お店で「買って!」とわがままアピール!こっちが泣きたい…
お店で一度は見かけたことのある人もいるかもしれません、大きな声で泣き叫んで「買って!」と言ったり、床に寝転がって悲鳴のような声をあげたりしてアピールする子供…。
そのときのママたちの気持ちは「周りの目が気になる」「いい加減にして欲しい」「ここで負けて買ったらダメだ」「こっちが泣きたいよ」などいろいろなのではないでしょうか。
しかし、そうして子供が伝えたいことはどんなことなのでしょうか。ただ物を買ってほしい、本当にそれだけなのでしょうか。
子供のわがまま、大人が変われば子供は変わる!
保育士をしていたときに感じたことは、子供たちは基本的に「わがまま」な生き物だということです。「わがまま」というと言葉のイメージとしては良くないかもしれませんが、それは子供にとっては普通のこと。
いろいろな人との関わり、けんかや思い通りに行かない経験をたくさんしていく中で相手の気持ちを知り、思いやりや優しさを感じて、自分をコントロールする力を身につけて行くのだと思います。
「わがまま」だった子が友達や保護者、保育士との関わりの中で「わがまま」な子ではなくなった事例も見てきました。大人の働きかけや意識で子供は本当に変わります。その事例を紹介します。
いつもお昼寝のときだけ暴れる、5歳児のT君
当時私は5歳児クラスの担任で、クラスにT君という男の子がいました。T君は足も速く、レゴブロックも得意でクラスの中でもみんなに一目おかれるような存在でした。
普通に友だちともけんかもしましたが、日中は特に手がかかる子ではありませんでした。
それが、お昼寝に入る前になると変わるのです。3~4歳児クラスがみんなでホールでお昼寝をします。先に3、4歳児クラスが寝ている静かなホールに入ろうとするとわざと声をあげたり、ホールを走り回ったりするのです。
叱っても、やめるどころかエスカレートすることもありました。先生たちが嫌がることをしているのです。
T君がして欲しかったことに気づいてあげる大切さ
T君の行動を、保育士の先輩と一緒にいろいろ考えて出た結論は「僕を見て欲しい」ということでした。T君は3人兄弟の長男で、何でもできてしまう子だったのでお母さんにも非常に頼りにされていました。
弟たちの保育園で使う荷物を持ってあげていたり、自転車の前後ろに弟たちが乗るのでT君だけ歩いて(お母さんも自転車を押しながら歩かれていました)登降園したりと、しっかりもので通っていました。
そのため甘えたい気持ちや、保育士にそばに来て欲しい気持ちがあっても、それを素直に表現するのは照れやプライドもあってできなかったのかもしれません。
日々の中で保育士に一番そばに来てもらえると思ったタイミングがお昼寝前だったのでしょう。暴れれば保育士が必ずそばに来てくれます。私から見ると、T君は怒られていてもなとなく、うれしそうにしているような気がしていたのです。
ほんの少しの心がけで変わった
T君の思いを受け止めて私達がしたことは、できるだけそばにいるようにしたことです。
他の子供たちもいるし、5歳という年齢なのでいつもいた訳ではありません。ただ、遊んでいるときにほかの子の様子を見ながらも、T君に気持ちを向ける意識をしたのです。T君が暴れそうになる前に、お昼寝前にT君のそばに行くようにしたのです。以前よりも少しだけ意識をして、多く声をかけるようにしたのです。
それだけで、T君はお昼寝前に暴れなくなりました。いつもいつも側にいてあげられる訳では無かったですが、自分が見てもらえていると満足したようで落ち着いたのです。
これには私自身が本当に驚きました。それからというもの、困ったことをする子やトラブルの多い子と関わるときにその行動には理由があると考えるようになりました。
これは、大人が子供の気持ちを考えて関わるだけで子供は変わるのだと実感した事例でした。
私の保育、子育ての指針になる本
佐々木正美著『こどもへのまなざし』は私がT君のことで悩んでいたときに出会った本です。まだ、保育士になって3年目のときでした。
この本でT君のことをとても理解できました。ほかにも気になる子のことや、自分の子供との関わり方等とても多くのことに気づくことができました。
T君のように何か大人を困らせる事をする子は伝えたいことがあるのです。でも、言葉では伝えられないのです、だって子供だから。そんなことを気づかせてくれる本です。
保育士も愛読する本『子どもへのまなざし』
著者の佐々木正美先生は児童精神科医の先生です。いろいろなお子さんを見てきた中で、大人がどんな気持ちで子供に向き合ったら良いかが優しい言葉で紹介されています。
ページ数も多くボリュームもありますが、目次の中で今、自分が知りたいことを探して読むこともできます。保育士をしていたとき、母となった今も悩んだとき・迷ったときはいつもこの本に助けられてきました。
同僚の多くの保育士もこの本を読んでいました。
いつも子供の「思い」を感じていられるように…
おなかが空いた、眠い、体調が優れない、といった生理的なものや、「本当は公園に行きたかったのに、無理矢理買い物に連れて行かれた」とか、「もっと遊びたかったのに終わりにされて嫌だった」など内面的なものなど、子供の困った行動には理由があると分かった私。
そのときの子供の「様子」「思い」を大切にすることで困った行動は少なくなると思いました。
いつも子供の思いを聞いてあげられないけれど、「本当は公園に行きたかったのに、ママの買い物に付き合ってもらってごめんね。今度、公園に行こうね。」と思うこと、伝えることでそのとき子供の叶えられなかった思いは救われると思います。
私自身も日々娘とそんな思いで関わっています。そしてもしママが約束したことがあれば守りましょう。その思いはきっと子供に伝わると思います。