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麻衣の投稿は、瞬く間に私たちの共通の知人たちの間でも話題になりました。 しかし、彼女の期待に反して、事態は思わぬ方向へ動き出します。
しばらくして、大学時代のグループチャットが動きました。 発言したのは、いつも冷静な友人・理恵でした。
「麻衣、このメッセージ見てる?あの投稿って沙織のことでしょ?正直、麻衣が悪いと思うよ。学生のころから、麻衣は親切にしてくれた人の善意を当たり前だと思いすぎだと思うよ」
そこから、堰を切ったように他の友人たちも声を上げ始めました。
友人A:去年貸したお菓子の型、返してくれてないよね?あれもあげたつもりじゃないんだけど…。
友人B:沙織のご主人が怒るのも当然だよ。大切な育児用品なんだから。ちょっと非常識だと思う。投稿は消しなよ。
SNSのコメント欄にも、だんだんと麻衣の行動を咎めるものが多くなっていきました。 ※1
本性がバレ、追い詰められた友人
麻衣は、学生時代から「借りたものを返さない人」で有名でした。被害にあっていたのは、沙織だけではなかったのです。周囲の善意につけ込み、自分勝手なことばかりしていた麻衣は、とうとう制裁されたのです。
このあと、麻衣は震える声で沙織に電話をかけてきます。自分が先に、沙織の悪口をSNSに投稿したのに「晒したでしょ!」と、責めたのです。ですが沙織は、冷静に「私は貸した物を返してと言っただけ」と返事をします。
さらに、「今度、夫と一緒に借りたものを返してもらうために家に行くから」と告げます。
反省した?友人の末路
約束の日。麻衣は自宅の玄関先で、大きな紙袋を抱えて立っていました。 いつもならオシャレに気を使っている彼女も、この日はすっぴんで、心なしか肩が小さく見えました。
「……これ、全部。洗って返したかったけど、急ぎだって言うから……」
蚊の鳴くような声で麻衣が差し出した袋の中には、シワだらけのワンピースと、少しシミのついたマタニティー服が入っていました。勇が横から口を出します。
「麻衣さん、沙織はあなたを信じて貸していたんですよ。それを「もらった」と勝手に解釈するだけでなく、SNSで沙織を批判するなんておかしいですよね?」
麻衣はこっくりと頷き、涙をこぼしました。
「ごめんなさい……。沙織なら何でも笑って許してくれるって思い込んでいたんです。古い友人だからって、完全に甘えていました」 ※2
「完全に甘えていた」と、自分の非を認めた麻衣。ですが、一度失ってしまった信頼を再び取り戻すことはできません。シワシワのワンピースは、保管状態が悪かったのでしょう。悲しくなりますね…。
麻衣は「経済状態が厳しくて」と言い訳をしていましたが、それを理由に友人が大切にしているものを勝手に「もらった」ことにしては、いけませんよね。
友人関係を見直したできごと
彼女はその後、SNSに謝罪の言葉(といっても、自分の非を認める簡潔なもの)を投稿し、アカウントを削除しました。しかし、一度失った信頼は簡単には戻りません。共通の友人の何人かは、彼女と距離を置くようになったと聞きました。
帰り道、車の中で勇が私に言いました。
「お疲れ様、沙織。大事なものが戻ってきて良かったな」
「うん……。でも、なんだか悲しい。友達を1人失くしたみたいで」
「沙織が失くしたんじゃない。彼女が自分で壊したんだよ」
私は、返ってきたワンピースを抱きしめました。 少し麻衣の家の匂いがするけれど、クリーニングに出せば、また私の元に戻ってくると思います。
それからしばらくして私は3人目を授かり、あのワンピースを着て3度目の安産祈願に向かいました。 お姉ちゃんになる美月と玲奈が、私のおなかを優しく撫でてくれます。
あれ以来、麻衣とは連絡をとっていません。人との付き合い方は、優しさだけでは成り立たない。 適切な距離感と、互いへの敬意。 それを守ることが大事だと改めて感じました。
これからは、大切な家族と、本当に信頼できる友人たちを、もっと大切にしていきたいと思っています。 ※3
沙織の夫が言う通り、罪悪感を抱く必要はありませんね。先に、信用を壊すようなことをしたのは麻衣のほうです。
貸し借りに限らず、友人関係を築くのに信頼は欠かせません。そして、一度失った信頼を取り戻すのは、容易なことではありませんね。今回のできごとを通して、主人公は人間関係を見つめ直すきっかけができました。
世の中には、常識では考えられないようなことをする人がいるものです。「借りたものを返す」のは、小学生でもわかること。自分と家族を守るために、ときには思い切った決断も必要です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










