久しぶりに会った友人・由香は、見た目も生活も激変していました。既婚者と二人きりで遊んでいるという話に、千夏にはわずかな胸騒ぎを感じます。
友人の変化
私は千夏。商社の事務の仕事を程々にこなしつつ、平凡で穏やかな毎日を過ごしています。中学時代からの友人・由香は、そんな私とは違い、几帳面で真面目な子でした。社会人になってからも、時々連絡を取り合い、近況を話す関係が続いていました。
そんな由香の様子が変わり始めたのは、一年前の秋でした。
由香「最近ね、行きつけの店ができたの」
私「由香が飲み屋なんて珍しいね」
由香「うん。仕事帰りにふらっと寄れる小さな店なんだけど、すごく居心地がいいの。ママが気さくで、常連さんも優しくてさ」
電話の向こうの声は、今までにないくらい弾んでいました。私は忙しい毎日に癒しの場所ができたのだと安心していました。ところが、久しぶりに会った由香の髪は明るい茶色に染められ、服装も以前よりずっと華やかになっていました。
由香「あの店のママがね、『もっと自分を楽しみなさい』って言ってくれたの。それで、ちょっと挑戦してみたんだ。変かな?」
照れ笑いを浮かべる由香はどこか誇らしげで、私も笑って「変じゃないよ」と答えました。ですが、その行きつけの店の話を聞くたびに、胸の奥がざわつきました。
既婚者と...?
由香「常連の人たちが、仕事の愚痴とか人生相談とかなんでも聞いてくれて。特に佐々木さんって人がいてね、すごく話しやすいの」
私「へえ、優しい人なんだね」
由香「最初はお客さん同士だったんだけど、この前、二人で映画観に行ったの」
最初は純粋に良い相手ができたのだと思っていましたが、話を聞いていくうちに、その佐々木さんという人は既婚者だということが分かりました。
私「それ、大丈夫なの?」
由香「奥さんとはうまくいってないって言ってるし...」
その言葉に思わず眉をひそめましたが、由香は気づかないふりをして、グラスの氷を鳴らすように軽い口調で続けました。
由香「なんかね、店に行くと自分が誰かに必要とされてる気がするの。仕事もマンネリだし、話を聞いてもらうだけで癒されるんだよ」
私は笑ってうなずきながらも、どこか不安でした。誰かに必要とされたい、という気持ちは理解できます。でもその相手を間違えたとき、人は簡単に道を踏み外してしまうことを知っていたからでした。
私「あんまり深入りしないほうがいいかもよ。飲み屋の付き合いって、境界が曖昧だから」
由香「大丈夫だよ。私、ちゃんとわきまえてるから」
その“わきまえてる”という言葉の裏に、どこか自信のような、危うい期待のようなものが混じっているように感じました。その夜、帰り道の風が冷たくて、私はなぜか小さな胸騒ぎを覚えました。
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あとがき:隠せない戸惑い
真面目で優しかった友人が、少しずつ夜の世界へと染まっていく——。止めたい気持ちと、見守るしかない現実は歯がゆいものですよね。突然突きつけられた変化に、千夏はこれからどう向き合っていくのでしょうか。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










