幼稚園と保育園、何が違う?
幼稚園と保育園、どちらも母子分離で子供たちが通い、保育士や幼稚園教諭のもとで生活するという意味では同じ施設のようにも見えます。しかし、実際は制度面や考え方に違いがあるのです。
まずは制度面で「幼稚園」と「保育園」の違いを見ていきましょう。
幼稚園とは
- 管轄:文部科学省
- 職員:幼稚園教諭免許を持った者が教育する
- 対象:3歳~就学前の児童
- 通園期間:プレ入園がある場合もあるが、一般的に2~3年の通園
- 申し込み方法:保護者が施設に直接入園の申し込みをする
- 延長保育:預かり保育を実施している幼稚園もある
- 給食の有無:各園によって異なる
- 保育料:各園によって設定
幼稚園は「義務教育及びその後の教育の基礎を培うもの」とされています。小学校に就学する準備をすることや「生きる力の基礎」を育成することを目的にしていて、学校教育法に規定された幼稚園教育の目標を達成するために努めるとされています。
未就園児の子供を対象にしたプレ入園がある場合もありますが、多くの園は2年~3年の通園になっており、3歳もしくは4歳から入園となります。年度ごとに募集があるので、親がいつ入園させるかを選んで応募することができます。幼稚園は義務教育ではありません。幼稚園は、保護者が各園に直接入園の申し込みを行います。
認可保育園とは
- 管轄:厚生労働省
- 職員:保育士免許を持った者が保育する
- 対象:0歳~就学前の保育が必要な児童(園により受け入れ年齢は違う)
- 申し込み方法:保護者が各市区町村に入園の申し込みをする
- 延長保育:有
- 給食の有無:有
- 保育料:世帯の住民税納付額によって決定
保育園は「保育を必要とする子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設」とされています。義務教育への準備や、教育そのものを目的とした施設ではなく、仕事や就学などで「保育ができない」両親に代わって子供を保育するための場所です。
保護者が各市区町村に入園の申し込みを行い、入園が決定した場合は保育園と直接契約をします。保育園の利用で保育の延長をした際は、延長料や延長時間については各施設によって異なるため、入園前に確認するとよいでしょう。
また、認可保育園では基本的に給食を各保育園で調理していますが、家庭的保育(保育ママ)ではお弁当の持参が必要な場合もあります。
認可外保育園とは
- 管轄:厚生労働省
- 職員:保育士免許を持った者が保育する
- 対象:0歳~就学前の保育が必要な児童(園により受け入れ年齢は違う)
- 申し込み方法:保護者が施設に直接入園の申し込みをする
- 延長保育:園によって異なる
- 給食の有無:園によって異なる
- 保育料:各園によって設定
認可外保育園とは、認可保育園よりも保育室の面積や保育者についての基準が厳しくない保育施設のことを指します。東京都が独自の基準を設置して開所している「認証保育園」も認可外保育園に含まれます。
駅の近くなど便利な立地にも開所していますが、小規模で園庭などが設けられていないことが多いため、比較的低年齢児向きの施設です。申し込みは、保護者が希望園に直接行います。
認定こども園とは
- 管轄:文部科学省、厚生労働省
- 職員:保育士と幼稚園教諭の両方の資格を持った者が受け持つ
- 対象:0歳~就学前の保育が必要な児童(保育認定2号、3号)+満3歳以上の保育が必要ではない児童(保育認定1号)
- 申し込み方法:保護者が施設に直接入園の申し込みをする
- 延長保育:有
- 給食の有無:有
- 保育料:世帯の住民税納付額によって決定
認定こども園は、幼稚園と保育園が一体化した施設で、保育の必要性の有無は関係なくすべての子供が利用対象です。3歳~就学前の保育を必要としない子供の幼稚園的な利用の場合は、保護者が各園に直接入園の申し込みをします。
一方、保育が必要な2号および3号の子供の保育園的利用の場合は、市区町村に入園の申し込みをします。入園が認められれば各園と直接契約をして登園開始となります。
働くママは、幼稚園には預けられない?
以前は「働くママは保育園へ」「専業主婦だから幼稚園へ」などと、家庭の状況によって預け先が決まっていた面があります。しかし現在では、幼稚園と保育園両方の機能を併せ持った「認定こども園」ができ、選択肢が広がりました。認定こども園は内閣府の管轄になります。
また、幼稚園の中にも朝夕の時間帯や夏休みなどの長期休業期間中にも子供を預かる「預かり保育」が広まりつつあり、預かり保育を実施している園では保育園に預けるのと同様に働くことが可能です。
こうした背景から、幼稚園と保育園どちらに子供を預けるか悩んでいる方も増えてきているようです。
- 文部科学省「現行学習指導要領・生きる力」文部科学省(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/you/sou.htm,2019年9月27日最終閲覧)
- 厚生労働省「保育所保育指針」厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/hoiku04/pdf/hoiku04a.pdf,2019年9月27日最終閲覧)
- 文部科学省「認定こども園について」文部科学省(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab200601/002/002/001.htm,2019年9月27日最終閲覧)
- 文部科学省「教育基本法資料室へようこそ!」文部科学省(http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/004/a004_04.htm,2019年9月27日最終閲覧)
- 世田谷区「私立幼稚園等の預かり保育のご案内」世田谷区(http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/103/130/493/d00018488.html,2019年9月27日最終閲覧)
- 内閣府「認定こども園概要」内閣府(http://www8.cao.go.jp/shoushi/kodomoen/gaiyou.html,2019年9月27日最終閲覧)
- 愛媛県「幼稚園・保育所・認可外保育施設・認定こども園の比較」(https://www.pref.ehime.jp/h20300/ninteikodomoen/documents/hikaku_1.pdf,2019年9月27日最終閲覧)
- 保育園を考える親の会(編)「はじめての保育園」P90~107(主婦と生活社,2014年)
先生に聞いてみた、幼稚園と保育園の違い
幼稚園と保育園について、どんな部分が違い、どのように選べばよいのか気になりますよね。今回は、幼稚園、保育園それぞれで勤務経験があり、現在は親子カフェで見守りスタッフとして活動している先生2人にお話を聞きました。
今回お話を聞いた先生
- メーさん:幼稚園教諭歴8年、保育士経験4年(認可外保育所)
- ひまわりさん:幼稚園教諭歴4年、保育士経験8年(認可外3年、私立認可園5年)
先生方は西船橋の親子カフェHedgehog the Rainbowの「見守りスタッフ」として活動しています。こちらのカフェでは見守りスタッフが積極的に子供と遊んでくれ、ママが息抜きしながら育児相談をすることもできます。
(取材対応店の方針により、ニックネームでお話をお聞きしています)
先生から見た「幼稚園と保育園の違い」
実際に幼稚園、保育園両方での勤務経験のある先生から見て、幼稚園と保育園にはどのような違いがあるのでしょうか。
保育園は選びにくい
メーさんによると、幼稚園はそれぞれの園によって方針があり、見学をした上でママが選択することができるのだそう。しかし保育園の場合は認可園について自治体が一括管理しているため、思ったように選択できないのだといいます。
たしかに幼稚園の場合は、園によって教育方針などの特色があるように感じられます。保育園にも特徴のある園はありますが、認可園であれば申込先は自治体になってしまい、選考の結果落選してしまうこともありますね。
幼稚園児の中では「共働き家庭」と「専業主婦家庭」で違いが見えやすい
幼稚園で延長保育がある園もあり、働きながら預けることができる園もあります。しかし、多くの園は日中通常保育の子が帰る時間には「さようなら」の挨拶があり、必要な子はそのあと保育する形になるので、子供によっては「僕も(私も)帰りたい」と感じてしまう子がいるようです。
また、長期休み中の保育など「共働き家庭」「専業主婦家庭」で差ができやすくなります。「仲良しの子が幼稚園に来ない」という場合もあり、子供がナーバスになってしまう場合も。子供の気持ちの面に対するケアを、パパやママが意識しておこなう必要があるかもしれません。
よくある不安に先生からアドバイス
幼稚園と保育園ともに良い面と気になる面があるものですが、実際に入園するのはどちらか片方。生活面や教育面など、どんな部分に違いがあるのか気になりますよね。また「小学校に上がった後に差が出てしまうのでは」という不安も感じてしまうことがあるかもしれません。
今回は特に不安に感じやすい点についてアドバイスをもらいました。
幼稚園でも保育園でも「学ぶ」ことはできます
メーさんによると幼稚園は文部科学省の管轄なので『教育』がベース。時間割があるような感覚で、余った時間を自由時間にあてるタイムスケジュールになっています。就学準備をメインとしているので、お勉強のようなワークを用意している園や、時間として学習らしいことをする時間を取っている園もあるのだそうです。
これだけだと「保育園では勉強が遅れてしまうのでは」と心配になってしまいますが、心配はいりません。ひまわりさんによると、保育園の中にも自発的にワーク学習を取り入れている園もあり、ワークなどがない場合でも遊びの中で学習できるように促していることもあるのだそうです。
また、小学校に入学したときの学力の差を心配するママもいますが、先生方の意見では「園でこれをしたから学習する」というのではなく、小学校に入った時のモチベーションが大切なのだそう。保育園に通った子も、小学校に入ったら「学習」という新しい雰囲気が新鮮でどんどん吸収する子もいて、幼稚園を卒業したから必ず勉強ができるということではありません。
周りのお友達を見ると「あの子はこれを習っているからうちも...」と焦ってしまうこともありますが、周囲に流されて習い事を決めるのではなく、家庭としての教育方針を持ってある程度一貫することが必要です。就学前に机に座って学習することは必須ではありません。
保育園の「お昼寝」が学校生活に影響することはありません
幼稚園と保育園の違いといえば「お昼寝」ですね。保育園では年長児までお昼寝がある園もありますが、幼稚園にはお昼寝がありません。
幼稚園は保育園よりも一般的に登園が遅く、降園も早いのでお昼寝が必要ないとされていますが、保育園の場合は朝早く登園し、帰りも遅いため、お昼寝なしで過ごすには疲れてしまいますよね。
とはいえ保育園でも小学校での生活に慣らすため、年長児ではお昼寝を無くしていく園が多いです。小学生になれば生活も一変し、疲れが出ます。幼稚園でも保育園でも、眠くなる子は眠くなってしまうでしょう。それも成長の一環なので「保育園生活だったから眠くなる...」と悲観する必要はありません。
子供たちは遊びの中で生活に必要なことを学びます
「幼稚園ではしっかり箸の使い方や生活面での指導をしてくれるけれど、保育園ではしてくれないのでは...」というイメージを持っているママもいるのではないかと思います。
しかし、ひまわりさんによると「保育園でもちゃんと箸は教えていましたよ」とのこと。保育園の中でも生活面の教育をきちんと行っている園もあり、一概には言えないようです。
また、メーさんは「園での教育もそうだけど、大切なのは家庭での方針を決めること」と話してくれました。周囲とわが子を比べてしまうのは親として避けられないことですが、その家庭がわが子に対して何を大切と考え、教えていくのかはブレずに決めておくことが大切だといいます。
幼稚園や保育園で教育的に教えなくても、子供たちは遊びの中で生活に必要なことを学びます。また、小さいうちから自宅にいる時間が短くなってしまう保育園児も、集団生活をすること自体が子供にとってはプラスの要素になっています。
保育園から幼稚園(またはその逆)への転園も、心配し過ぎないで
引っ越しや家族の事情で、保育園から幼稚園(またはその逆)に転園する決断をすることもありますね。また、保育園から保育園など園の形態が変わらない転園も不安があるでしょう。
しかし先生たちは「子供は友達と遊ぶことに慣れていれば、すぐに園に慣れていきますよ」と、心配にはおよばないと言います。園の中で安心できる先生や友達を見つけ、自分の居場所があると感じられれば大丈夫。さらに「転校生」は周囲の子にとって注目の的。初めは緊張するかもしれませんが、必ず仲良くしてくれる子が現れ、居場所を見つけられるでしょう。
ママ自身も慣れない環境に不安があると思いますが、先生に細かく様子を聞くなど、気になることはどんどん質問して不安を解消していきましょう。
それぞれの家庭にあった園を選びましょう
待機児童が問題となっている今、「働いているから保育園」という決まりはなく、幼稚園に預けて働くことも選択肢となってきました。「どちらの園に預けるのがよいのだろう」と悩むこともありますね。
先生によると、幼稚園は教育ベース、保育園は福祉ベースという違いはあれど、その中での生活はさまざま。どの園に預けても、子供がのびのびと生活することができれば、必ず色々なものを吸収できるはずです。友達と一緒に過ごすことや楽しく遊ぶことの中にも、人生で大切な学びはたくさんあります。そして何より、家庭でも方針をしっかり持ち、周囲と比べてウロウロとしないことが大切なのだといいます。
家庭によっての働く時間や生活リズムに合わせて、候補となる園を探して見学、説明会への参加をしてみましょう。子供の個性に合い、安心して預けられる園を見つけられるとよいですね。
<取材・撮影協力:親子カフェHedgehog the Rainbow>