新型コロナワクチンは授乳中でも接種できる
新型コロナ感染予防の柱として期待されている新型コロナワクチンは授乳中でも接種できます。ワクチンはデルタ株など変異株に対しても発症や重症化予防効果は90%近くと高く、ワクチンを打つことで発症や重症化リスクを大きく下げられます。そのため、授乳を含め育児中の方にとっても接種はメリットが大きいです。
中国の広東省疾病予防管理センターの研究によると、変異株は感染してからうつるようになるまでの期間が4日(従来は6日)と早く、感染した人から放出されるウイルスの量も従来株の1200倍に達するとの報告があります。これが強い感染力の原因と考えられます。12歳未満の子どもは現時点でワクチンを接種できません。また子どもの感染の多くは家族からであることがわかっています。そのため周りの大人がかからないことが子どもを守るために必要です。
- Jamie Lopez Bernal他「Effectiveness of COVID-19 vaccines against the B.1.617.2 variant」medRxiv2021年5月24日(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.05.22.21257658v1,2021年9月1日最終閲覧)
- Sara Reardon「How the Delta variant achieves its ultrafast spread」Nature2021年7月21日(https://www.nature.com/articles/d41586-021-01986-w,2021年9月1日最終閲覧)
よくある不安Q&A
ここからは、授乳中・育児中の方のよくある不安にお答えします。
Q1. ワクチンを接種してすぐに授乳しても大丈夫?
A1.すぐに授乳可能で、母乳の成分や味への影響はありません
これまでのデータから、ワクチンを接種しても授乳中の赤ちゃんに悪い影響が出ることはないと考えられています。また、接種後に時間を空けずに授乳もできますし、接種後に母乳の味や栄養などの成分が変わることもありません。
ワクチンの成分であるmRNAは、数日以内に体内で分解されてしまい、長期間体に残ることはなく、遺伝子に影響を与えることもありません。このような理由から、何年もたってからお母さんや赤ちゃんに悪い影響を及ぼすことは考えられません。
最近の研究では、母親がワクチンを接種していると赤ちゃんに良い影響があることがわかってきました。母親の体ではワクチンを接種するとウイルスを退治してくれる抗体が作られ、母乳を通して赤ちゃんに受け渡されることがわかってきたのです。つまり赤ちゃん自身はワクチンを接種できなくても、母乳を通じて抗体を受け取り、感染しにくくなることが期待されます。ワクチン接種で赤ちゃんに悪い影響は出ず、むしろ新型コロナウイルスから守られる可能性が高くなると考えられているということです。
- 国立成育医療研究センター「妊娠・授乳中の新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種について」(https://www.ncchd.go.jp/kusuri/covid19_vaccine.html,2021年8月27日最終閲覧)
- 厚生労働省「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンはワクチンとして遺伝情報を人体に投与するということで、将来の身体への異変や将来持つ予定の子どもへの影響を懸念しています。」新型コロナワクチンQ&A(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0008.html,2021年8月27日最終閲覧)
Q2. また妊娠したいのですが、ワクチンで不妊になりますか?
A2. ワクチンによって不妊にはなりません
「ワクチンを打つと不妊になる」という話を聞いたことがある方も多いかもしれません。しかしこれまでの研究で、新型コロナワクチンで不妊になることを示す科学的根拠はまったくありません。
そもそも排卵から妊娠までの過程は脳や卵巣のホルモンが関係しますが、ワクチンの成分にはこれらのホルモンは含まれていませんし、卵巣や子宮に影響を与える化学物質も含まれていません。
またワクチン接種しても、未接種者と比べて流産や早産が増えることはないこと、おなかの赤ちゃんに悪い影響を及ぼすこともないことがわかってきました。そのような理由から、ワクチン接種で不妊になったり流産早産のリスクが高まったりすることはないと考えて大丈夫です。したがって、ワクチン接種前に妊娠しているか検査をする必要はなく、またワクチン接種後に妊娠を遅らせる(一定期間避妊する)必要もありません。
- 厚生労働省「妊娠中にワクチンを接種した場合、生まれてくる新生児に免疫はつきますか。」新型コロナワクチンQ&A(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0078.html,2021年8月27日最終閲覧)
- 厚生労働省「私は妊娠中・授乳中・妊娠を計画中ですが、ワクチンを接種することができますか。」新型コロナワクチンQ&A(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0027.html,2021年8月27日最終閲覧)
- American College of Obstetricians and Gynecologists「Practice Advisory: Vaccinating Pregnant and Lactating Patients Against COVID-19」(https://www.acog.org/clinical/clinical-guidance/practice-advisory/articles/2020/12/vaccinating-pregnant-and-lactating-patients-against-covid-19,2021年9月1日最終閲覧)
- Tom T. Shimabukuro他「Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons」The New England Journal of Medicine384巻・24号・2273,10(2021)
Q3. ワンオペ育児のため、副反応でお世話ができなくなるのが不安です
A3. 事前に副反応に備えられる対策があります
ワクチン接種後、腕の痛みや発熱などの副反応が接種した日の夜くらいから1~2日出ることがあります。通常3日以内に改善することが多いです。
あらかじめ家族と相談し、その期間にワンオペ育児にならないように準備をおすすめします。自治体によってはファミリーサポート事業による一時預かりサポートを実施しているところもあるので確認しておくとよいでしょう。
副反応が出た時には、解熱鎮痛剤を内服できます。内服してもワクチンの効果が下がるということもありません。成分としてはアセトアミノフェンが含まれるものなら、現在妊娠されている方でも安心です。授乳中の方(妊娠していない方)なら、ロキソニンやイブプロフェンの成分が入った解熱鎮痛剤も使えます。市販薬でも手に入りますので、薬局で薬剤師さんにご相談の上で購入してください。服薬以外には、腫れた部分を氷のうや冷却シートなどで冷やすことも可能です。なお接種当日から入浴も問題なくしていただいて構いません。
- 厚生労働省「ワクチンを接種することで不妊になるというのは本当ですか。」新型コロナワクチンQ&A(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0086.html,2021年9月1日最終閲覧)
- The Advisory Committee on Immunization Practices「COVID-19 vaccine safety update」(https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2021-01/06-COVID-Shimabukuro.pdf,2021年9月1日最終閲覧)
- 日本産科婦人科学会木村正,日本産婦人科医会木下勝之,日本産婦人科感染症学会山田秀人 「新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて(第 2 報)―」(http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210814_COVID19_02.pdf,2021年9月1日最終閲覧)
ワクチンを打っても感染症対策は必要
ワクチンを接種したからと言って感染対策は引き続き必要です。その理由を傘をワクチンに、雨をコロナウイルスに例えて説明します。傘を手に入れることで、外出しても雨に濡れにくくなります。でも、もし外が土砂降りだったら、いくら傘をさしていても動けばぬれてしまいますよね。それと同じで小雨になるまでは傘を持っていてもなるべく外出を控えることが大切です。そして小雨にするには私たち自身が感染対策をしっかり続けることが大切なのですね。
今、家族内での感染も増えています。ワクチンを接種できない子どもたちを守るためにも、周りのご家族がワクチン接種を含む感染対策(マスク、換気、3密を避ける、この時期の会食を避けるなど)を徹底してほしいと思います。
新型コロナウイルスのワクチンについてさらに知りたい方は、以下のページも参考にしてください。
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