©ママリ
「うわあ、真っ白だね!」
幼稚園から帰る車の中で、みおと理人ははしゃいでいましたが、私の心境は穏やかではありませんでした。
「2人とも、今日は雪がすごいからすぐ帰るよ。大地の学童のお迎えもあるんだから」
雪道の運転は神経を使います。ようやく習い事を終えて帰宅したときには、子どもたちの服は雪でびっしょり。
「冷たぁい!」
「足が痛いよー!」
泣きべそをかく下の子2人を、私は焦りながらお風呂に放り込みました。
「亮平はまだ帰らないよね。大地の迎えまであと少し時間があるか……。とりあえず、ご飯のスイッチだけ入れちゃおう」
お風呂から上がった2人をパジャマに着替えさせ、夕飯の支度に取り掛かったときです。時計の針は17時30分を回っていました。 ※1
いつもと違う、大雪の日
雪道の運転は、神経を使うもの。さらに、風邪をひかないよう、子どもたちを早めにお風呂に入れます。夫は、まだ帰ってきませんが、長男のお迎え時間が迫っています。
慌ただしく家事をこなし、ふとリビングに目をやると、次男・理人が眠ってしまいました。その隣で、長女・みおは、真剣にテレビを観ています。
「たったの5分」が一生の後悔に…
「みお、ちょっと聞いて。お母さん、今からお兄ちゃんを迎えに行ってくるね」
私はテレビを見ているみおの肩を優しく叩きました。
「えー、みお行きたくない、寒いもん」
「いいのよ、みおは理人と一緒にここで待ってて。すぐに、本当にすぐ戻ってくるから。いい子でテレビ見ていてね」
みおは「はーい」と気のない返事をして、画面の中のアニメに視線を戻しました。 理人はスースーと規則正しい寝息を立てています。 玄関のドアを開けると、冷たい風が頬を刺しました。
「はい、鍵もOK。まだあの2人は内側から開けられないし、大丈夫よね」 ※2
雪が降っていたため、今日は下の子2人には留守番してもらうことに。「寒い思いをさせたくない」「たったの5分」という油断が、智美の判断を狂わせたのです…。
急いで大地を迎えに行き、自宅に戻ってくると、想像を絶する光景が広がっていたのです。わが家の前には、泣き叫ぶ理人と、見知らぬ男性の姿があったのです。いったい、何が起きたのでしょう?
「通報した」男性から告げられた事実
「理人! 理人!」
私は雪の上に崩れ落ちるようにして、理人を抱きしめました。理人の体は氷のように冷たく、ガタガタと震えています。
「……ママぁ、ママぁ……! おえっ、うわあああん!」
理人は私の服をちぎれんばかりに掴み、顔を埋めて泣き続けました。
「お母さんですか?」
低い、落ち着いた声が頭上から降ってきました。見上げると、傘を差した中年の男性が厳しい表情で私を見ていました。
「は、はい……すみません、本当にすみません! すぐに戻るつもりで……」
「この子、2〜3分はこの雪の中で泣いていましたよ。家の中から声が聞こえたのかと思ったら、自分でドアを開けて出てきたみたいで。危うく道路に出るところでした」
男性の言葉に、心臓が止まりそうになりました。
道路に出る? もし、雪で視界の悪い車が通りかかっていたら?
「……ありがとうございます。本当に、ありがとうございました」
「いえ。ただ、……あまりにも泣き方が尋常ではなかったので。この寒さの中ですし、警察に通報させてもらいました」
通報。 その言葉の重みに、頭の中が真っ白になりました。
「えっ、警察……ですか?」
「はい。今の時代、何があるかわかりませんよね。実際に、放置されていたのは事実ですから。あ、パトカーが来ましたよ」 ※3
この男性は、たまたま家の近くを通りかかり、理人の泣き声に気づいてくれたようです。子どもが飛び出してしまわないよう、見守ってくれていたのです。まさに、子どもの命の恩人です。
ですが、「通報」という言葉で頭が真っ白に。自分が子どもを「放置した」事実が重くのしかかります…。
誰でも、慌ただしい子育ての中で「5分だけなら」が、よぎったことがあると思います。決して母親が怠慢だったのではなく、ひとりで子育てに奮闘していたからこそ、起きてしまった事態でした。「たった5分、されど5分」が、心に深く刻まれる作品です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










