33歳の千鶴は、夫と3歳の息子とマンション暮らし。階下の老夫婦は息子の足音を「元気な証拠」と笑ってくれていたが、ネットの騒音トラブル記事を見て不安が募る。ある日、階下の奥様の冷ややかな態度に胸騒ぎを覚え……。
お気に入りの家で暮らす幸せな日々
「俊也!廊下は走らないで、忍者の足だからね」
「にんじゃー!しゅしゅしゅー!」
私の声も虚しく、3歳の息子・俊也は楽しそうに廊下を駆け抜けます。
私は千鶴、33歳。夫の篤郎と、このやんちゃ盛りの俊也(3歳)と3人で、分譲マンションの6階に住んでいます。中古で購入したこの部屋は、日当たりも良くてお気に入りです。
下の階の住人が気がかり
でも最近、私の心には常に小さなトゲが刺さっています。下の階に住んでいるのは、80代の優しそうなご夫婦。入居時も、俊也が生まれた時も、私は菓子折りを持ってごあいさつに伺いました。
「子どもがおりまして、うるさい思いをさせてしまったら申し訳ありません。最大限気を付けますが、気になったらいつでも仰ってください」
そう頭を下げる私に、ご主人は柔和な笑顔で返してくれました。
「いいんですよ。子どもは元気なのが一番。私たちも孫を見ているみたいで楽しいから」
その言葉に、どれほど救われたでしょうか。でも、ネットの掲示板を見ると不安になります。気を使って直接言えなくても、上の階の足音には迷惑しているという声がたくさん投稿されていました。
嫌な思いをさせてご近所トラブルになるのは絶対に避けたいからこそ、注意して過ごさなくてはと思っていました。
下の階の住人の空気が変わった…?
「下の階のおじいちゃんとおばあちゃん、優しく見守ってくれるけど、本当はうるさいと思ってたりしないかな」
夕食後、私は夫に相談しました。
「考えすぎだよ、千鶴。俺たちもジョイントマットを敷いて、できる限りの対策はしてるんだし。向こうも分かってくれてるよ」
篤郎はそう言って笑いますが、私には気になっていることがありました。最近、エントランスで奥様とお会いした時の「空気」が変わったことを。以前は「あら俊也くん、大きくなったわね」と足を止めてくれたのに、先日は「……どうも」と短く会釈をされただけ。さっと目を逸らされてしまったようにも思います。
そのとき、胸の奥がザワザワしました。もしかして、私たちは嫌われている?でも、特別嫌われるようなことはしていないし…。私はなるべく深く考えないようにして、奥様の前を通り過ぎました。
これが、長く続く「騒音の悩み」の始まりだとも知らずに―――。
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あとがき:「善意」という名の薄氷の上で
子育て中のママにとって、ご近所からの「いいのよ」という言葉ほど救われるものはありません。けれど、その優しさに甘え切ることもできないのが、集合住宅の切ないリアル。千鶴が感じた「トゲ」のような違和感は、決して考えすぎではなく、母親としての鋭い防衛本能だったのかもしれません。
見えない相手の本音に怯え始める千鶴の心細さに、思わず共感して胸が締め付けられる導入です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










