Ⓒママリ
🔴【第1話から読む】「あれ、ない……?」私の“タンス貯金”が消えた日
貯金の減少に気づいた母は、娘への疑念に悩みながらも確証を持てずにいた。そんな中、ママ友に相談し、「証拠を集める」という静かな決意を胸に、事実と向き合い始める。
「証拠はないけど、疑いは消えない」母の静かな葛藤
西野さんからのアドバイスを受けて、翌日から私は証拠集めを始めた。今までしてこなかったタンス貯金の総額を把握して、こまめにチェックするクセをつけた。それと並行して、娘の動向も注意深く見るようになった。ゴミ箱に見覚えのないお菓子やジュースのラベルを見つけるたび、心の奥で疑いが膨らんでしまう。まだ決めつけたくないのに、胸の奥がずっとざわついていた。
外堀を埋めるよう行動し始めて1週間が経った。しかし、大きな変化はなく、またタンス貯金の額も最初の2万が消えてから減っていない。追求できるほどの確たる証拠も見つからず、早くも手詰まり状態となった。娘は相変わらず週に2、3日は友人と遊んでいるようで、その度お菓子やジュースのゴミを見かけるけど、今のままでは「お小遣いの範囲内」としか断定できない。
だけど、それでいいとも思う。あくまで娘の最近の行動への違和感から私が勝手に娘を疑ってしまっているだけであって、本来そんな疑いなんてかけたくない。貯金が消えたことは別の問題として残り続けるものの、このまま何事もなく、ただ娘が貯金に手を出したかもしれない疑念が晴れればいいと思った━━。
疑いを確信に変えた、“財布”の中身
そんなある日の朝。珍しく身支度や家事を早めに終え、時間に少しゆとりができた。夫と娘が先に家を出て、静かな自宅に私ひとり。今がチャンスだと思った。私は娘の部屋に入り、財布を探す。
勉強机どなりの棚には、今まで買い集めた化粧品が、収納ボックスに入り切らずに積まれてあった。まだ封が切られていないリップ、同じような色味のアイシャドウがいくつも並ぶ。どれも中途半端に使われていて、目的より衝動で買われたことが透けて見えた。メイクに熱心なことは知っていたけど、積み上げられた使い切られていない大量の化粧品を前に、娘への心配と不安が心を曇らせていくのを感じた。
財布はすぐに見つかった。よく使っているお気に入りのショルダーバックの中に入っていた。財布を手に取る。明らかな重さと小銭が鳴るのを感じる。この状態ですら、もはや疑惑は確信に変わったようなもので、財布を開けることが躊躇われた。娘を信じようとしたこの心は、財布を開けた瞬間に、音を立てて崩れてしまう気がした。
財布のチャックを指先でつまみ、深呼吸する。ここで止めるなら、まだ信じられる気がした。でも、開けた瞬間に戻れなくなる。わかっているのに、手が止まらない。気の乗らない中、ひと息に財布を開ける。すると、与えたはずのない5千円札と千円札数枚、パンパンに膨れた小銭入れが見て取れた。
カードケースにはレシートが入っていて、目を通す。ドラッグストアでの化粧品やお菓子、ジュースの明細が記載されていて、ある時は1回の買い物で総額4千円ほどになっていた。確認できたレシートの総額は、もちろん月のお小遣いに度々ねだられる臨時のお小遣いを足しても及ばない金額だ。
「やっぱり、あの子が……」疑念が確信へと変わる。不意にできた朝のゆとりは、最悪の気分で塗りつぶされた。
信じたかった━━娘の「嘘」に揺れる心
その日の夕方。夕飯の準備をしつつ、娘にどうやって話すか考えていた。証拠はある程度集まってきたけど、それを使って問い詰めたり、責め立てるような方法は取りたくない。娘にも娘なりの事情があって起こしたことで、普段と変わらぬ素振りの裏で、罪悪感を感じていると信じたい。
娘の良心に祈るように期待しつつ、どう話し合おうか思考を巡らせていると、いつの間にか娘がそばに近づいてきていた。
「お母さん、どうしたの?怖い顔して」
「……ん?なんでもないよ」
これまでのこともあり、娘に向ける表情が引きつるのを感じる。娘は冷蔵庫の麦茶をコップに注ぎ終えると、私に向き直って言った。
「そういえばさ、今週末また友達と遊びに行くからお小遣いちょうだい」
衝撃的な問いかけに、思わず炒め物を炒める箸が止まる。ありえない。抜き取ったお金とはいえ、財布にはまだ大金が残っていたのに――。
「……お小遣いは残ってないの?」
一縷の望みをかけて娘に尋ねる。「嘘に嘘を重ねないで」ただそう、強く祈るばかりだった。
「……うん。この前、新しい鉛筆とノート買ったら無くなっちゃって」
信頼していた娘からの嘘。深い哀しみを引きつる顔で誤魔化した。
このまま黙って見ているべきなのか、それとも、何かを伝えるべきなのか。わからないまま、私はキッチンに立ち尽くしていた。
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あとがき:信じたい気持ちが、静かに崩れるとき
誰よりも信じたい。けれど、目の前に現れた現実は、その気持ちを静かに崩していく。
第3話では、母がついに“確証”を掴み、娘とどう向き合うか葛藤する様子が描かれました。追い詰めることも、黙って見守ることも正解ではない中で、母の優しさと迷いが胸に残ります。
次回、母はどんな選択をするのか━━。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。










