実家に着くと、母は驚きながらも何も聞かずに私たちを受け入れてくれました。楓を寝かしつけた後、ようやくスマホを見ると、義彦から大量の着信とLINEが入っていました。
『幸恵? どこにいるんだ? 楓は?』
『今帰ったら誰もいないし、荷物もなくなってる。どういうことだよ』
『お願いだ、返信してくれ』
私は震える指で、一枚の写真を送りました。 先ほど、暗闇の中で撮影した、彼と里奈さんが寄り添っている写真です。
それから数分後、電話がかかってきました。私は迷った末に出ることにしました。
「……何?」
『幸恵! 違うんだ、あれは本当に仕事の延長で、彼女がどうしてもって言うから……!』
「仕事の延長で、妻に内緒で家まで行くの? 『大好き』なんて言われて、喜んでお茶まで飲みに行くのが、あなたの言う『給料のため』なの?」
私の冷え切った声に、義彦は絶句しました。
「彼女、私のことが嫌いなのよ。知ってた? 彼女にとって、あなたは私に勝つための『道具』なの。あなたは自分の価値を上げるために、妻を裏切ってまで、その道具になり下がったのよ」
『……そんなつもりじゃなかったんだ。ただ、頼りにされるのが、その……営業成績も上げなきゃいけないプレッシャーもあって……』
「言い訳はいいわ。私はもう、あなたを信じられない。里奈さんと仲良く『お客様対応』を続けてればいいじゃない。私は楓を守るから」
私は一方的に電話を切り、電源を落としました。 ※1
夫の最低な裏切り行為
幸恵は、さんざん夫に対して里奈と個人的な連絡は取り合わないよう訴えました。ところが、「仕事だから」と幸恵の気持ちに寄り添ってはくれませんでした。そんな夫からの言い訳は、ひとつも信じることができませんね。
幸恵は、大切な娘を守らなければいけません。
夫の謝罪に、妻は…
翌朝、目が覚めるとひどい頭痛がしました。母が淹れてくれたお茶を飲みながら、ぼんやりと外を眺めていると、庭に義彦の車が滑り込んできました。
彼は憔悴しきった様子で、私の両親に深々と頭を下げていました。父に厳しく問い詰められ、義彦は蚊の鳴くような声で、すべてを白状したようです。
里奈さんからの誘惑があったこと。最初は断っていたけれど、徐々に「頼られる快感」に負けてしまったこと。そして、私への配慮が完全に欠けていたこと。
「幸恵、本当にごめん。俺が馬鹿だった……」
義彦は私の前で膝をつきました。
「里奈さんとは、もう二度と個人的な連絡は取らない。店にも、担当を変えるように手配してきた。彼女が何を言おうと、もう一切関わらない。だから……帰ってきてほしい」
私はすぐには頷けませんでした。 彼がしたことは、法的な「不貞」には当たらないかもしれない。でも、私の心は確実に殺されたのです。
「目の前で、彼女の連絡先を消して。ブロックするだけじゃなくて、履歴も全部消して」
私の言葉に、義彦は迷わずスマホを取り出しました。 ※2
実家にやってきて、必死の弁明をする夫。幸恵の心は冷え切っており、今さら謝罪されても、すぐに受け入れることはできません。
ですが幸恵は、里奈の連絡先とやり取りを削除するのを条件に、家に戻ることにしたのです。
夫を狙ったシンママとの決別
家に帰ると、案の定、里奈から私のスマホに怒涛のLINEが届いていました。
『ねえ、どういうつもり!? 義彦さんに担当変えられたんだけど! 幸恵ちゃんが余計なこと言ったんでしょ? 最低!』
『私、シングルで大変なの知ってるよね? 嫌がらせはやめてよ!』
私はその画面を無表情で眺めました。 かつては、彼女の言葉一つ一つに一喜一憂し、腹を立てていたけれど。 今の私には、彼女がとても小さく、哀れな存在に見えました。
「勝手に言ってればいいよ。私を土俵にあげたかったんだろうけど、最初から立っている場所が違うんだから」
私は一言も返信せず、彼女をブロックしました。 彼女は私の夫を「懐柔」することで、私に勝利したつもりになっていたのでしょう。 でも、彼女が手に入れたのは「既婚男性への浅ましい執着」というレッテルだけで、私が持っている「家族の絆」を奪うことはできませんでした。 ※3
今までは、里奈の言葉に心を乱されることが多々ありました。ですが、今回の騒動がきっかけで、完全に関係を断つことを決意。勝手な対抗心に、真面目に付き合う義理はありませんね。
その後、里奈は「人の夫に手を出す人」というウワサが広まり、居づらくなったのか、引っ越しをしたそうです。もう関わることはなさそうですね。
一方、夫のことは完全に許すことはできませんが、再構築の道を歩んでいます。幸恵の気持ちを最優先に考えるようになった夫を、もう一度信じることにしたそうです。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










