Ⓒママリ
🔴【第1話から読む】「あれ、ない……?」私の“タンス貯金”が消えた日
娘のメイクや金銭感覚に違和感を覚え始めた母。ある日、タンス貯金からお金が消えたことに気づき、娘への疑念を募らせていく━━。
娘を疑う自分が、情けなかった
タンス貯金からお金が減っていた━━。
抱いてしまった娘への疑念のせいで、よく眠れなかった。ただ今朝になって冷静に考える。昨晩は最近覚えていた娘への違和感から、娘が貯金からお金を取ったように疑ってしまったけど、確固たる証拠はない。それに何より、今、目の前で朝食を食べる我が子の姿は普段と何ら変わりない。たった一晩で、娘の目をまっすぐ見られない母親になってしまった自分が、情けなくて仕方なかった。
「お母さん。今日の放課後、友達ん家で遊んでくるね」
「……え、あ、うん。失礼ないようにね」
お金のことが喉元まで上がってきたけど、声に出すまでには至らなかった。普段通りの他愛ない会話。娘から動揺や隠し事の色は感じない。今回の件、きっと私の勘違い、物忘れなだけ。きっとそのはず……。
その日の深夜。娘が寝て、リビングには夫と私の二人だけ。昨晩、先に寝てしまっていた夫に私はそれとなく尋ねた。
「あのさ……棚の上のせんべい缶、最近開けたりした?」
「せんべい缶?いいや、触ってもないよ。なにか入ってるの?」
「あ、いや、レシートとか家計簿つけるための書類とかまとめて入れてるの。なんか昨日入れたはずのレシートが見当たらなくって……」
私は咄嗟に誤魔化した。「貯めてたお金が無くなってた。しかも2万円くらい」なんて言ったら、問題が大きくなる気がした。
もし仮に、娘への疑念が事実だったら、夫も娘も動揺し、傷つくことは避けられない。とりあえず今は、穏便に解決できる方法を探りたかった。それに今の夫の反応を見るに、夫がお金を抜き取ったようには感じなかった。「夫だったらまだよかったのに……」未だはっきりしない問題。娘への疑念が拭えない現状が、ただただ苦しかった━━。
ママ友の一言に、救われた
次の日の夕方。仕事帰りに食材を買い足すためスーパーに立ち寄った。ここ最近お金が消えたこと、そして娘への疑い常に頭の片隅にあって、いつも以上の疲れを感じる。溜め息まじりに食材を探していると右斜め前から声を掛けられた。
「沢田さ〜ん、こんばんは」
食材に落としていた目を上げると、そこにはママ友の西野さんが優しい笑顔で手を振っていた。西野さんは2児のママさんで、下の娘さんが美羽と同じクラスだ。お兄ちゃんが小学5年生ということもあって、西野さんには育児について相談することもしばしばだった。
「そういえば、昨日はうちの娘と遊んでくれてありがとね〜」
そうだった。美羽は昨日、西野さん家に遊びに行ってたんだ。
「いえいえ!こちらこそありがとうございました」
「なんかお菓子とかジュースも、たくさん用意してくれたみたいで。今度うちの娘にも持って行かせるから、また遊んであげてね!」
「え……」
思わず声が出て、きょとんとしてしまった。確かにお気持ち程度のお小遣いはあげたけど、お菓子やジュースをたくさん買えるほどの額ではなかった。また不安が募る。
「西野さん、もしかして、いただいてたのまずかった?」
「い、いえ!そうじゃなくって……」
やけに動揺する私を見て何かを察したのか、西野さんは一言声をかけた。
「沢田さん。よかったら一緒に買い物回らない?お話しようよ」
私はその一言と西野さんの優しい表情に縋るように、ゆっくり首を縦に振った。そして買い物を一緒に回る中で、私しか知らないタンス貯金から2万ほどお金が消えていたこと、娘の最近の羽ぶりの良さから疑ってしまっていることなどを正直に話した。デリケートな話で西野さんがどう反応するか、不安だったけど、ただ静かに相槌を打って話を聴いてくれた。誰にも相談できなかったからこそ、やっと話すことができて、それだけで気が楽になった。
問い詰めるより、向き合う準備を
買い物と話を終えた別れ際。西野さんは考えをまとめるように一点を見つめ、しばらく沈黙する。西野さんの次の一言に期待と不安が込み上げる。自然と、肩に掛けたトートバックの紐を握りしめていた。体感30秒の沈黙を経て、西野さんは真剣な眼差しを私に向けて口を開いた。
「沢田さん。まずは証拠集めと外堀を埋めていこう。疑いだけで美羽ちゃんを問い詰めるのは、違うじゃない?」
「タンス貯金の管理を家計簿みたく徹底したり、疑わしいところがあればきっちり調べよう!」
西野さんはそう伝え切ると、またいつもの優しい笑顔に表情が解れた。安心すると共に、次に何をすべきか、指針がはっきりとした。今抱えているこの疑念を晴らすべく、私は静かにこの問題に向き合う決意を固めた。
🔴【続きを読む】娘の財布の中を見た母→信じたくない“疑惑”は、確信に近づいてしまう|娘がお金を盗んだ話
あとがき:疑いと向き合う、母の決意
疑念を抱きながらも、確証のないまま娘を問い詰めることはできなかった母。悩みを打ち明けたママ友の言葉に救われ、自分の中で問題と向き合う覚悟を固めていきます。
第2話では、「大切な相手を信じたい気持ち」と「それでも目を逸らせない不安」の間で揺れる母の心情を描いています。葛藤の中でも“冷静な行動”を選んだ母の決意が、物語を大きく動かすきっかけとなります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。










