モラハラとDVに苦しむ主婦の楓は、娘ゆりの未来のため、幼馴染の沙織に背中を押され別居を決意。夫・直哉の出張を狙い、静かに別れを告げる準備を進めることに―――。
モラハラ夫に心を蝕まれる日々
私、楓、29歳。ごく普通の女性に見えるかもしれないけれど、実は今、人生最大の決断を前に、胃がキリキリと痛む毎日を送っています。
夫の直哉、31歳。彼は外では愛想が良くて仕事もできる「理想の夫」を演じているけれど、家の中では違いました。結婚して数年経ったころから始まったのは、些細なミスを徹底的に責め立てるモラハラと、物にあたって怯えさせるような行動です。
「お前は本当に頭が悪いよな。俺の言う通りに動けない? 誰のおかげでこの家に住めていると思ってんだよ」
毎日聞かされるその言葉は、まるで毒のように私の心を蝕んでいきました。私の存在価値を否定し、少しずつ、私自身を小さくしていく。彼にとっては、私が完全に直哉の支配下にいることが、何よりも心地よかったのでしょう。
幼馴染の救い
でも、私には娘のゆり、2歳がいます。この子の屈託のない笑顔だけが、私をこの地獄に留めていた唯一の光でした。同時に、この子の未来のために、私がこの毒から離れなければならない、という強い使命感も芽生えたんです。
そして、私の心の支えとなってくれたのが、幼馴染の沙織、29歳でした。沙織は、私が直哉のモラハラで弱り切っていることに気づいてくれていたんです。
「楓、昨日また泣いてたでしょ? 目が腫れてる。隠さなくていいよ。私も見てられない」
ある日、沙織は私をカフェに連れ出し、真剣な眼差しでそう切り出しました。
「私が直哉を怒らせるから……」と、つい彼の顔色を窺う癖で口ごもる私に、沙織は静かに諭しました。
「楓のせいじゃない。直哉さんがおかしいんだよ。ゆりちゃんのためにも、もう終わりにしようよ。まずは別居しないと楓が壊れるよ」
家を出る決意をする
沙織の力強い言葉に背中を押され、私はついに「うん」と頷きました。
「よく決意したね。なるべく早く家を探して出ていこう。私も協力するよ」
さて、別居を決意したのはいいけれど、直哉は家にいると私が怯えてしまいます。だから、直哉が仕事で遠方に出張する日を狙うことにしました。彼に会って話す気力なんて、今の私にはありません。事前に連絡したら、確実に怒鳴り散らして荷物を運び出させないでしょう。
そうして迎えた別居前夜。静まり返ったリビングで、眠っているゆりの顔をそっと撫でながら、私は心の中で直哉に別れを告げました。
「私はもう、あのモラハラ夫の所有物じゃない」
私の心の中では、すでに新しい生活が始まっていました。あとは、実行するだけです。
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あとがき:毒から離れるための最初の一歩
長い間、毒のような言葉と支配に心を蝕まれてきた楓にとって、「別居」はまさに人生をかけた決断です。モラハラやDVの被害者は、多くの場合、加害者の「お前のせいだ」という言葉を内面化し、自分自身を責めてしまいます。
楓が直哉に怯えながらも、娘の笑顔という「光」と、幼馴染の沙織という「味方」を得て、静かに「もうあなたの所有物じゃない」と決意する場面は、勇気ある最初の一歩です。この静かな決意が、今後の戦いの礎となります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










