©ママリ
最近、そのおだやかな日常に、少しずつ波紋が広がり始めている…。りゅうとのクラスメートの「けんや」くん…。彼が、毎日のようにうちに来るようになってからだ。
「ピンポーン」
まただ。時計を見ると、午後3時半過ぎ。今日は習いごとに行っているので、りゅうとが帰ってくるのは4時過ぎなのに…。
「はい…」
インターホン越しに声をかけると、画面には小さな男の子の顔が映っていた。くりくりした目と、ちょっと生意気そうな口元。息子のクラスメート、「けんや」くんだ。
「りゅうとくん、いる?」
彼の大きい声は、まるで自分の家に来たかのように堂々としている。
「ごめんね、けんやくん。りゅうとは今日は習いごとだよ」
私はできるだけ優しく、でも曖昧な返事にならないように気をつけて答える。だって、彼がうちに来る目的は、りゅうとと遊びたいから…というより、もっと別のところにあるように感じていたから。
「えー、まだ帰ってないの?」
少し不満そうな声が聞こえる。彼の顔には「早く開けてよ」とかいてあるみたいだ。 ※1
毎日来る、息子のクラスメイト
息子の友だち・けんやくんが、毎日のようにインターホンを鳴らします…。りゅうとくんがいない日でも、お構いなし。まだ小学1年生とはいえ、図々しい雰囲気がただよっており、警戒心が高まります。
この日は、りゅうとくんがいないとわかると、渋々と帰って行ったけんやくん。ところが、また別の日…。
毎日遊びに来るワケが判明
「りゅうと、いなくてもいいので家に入れる?」
彼の言葉に、私の頭は一瞬、真っ白になった。りゅうとがいなくても、うちに入りたい?その目的は一体、何なの?
「え、それは…」
言葉に詰まる私に、けんやくんはさらに畳みかけるように言った。
「ゲームしたいんだけど、りゅうとのゲーム貸してくれない?」
ああ、やっぱり…。私の胸の奥で、何かがストンと落ちる音がした。彼の目的は、りゅうとと遊ぶことなんかじゃなかったんだ。ただ、うちのゲームがしたいだけ…。そう確信した。 ※2
今度は、りゅうとくんがいなくても、家に入りたいと言い出しました。そして、その目的は「ゲーム機」だったのです。どうやら、けんやくんはりゅうとくんと遊びたいというより、ゲームをするために、毎日来ていたようです。
穏やかな生活に暗い影が…
「ごめんね、けんやくん。りゅうとがいないのに、家には入れられないよ。ゲームもりゅうとのものだから、勝手に貸すことはできないの」
私は、きっぱりと…でも、できるだけおだやかに断った。彼の顔に、明らかに不満の色が浮かぶのが見えた。口を尖らせ、眉間にしわを寄せている。まるで、私がとんでもない意地悪をしたかのような顔だ。
「ちぇーっ」
彼は舌打ちでもしそうな勢いで、そう言って、インターホンから顔を遠ざけた。そして、あきらめたのか、ゆっくりと玄関から離れていく。その背中を見送りながら、私はため息をついた。
毎日、毎日、約束もなしにやってきて、りゅうとがいないのに「家に入れろ」とせがむ。そして、その目的は、はっきりと「ゲーム」だと告げた。
「一体、どういうつもりなの」
私はインターホンを切った後も、しばらくその場に立ち尽くしていた。この状況を、どうにかしなければならない。でも、一体どうすればいいのか…私にはまだ、その答えが見つからずにいた。りゅうとの友達だから強くも言えない。でも、このままでは、私の心が休まるヒマがない。
この小さな訪問者が、私の日常を、少しずつ、でも確実に蝕んでいくような気がしてならなかった。 ※3
毎日毎日、約束もしてないのに、インターホンを鳴らす息子の友だち…。息子の友だちだと思うと、あまり強くは言えません。とはいえ、こんな日々が続くのは、正直ストレスですね…。
このあと、りゅうとくんの行動はさらにエスカレート。ずかずかと家に入ってきて、勝手にゲーム機を独占。あまりにも身勝手な行動が続き、さつきは夫に相談。夫婦で、けんやくんの家へ訪れ直談判をします。すると、これが功を奏したのか、けんやくんはピタリと来なくなりました。
もしも、わが子の友だちが毎日来たら、あなたならどうしますか?まずは、親同士でコミュニケーションを取ることが必要ですね。それが難しい場合は、学校や専門機関に相談する方法もあります。非常識な家庭との関わり方について、参考となる作品です。










