1歳半の息子が、保育園で女の子の手を噛んでしまった…。よくあること、と収めようとする夫にいら立ちを隠せない母・ゆかりさん。そこへ先生から電話が…。
先生からの報告
私はゆかり。1歳半になる息子のたつきを育てる、平凡な主婦です。通わせている保育園で、たつきが女の子の手を噛んでしまったことがありました。そこから思いがけないトラブルに巻き込まれ、私たち夫婦にとっては、心苦しい経験となったのです。
私はフルタイムで働いているので、たつきを保育園に預けて働く毎日です。たつきは大人しく、保育園も嫌がらず行ってくれるので、とても助かっていました。
その日もいつものようにたつきを迎えに行くと、まず担任のさくら先生から声をかけられたのです。
その表情は少し固く、私はたつきになにかあったと直感しました。教室の手前で先生に言われたことに私は凍り付きました。
「今日、たつきくんが女の子の手を噛んでしまったんです」
たつきが女の子の手を噛んだ?私は驚き、頭の中が真っ白になってしまいました。
「年長さんの女の子で、たつきくんをだっこして、嫌がってそれで…」
「それで、その子にケガは…?」
「少し赤くなっただけなので大丈夫です。たつきくんにもケガはありません」
私を安心させるように少しほほえんでから、この年齢のお子さんにはよくあることですから…と前置きし、
「相手のお母さんにもそう伝えましたが、少し気にされていて…」
と神妙な顔つきでつぶやきました。
トラブル防止のためにこちらの名前は伝えていないという気配りに、私も頭を下げるばかりでした。たつきを抱えて保育園を出ると、大きく深呼吸をして、頭を抱えてしまいました。
たつきの「噛みぐせ」、実は私は気が付いていました。
たつきは内気で、言葉もゆっくりで、気持ちを正しく伝えられないことも多く、甘えたい時やかまってほしい時、そして怒った時。家ではパパにだけ、噛みつく癖があります。まだ赤ちゃんみたいな、たつきの甘えのしぐさ。頻度は高くなく、私としてはあまり深く考えていませんでした。
小さな歯で噛むだけなら大けがにつながるわけでもないし、被害に合っていたのは身内だけ。そのうち落ち着くだろうと考えていたのです。
それが、外で出たなんて。しかも、相手は女の子だなんて…。正直、混乱してしまいました。年長さんにだっこされて、と先生が言っていましたが、もしかして抱きかかえられたのがイヤで噛んでしまったのかもしれません。
「自分の考えが甘かった」申し訳なさと恥ずかしさでいっぱいになりました。逃げるように帰り、夕食の準備を始めましたが、心がざわめいて居ても立ってもいられませんでした。
そしてようやく帰宅した夫に、起きた事実と自分の思いを話してみました。ところが…。
正論より、寄り添いが欲しかった
「パパ、たっちゃんがね、女の子の手を噛んじゃったんだって」
「え?噛んだ?あ~またか~」
のんきな声に私はイラっとして
「よその子を噛んだのは初めてでしょ?今回はちょっと大ごとだよ」
と強く言ってしまいました。
「落ち着けよ。1歳で噛むなんて、誰だってそうだよ」
あまりにも事も無げに話す夫に私は、悔しくなりました。夫には年の離れた兄姉がおり、甥や姪の子守りをしてきたため、幼児の言動や扱いに慣れているのです。なので経験則から大丈夫だと言っているのはわかるのですが、わが子のことなのに気にしない様子にイラっとしてしまいます。
「よくあることかもしれないけど、やっぱり自分の子となると気になるよ!あなたは気にならないの?」
「落ち着けって。2人で騒いでもしょうがないだろ。先生もよくあるって言ってなかった?」
「言ってたけど、でも…」
「園側だって報告しなきゃいけないからしてるだけだろ?騒いだって何にもならないよ」
夫の言うことは正論ですが、今の私にはとても窮屈なものでした。ただ、彼の性格上、これ以上言うのはマズいので、言葉をぐっと飲み込んで食事の用意を始めたその時、私のスマホが鳴りました―――。
明日、誰に謝るんだろう…
画面を見ると、保育園の表示。急いで出ると、担任のさくら先生でした。
「すみません。先ほどの件なのですが、明日、保育園でお話合いの場を設けることになりました。相手のお母さんが来られる予定で…」
嫌な汗が背中にツーっと流れました。
「わかりました」というのがせいいっぱいで、電話を切りました。
「明日、相手のお母さんに謝ることになった…」
夫に伝えると
「マジ?1歳半の嚙みつきで?相手の親、ちょっと神経質かもな」
と少し考え込みました。夕食を食べながら、とにかく謝ってくるしかない、と決めたものの不安でいっぱいでした。
相手のお母さんって、誰なんだろう。その夜はなかなか寝付けませんでした―――。
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あとがき:よくあること、なの?
子どものトラブルは、どの親にも起こりうること。頭ではわかっていても、実際に自分の子が「加害側」になると、冷静ではいられませんよね。夫との温度差に戸惑いながら、迎える謝罪の場。不安な気持ちが伝わってくるエピソードです。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










