©ママリ
👉【1話から読む】新1年生になった娘は登校拒否児なりかけだった
周りの優しさに希望をもらいつつも、ユイの一進一退の日々は続き、季節は夏へ。迎えた夏休み明け、メンタルケアの先生とたくさん話す機会を持ったユイの中で、何かが確かに変わっていった。そして、奇跡は静かに訪れる。いつもの朝、娘が私の顔をまっすぐ見て言ったのだった。
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夏の終わり、再燃する不安
クラスの温かいサポート後もユイの登校しぶりは続き、季節は夏へ。
長い夏休みは親子にとって大きな休息となり、ユイの表情にも笑顔が増えた。
だが楽しい時間はあっという間に過ぎ、セミの声がツクツクボウシに変わる頃、私の心には再び重たい不安が影を落とす。
(またあの日々が始まるのか…)
夏休み明け初日、メンタルケアの先生は変わらない笑顔で
「ユイさんと二人だけで、ゆっくりお話しする時間をもらえませんか?」
と提案してくれた。
その日、先生は相談室でユイとじっくり向き合い、ただひたすらユイの気持ちに寄り添ってくれたらしい。
それを境に、ユイの中で先生への警戒心が解け、私のことをわかってくれる優しい人へと変わっていったようだった。先生への信頼感が、ユイの心に育ち始めていた。
「今日、一人で行ってみる」衝撃的すぎる一言
夏休み明けから数日経った、何の変哲もない朝。私が「ユイ、そろそろ学校の準備…」と言いかけた時だった。
リビングで絵本を読んでいたユイが、ぱたんと本を閉じ、私の顔をまっすぐに見上げた。そして、信じられない言葉を口にしたのだ。
「……ママ。あのね、今日、一人で行ってみる」
……えっ?一瞬、時が止まった。今、なんて言った?幻聴?混乱する私をよそに、ユイはもう一度、今度は少しはっきりとした声で繰り返した。
「一人で、学校、行ってみるから」
私の目を見つめるユイの瞳は、少し不安そうに揺れていたけれど、その奥には確かな決意の光が宿っていた。
嘘じゃない。聞き間違いなんかじゃない。
「……う、うん……!わかった……!」
私は、込み上げてくる熱いものを必死でこらえながら、震える声でそう答えるのが精一杯だった。
半年の戦い、そしてはじまりの朝
ユイはこくりと頷き、いつもより少しシャキッとランドセルを背負い、ためらうことなく玄関のドアに手をかける。
「行ってきます!」
まだ少し小さな声だったけれど、紛れもなくユイ自身の意志で発せられた、初めての「行ってきます!」だった。
ガチャリとドアが開き、ユイは一歩、外へ踏み出した。
振り返って不安そうに私を一度見たが、すぐに前を向き直し、歩き始めた。一人で。私の手を借りずに。
その小さな後ろ姿が、朝日に照らされてとても大きく見えた。
涙で視界が滲む。泣き叫び私の足にしがみついていた半年前のユイが鮮やかに蘇る。
長かった。本当に長かった……。
でも、終わったんだ。
私たちの、涙とため息とほんの少しの希望で綴られた、半年間の「行ってきます!」までの戦争が。
ユイは自分の力で大きな壁を乗り越えた。
そして私も、母親として少し成長できたのかもしれない。周りを頼ること、信じて待つことの意味を学んだ。頬を伝う涙は、安堵と喜びとユイへの誇らしさでいっぱいだった。
周りに助けられながら成長していく母娘
物語は、一進一退を繰り返すもどかしい日々を経て、ついにユイが自分の意志で「一人で行ってみる」と決意するクライマックスを迎えます。
涙で見送る母親の姿には、約半年間にわたる奮闘と、母娘それぞれが見せた確かな成長が刻まれていました。
子どもの登校しぶりに直面した親のリアルな葛藤、周囲を頼ることの大切さ、そして子どもの力を信じて待つことの意味を深く問いかける、涙と希望の物語でした。