Ⓒママリ
🔴【第1話から読む】「あれ、ない……?」私の“タンス貯金”が消えた日
密かに続けていたタンス貯金が、ある日を境に2万円減っていた。家族にも知らせていなかったはずが、なぜ……?
娘・美羽のメイク熱と、増える買い物。母の中で、疑念が静かに広がっていく━━。
「ママ、メイクしてもいい?」━━その質問がすべての始まりだった
ごはんを炊く匂いが、キッチンの隅にたまっている。
いつも通りの平日の夕飯時。夫の帰宅を待ちつつ、美羽はリビングで宿題をしていた。
「ママ、うちってメイクしていいの?」
味噌汁の火を止めようとした時、ふいに投げかけられた言葉。少しだけ手が止まった。
「メイクなんてまだ早い」そう思ったけれど、テレビや動画に触れているうちに、娘なりに何かを感じ始めたのかもしれない。「おめかししたい年頃かな」なんて苦笑しつつ、誤魔化したのを覚えている。
━━それからしばらく経った、ある日の夜。高い棚にある、密かにしている貯金の入ったせんべい缶に手を伸ばした。貯金しようと蓋を開けた時、違和感を覚えた。おかしい、もっとあったはずなのに━━。
メイクに夢中な娘。一方、出費に覚える違和感
私、沢田澄香は夫・圭吾と小学三年生の娘・美羽と、慎ましく、にぎやかに暮らしている。ある日の夕飯時、リビングで宿題をしていた娘から、キッチンの私に声をかけられた。
「ママ、うちってメイクしていいの?」
私は内心「メイク?」と難色を示した。だけど、おめかししたい気持ちも理解はできた。ただ、今のままでも十分に娘は可愛らしい。
「ん〜まだやらない方がいいよ。早いうちにメイクしちゃうと、お肌ボロボロになっちゃうよ?」
やんわりとあしらう。しかし、娘は不機嫌そうに眉をしかめては肩を落とした。
「え〜。でも、私の友達みんなメイクし始めてるんだよ?遊ぶ時とか、私一人だけ恥ずかしいんだけど」
「そうなの?でも美羽、そのままでも可愛いんだから。大人になったら嫌でもメイクするんだから、若いうちはそのままの方が……」
「そういうことじゃないの!それに大人になってメイクするなら、今のうちに練習した方がいいじゃん!」
痛いところを突かれた。それに娘も、このことについては引く気がないらしい。
「……それもそうね。でも!お小遣いから買いなさいよ」
そう言うと、娘の曇りきった表情は一転して歓喜の声を上げた。娘の頑固さとミーハーさに苦笑しつつも、成長を感じる出来事でもあり微笑ましかった。
その日以降、娘は目に見えてメイクにハマっていった。
休日はメイク解説動画と鏡に長時間向き合う姿が増えた。いわゆるプチプラのコスメから始まり、生活用品の買い足しにドラッグストアに寄ると、化粧品をねだられた。最初は私の使っているものをシェアする形で収まっていたが、「肌に合わない」と自分専用のものをねだるようになった。なんだかんだ言いつつも、娘には不自由な思いをさせたくなくて、仕方なしに買い与えていた。
そうして、娘がメイクにハマってしばらく経った。自分に合った系統を見つけたようだけど、熱量は変わらずにメイク関連の動画を見漁っては新しいコスメを買っているようだ。それに友達と外で遊んでくると、毎回のようにお菓子やジュースを持って帰ってくる。「そんなお小遣いあげてたかな?」と思いつつ、お年玉を切り崩しているのかな、くらいに思っていた。
消えた2万円。疑念は“あの子”へと向かっていく
その夜。月末でもあったため、節約した分の生活費をタンス貯金しようと棚の上のせんべい缶を下ろした。最近多い災害のニュースを見て、いざという時に使えるように、半年ほど前から家族にも内緒で始めた。その月によって貯金額はマチマチだけど、それなりに貯まってきていたように記憶している。
「どれくらい貯まったかな」少しワクワクして缶を開け、今月分と合わせて額を数えてみる。だけど、おかしい。明らかに額が減っている。
たしかに貯金額は曖昧だけど、数百円とか数千円単位のズレじゃなくて、前月の記憶からおよそ2万円減っていた。急な集金で持ち合わせがない時、この貯金から使うこともあったため、その可能性を探るべく記憶を遡るも、今月その手の出金はなかった。
「どうして?家族にも教えてないのに……」
空き巣の可能性も考えたけど、押し入られた形跡もないし、少額だけなんておかしい。
その時、ふとある可能性が過った。一番考えたくなかったけど、変に理屈が合ってしまうものだった。お小遣いの額に見合わず、増えていく化粧品や毎日のように買ってくるお菓子やジュース━━。
「もしかして、美羽……?」
覚えてしまった違和感が、拭いきれない疑念に変わった夜だった。
🔴【続きを読む】まさか…娘が盗った?母が気づいた“違和感の正体”|娘がお金を盗んだ話
あとがき:娘の「変化」に気づいたとき
「メイクしたい」という無邪気な願いが、やがて小さな違和感に変わっていく━━。今回描いたのは、そんな“始まりの気配”です。娘の興味・親の不安・家庭のお金。当たり前にある日常の中に、ふとした綻びが生まれる瞬間を見つめました。澄香さんが気づいた違和感は、親として見過ごせない一歩目だったのかもしれません。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。










