1.「いつか、きっといつか、一緒に暮らせる…」
「ロールとローラ うきぐも城のひみつ」の中でメロンパンナちゃんに向けた言葉で、アンパンマンファンの間では有名なセリフでもあります。
いつもはパン工場ではなく、くらやみ谷などに1人でいるロールパンナちゃん。でも本当は大切な妹と一緒に暮らしたいんですよね。自分の運命のせいで大好きな妹と一緒にいられない...でも希望は捨てたくない。そんなロールパンナちゃんの本音を知ることができる一言でした。
ばいきん草のエキスの力で、よい心だけではいられなくなってしまったロールパンナちゃんの心は、いつもひび割れたガラスのように傷ついています。そして大好きなお姉ちゃんと一緒に暮らせないメロンパンナちゃんも、寂しい気持ちでいます。
ばいきんまんのイタズラの中で、ロールパンナちゃんにしたこのイタズラが、一番悪いことなのかもしれません。
2.「人はみんな役目をもって生まれてきている。」
今でもレンタルで人気の高いアンパンマンの映画「それいけ!アンパンマン 夢猫の国のニャニィ」でロールパンナちゃんがメロンパンナちゃんにかけた言葉です。
大切に育ててきたニャニィを、夢猫の国に帰すことが嫌になってしまったメロンパンナちゃんに、ロールパンナちゃんはこう続けました。
「一緒にいなくても心は一緒にいられる。私もメロンパンナと離れていても、ここ(胸)にいるからさみしくない。この世に生まれてくる者は皆、何か役目を持っている。私はまだ自分の役目が分からない…でもニャニィにはきっと夢猫の国に大切な役目があるんだ。その役目を果たすことがニャニィの幸せだ」
自分が何のために生まれてきたのかという問いに、まだ自分自身が答えられないロールパンナちゃん。しかし、今目の前にいるニャニィには大切な役割があることを、メロンパンナちゃんに話しています。
そして「一緒にいなくても心は一緒」という言葉は、メロンパンナちゃんだけに向けた言葉ではなく、ロールパンナちゃん自身に自分で投げかけた言葉のようにも聞こえますね。
3.「アンパンマンはそうなんだ。だけど、私にはできない。」
劇場版「アンパンマンといのちの星のドーリィ」で、ロールパンナちゃんがアンパンマンの正義の姿勢を認めながらも「私はアンパンマンのようにはなれない」と語るシーンです。
「何のために生きるのか」ということがテーマのこの物語で、「誰かのために愛と勇気を与え続けること」を生きる意味としているアンパンマンに対し、自らの運命から正義と悪が同居してしまっているロールパンナちゃん。自分の命の意味を深く考えている様子が分かります。
正義と悪の心を持っていることは、実は珍しいことではなく、人間界では普通の事ですよね。みんなが善と悪を持っている。しかし、その現実に対して深く悩み、考えているロールパンナちゃんの姿には、大人がハッとさせられます。
4.「あなたが壊すというのなら、戦うというのなら、私も戦います。 私は…守るために戦う!」
アンパンマンシリーズで1番の名言だと語る方もいるこの名言が生まれたのは「ふたりのロールパンナ」というお話。
ばいきんまんが、ブラックロールパンナがアンパンマンを倒せないのはまだ善の心が残っているからだと思い、ドクター・ヒヤリと結託してロールパンナちゃんから悪の心のみを引き出します。そうしたことで、よい心だけを持ったロールパンナちゃんと、悪の心だけを持ったブラックロールパンナが別れ、2人のロールパンナちゃんが生まれたのです。
ブラックロールパンナは街に行き、カレーパンマンもしょくぱんまんも、そしてアンパンマンをも倒してしまいます。そこへ、よい心を持ったロールパンナちゃんが現れ、「2人のロールパンナ」の戦いが始まるのです。
「私は、あなた。もうひとりの、あなた。」
「弱そうなお前がもうひとりの私だと!?笑わせるな!」
「あなたが壊すというのなら、戦うというのなら、私も闘います。私は守るために闘う!」
こうして2人は闘うのですが、最後はドクターヒヤリの薬の効果が切れ、もとの1人の姿に戻ります。
この「2人のロールパンナ」の中には、ロールパンナちゃんとメロンパンナちゃんが思い描く、「一緒に暮らす未来」を描写するシーンが含まれているなど、この2人の姉妹愛が大好きなファンとしてはたまらない話です。
5.「メロンパンナの声を聞くと、わたしの赤いハートが輝いて、悪い心のときでも、良い心になることができるの」
メロンパンナちゃんへの愛情が感じられるこの名言。大好きな妹の声はどんなものよりもロールパンナちゃんの暴走を止める力があります。この設定にはきっと、やなせ先生の「戦いをやめるために必要なのは武器ではなく、愛と勇気」という思いが込められているのではないでしょうか。
対立する赤いハートと青いハートが胸に刻まれているロールパンナちゃん。背負った運命は重すぎるものですが、メロンパンナちゃんの笑顔はロールパンナちゃんにとっての唯一の生きる希望なのかもしれません。
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運命を背負いながら生きるロールパンナちゃん...「生きる意味」を考えるきっかけに
アンパンマンのオープニングソングにある「何のために生まれて 何をして生きるのか」という言葉を象徴するかのようなロールパンナちゃんの存在。
子供向け番組とは思えないほど重い運命を背負ったロールパンナちゃんですが、その中でも大好きな妹への愛のために戦う姿や、みんなを傷つけてしまうことを悩み続ける姿は、私たちに大切なことを教えてくれます。
ロールパンナちゃんの持つ「よい心」「悪い心」はみんなが持っているもの。そうした自分の中の心と向き合い、よく生きようとすることは、親として子供に教えていきたいことではないでしょうか。そして親自身も、「よい母でいたい」「うまくいかない」二つの面を感じていたりもします。
そんな「人間らしさ」を感じるロールパンナちゃんには、いつか必ずメロンパンナちゃんと一緒に暮らし、幸せな毎日を送ってほしいと、密かに幸せな未来を願う筆者なのでした。










