2年前の約束はやぶられた
「お義父さん、お義母さん。庸介さんは、2年前の約束を破りました。それも、リイナの1歳の誕生日に、生活費を注ぎ込んで株を買っていたんです」
義母が目を見開きます。
「えっ、庸介……またやってたの?」
「母さん、これは運用なんだよ! 損切りしなきゃ損じゃないんだ。今売ったら負け確定なんだよ!」
庸介が必死に弁明しますが、私はそれを遮りました。
「いいえ、もう負けてるの。家族の信頼という、一番大切なものを失ったんだから」
私は淡々と、今の状況を説明しました。
「私は5月からフルタイムで復帰しています。この家は、私がローンを肩代わりする形で住み続けます。子どもたちの環境を変えたくないからです。庸介さんには、誓約書通り、今すぐ離婚届にサインしてもらい、家を出て行ってもらいます」
「待てよ! そんなの不公平だろ! この家のローンの半分は俺が……」
「あなたが株で溶かしたお金、合計でいくらになると思っているの? この家がもう一軒建つくらいの額よ。それでも足りないくらいだけど、株を全部売却したお金を慰謝料として受け取ることで、相殺してあげると言っているの。これ以上、私に法的手段を執らせたい?」 ※1
妻の淡々とした追及に、夫は何も言えないようです。前回、泣きながら誓約書にサインしたにもかかわらず、わすれてしまったのでしょうか。二度目の裏切りはゆるされません。夫の両親にも同席してもらったおかげで、言いのがれできない状況です。
最終的には、義父に引きずられるようにして家を去った夫。今は実家に身を寄せながら、多額の借金を返済するため、必死にはたらいているそうです。ですが美恵子にとっては、もう過去のこと。今の生活と子どもたちを守らなければいけません。
離婚後、ようやく取り戻した平穏
庸介が家を去ってから、3か月が経ちました。
あの日、彼は義父に引きずられるようにして家を出て行きました。 誓約書の効力と、義両親の立ち会い、そして弁護士を通じた法的な手続きにより、離婚はスムーズに成立しました。
庸介が持っていた株は、私の宣言通り全て売却させ、現金として回収しました。暴落していた銘柄もありましたが、それでもまとまった額にはなりました。
それをリイナとカンナの将来のための貯金口座に移した時、ようやく胸のつかえが取れた気がしました。 ※2
夫のギャンブル依存は本当にストレスでした。すべて精算され、ようやく夫の呪縛から解放されたようです。
あわただしくも、平穏な日常
先日、仕事の帰りに佐代子と少しだけお茶をしました。
「美恵子、顔色良くなったね。やっぱり、毒素(夫)を抜くと人間きれいになるんだわ」
「ひどい言い方ね(笑)。でも、本当にそうかも。あのまま一緒にいたら、私まで壊れてた」
『環境を変えない』という私の選択は、正解でした。 カンナは今も同じ保育園に通い、大好きなお友達と遊び、この家で伸び伸びと育っています。リイナも歩き始め、家の中はいつも賑やかです。
夜、子どもたちが寝静まった後の静かなリビングで、私は一杯のコーヒーを飲みます。スマホを見るのは、翌日の仕事のスケジュール確認と、子どもたちの写真整理のためだけ。 画面の中の数字に一喜一憂し、家族を裏切るような真似はもう二度と起こりません。
窓の外には、静かな住宅街の灯りが見えます。 失ったものは大きかったけれど、手に入れたものはそれ以上に価値がある。「心の平穏」という、何物にも代えがたい宝物。
私はこれからも、この家で、この子たちと一緒に、一歩ずつ確かな足取りで歩いていきます。 もう、誰も私たちの幸せを「溶かす」ことはできないのだから。 ※3
もう、証券口座をチェックする必要はありません。勝手に家のお金をつかわれる心配もありません。夫という「毒」を排除し、おだやかな日常を取りもどすことができました。
「子どものために」一時は、離婚をためらった美恵子。ですが、あのまま結婚生活をつづけていたら、美恵子自身がこわれていたかもしれません。母として、つよくあろうとした美恵子。これからは、自分と子どもたちのために、しあわせになってほしいですね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










