お湯で溶かなくてよい、液体ミルクに期待の声
現在日本では粉やキューブタイプの乳児用ミルクが販売されています。こうした粉状のミルクは衛生上の観点から70度以上のお湯で溶かして作る必要があり、調乳後に赤ちゃんの飲みやすい温度まで冷まさなくてはなりません。また飲ませた後も哺乳瓶を消毒しなければならないなど、手間と時間がかってしまいます。
外出時に授乳するためにはお湯を持ち歩く必要があったり、深夜の授乳では準備から片付けまでに時間がかかってしまって睡眠が削られたりと、ママの負担がどうしても大きくなってしまいますよね。
また震災時には断水などで水が使えない場合も。お湯を沸かすことができない、使用後の哺乳瓶が洗えないなど粉ミルクを与えるには困難なケースがいくつも考えられます。こんなときには、お湯を使う必要がなく封を開けるだけで飲ませることのできる液体ミルクは確かに便利だと言えるでしょう。
妊娠、子育て、妊活中の女性向けアプリ「ママリ」に次のような投稿がありました。
私は、不安と期待が半々なんですよね😅
今まで、固形のほほえみ、はぐくみ等国内産だから安心感があったので、使ってはいましたが。。。
液体ミルクになれば、手間も省けるし一々お湯を探さなくてもとなるし、最大限のメリットは、震災などで大活躍。
断水や停電でも液体ミルクなら、問題なく与えられますもんね☺
国内産で、液体ミルクの開発をしてほしいなぁって考えちゃいます。
液体ミルクが災害などの際に大活躍してくれそうと思いながらも、国産の商品がないことを不安に思うとおっしゃるママさん。
外国製の商品よりも国産のものの方が安心できるというのは筆者にもよくわかる感覚です。粉ミルクのように、国内で製造された液体ミルクがあれば安心して使えるのにと思うママは他にもいらっしゃるのではないでしょうか。
国内で製造される液体ミルクはいつから買うことができるの?
液体ミルクについては、災害時の利用に便利として国内の企業などから製造の要望があがっていました。
今回の措置はそうした状況を背景に、国内での製造・販売に向けて規格基準案を厚生労働省が示したもの。これをもとに省令が改正されると液体ミルクの国内製造が可能になる見通しです。
液体ミルクとはどのようなものなのか、日本製の商品はいつから販売されるのか。
ここでは、厚生労働省から提示された内容をもとに「乳児用液体ミルク」の販売に関する現況についてを紹介します。
液体ミルクとは
液体ミルクとは、乳児用に調整された液状のミルクのことです。海外では一般的に販売されているものの、日本では安全性に関する基準がないためこれまで製造されていませんでした。
しかし、この度厚生労働省が国内製造の規格基準をまとめたことで、これまでの粉状のミルクに加え、缶やレトルトパウチ、紙パックなどの容器に入った液体状のミルクが販売されるようになると考えられます。
特徴
- 育児の負担軽減
調乳の手間が省けることで深夜など時間がないときの授乳も簡単になり、育児の負担を軽くすることが期待できます。
またママが不在の際などにも、難しい手間がなく誰でも授乳できるようになるので役割分担もしやすくなりますね。
- 外出時の荷物が少なくて済む
粉ミルクではお湯を入れた魔法瓶や哺乳瓶などを用意しておかないといけないのに対し、そのまま飲ませることができる液体ミルクでは調乳のための道具が不要に。外出時の持ち物を減らすことができます。
- 災害時の備えとして活用できる
災害時に母乳を与えられるような環境が整っているとは限りません。粉ミルクと比べて水や燃料が不要の液体ミルクなら災害時の授乳に使いやすくなります。
課題点
調乳の手間が省けるという大きなメリットのある液体ミルクですが、現時点ではまだまだ課題点もあります。
まず、粉ミルクに比べると値段が高くなってしまいそうということ。現状アメリカの市場では粉ミルクの約2倍の価格となっているようです。
また、現時点でのメーカーの試算では賞味期限は6ヶ月~1年程度となり、店頭に並べる期間を考えるとさらにその期限が限られてきます。
赤ちゃんの好みの問題もあります。粉ミルクでも「メーカーを変えると飲みたがらない」などという話を聞くことがありますよね。現に筆者の子供もそうでした。液体ミルクも温度や味の好みによって赤ちゃんが飲みたがらないというケースも考えられます。
販売開始は実は2年後?
今回メディアで取り上げられているニュースは、あくまで液体ミルクの国内製造に向けての指針が認められたというもの。厚生労働省では今後食品安全委員会の評価を待って省令改正を進める方針です。
省令が改正されれば液体ミルクの国内製造が可能となりますが、品質試験の期間なども必要なため、実際に商品として販売されるまでにはまだ1~2年ほどの期間が必要になりそうだということです。
- 厚生労働省「薬事・食品衛生審議会 器具容器包装・乳肉水産食品合同部会資料」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000196979.html,2018年3月19日最終閲覧)
- 厚生労働省「薬事 ・ 食品衛生審議会食品衛生分科会 器具容器包装・乳肉水産食品合同部会 議事次第」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000197143.pdf,2018年3月19日最終閲覧)
- 東京都「乳児用液体ミルク について」(http://www.bousai.metro.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/392/10.pdf,2018年3月19日最終閲覧)
育児中ママの助けになるような液体ミルクを
家族の食事作りや掃除洗濯などの家事に加え、慣れない赤ちゃんのお世話では毎日クタクタになってしまうというママも少なくないと思います。特に新生児のころには授乳の頻度が高く、夜中に何度も起きなければならないことも。
筆者は母乳とミルクの混合育児だったのですが、夜中の授乳が本当に大変だったことを思い出します。急いでミルクを作ろうと思うのですが、慌てるからなのか眠いせいなのかミルクの量を間違えてしまうこともありました。手間取って子供を待たせてしまうとぐずってくるので、寝室で寝ている家族が起きてしまったり近所迷惑になったりしないかと気を使う日々でした。
液体ミルクが販売されるようになれば、このような手間や心配がぐんと少なくなり、ときにはつらく感じる授乳の助けになってくれそうです。また調乳が必要な粉ミルクに比べ手軽に使える液体ミルクなら授乳も簡単になり、より家族の協力を得られやすくなるかもしれません。
何より災害用に液体ミルクを備蓄しておけば、水や燃料がなくても赤ちゃんにミルクを飲ませることができます。災害時のように何が起こる予想できないときに、子供のミルクだけでも確保できるのは安心につながるのではないでしょうか。
残念ながら日本の製品が販売されるまでにはまだ時間がかかるようですが、その間によりニーズに合った商品が開発されれば、育児世代の大きな助けになるのではないかと期待します。