくなることが最優先ということに気づいた」と語るママ。
母乳や子育てのことで悩んだら、夫や身近な理解者にたくさん話をきいてもらうというのも、追い詰められた状況から抜け出す解決策になりそうです。