未成年の自転車事故の怖さ
手軽に利用できる移動手段として大人から子供まで多くの人が使用している自転車。みなさんご存知の通り、自動車とは異なり運転免許は必要なく、運転の仕方さえ覚えれば誰でも乗ることが可能です。
しかし、手軽さ故にマナーやルールが軽視されることがあり、自転車が危険な乗り物だという認識がないという方が少なくありません。
警視庁によると、平成28年中に全国で起こった交通事故のうち、自転車が関わった割合は約18%。平成23年以降は年々減少していますが、約5分の1という数字は決して少ない割合ではありません。
さらに自転車乗用中の事故を年齢別に見ると、15歳以下が約15%、16歳から19歳までで同じく約15%となっています。
子供の自転車事故により、約1億円の賠償命令
2013年7月、小学5年生の男子児童が起こした事故により、被害女性が意識不明の重体になってしまったとして、神戸地裁が児童の母親に約9,500万円の支払いを命じたという報道がありました。
この報道は、子供をもつ親に大きな衝撃を与えました。手軽な移動手段として日常的に使用している自転車が、このような大きな事故につながると考えたことがある方は少ないのではないでしょうか。ましてや、自分の身近な人が事故の加害者になることはなかなか想像できませんよね。
しかし、普段の生活を振り返ると、速度を落とさずに歩行者のすぐ横を走る自転車や、曲がり角から飛び出して来る自転車を見かけることはありませんか?そうした小さなことが、大事故につながる可能性があるのです。
道路交通法では、自転車は車両の一種として扱われます。そのため、法律違反をして事故を起こした場合、罰則が科せられる可能性があり、さらに相手にけがを負わせた場合は損害賠償を行なう必要があるのです。
子供が事故を起こさないようにマナーやルールを教えることはもちろん大切ですが、万が一の事故に備えた準備をしておくことも重要です。
- 警視庁「都内自転車の交通事故発生状況」(http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/jokyo_tokei/tokei_jokyo/bicycle.html,2017年6月22日最終閲覧)
- 神戸新聞社「小学生の自転車事故 母親に9500万円賠償命令 神戸地裁」(https://www.kobe-np.co.jp/news/backnumber/201511/0008599005.shtml,2017年6月22日最終閲覧)
- 警視庁「自転車はルールを守って安全運転~自転車は「車のなかま」~」(http://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/index.htm#p01,2017年6月22日最終閲覧)
- 警視庁「自転車の正しい乗り方」(http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/bicyclette/jmp/bicyclette.pdf,2017年6月22日最終閲覧)
自転車保険とはどのようなもの?
ご家庭で自動車をお持ちの方は分かるかと思いますが、自動車を運転する場合は自賠責保険の加入が義務づけられています。自賠責保険とは、事故を起こした際に被害者への賠償をカバーするもので、対人事故を起こした場合のみに適用される保険です。
自転車保険も同じ考え方をすることができ、自転車に乗っていて事故を起こし、相手にけがを負わせてしまった場合に備えた保険です。自動車の自賠責保険と異なる点は、自転車保険の加入は必須ではなく、個人の判断で加入する保険だということ。
しかし、自転車による事故が多い状況や高額な賠償の事例があることから、自治体によっては自転車保険への加入が義務化される動きがでてきています。実際に、平成27年には兵庫県で、平成28年には大阪府でも自転車保険への加入が義務化されています。
自転車保険にはどうやって入るの?
自治体で自転車保険加入が義務化されている流れを受けて、ご家族で自転車保険への加入を検討している方がいるかもしれません。自転車保険にどのように入ればよいのかご説明します。
自転車保険の加入と聞くと、新たに保険に加入するというイメージを持つ方がいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。大阪府のホームページには保険の加入を確認するチェックリストがあり、それによると、以下のような条件であれば既に自転車保険に加入している可能性があります。
- 自動車保険に加入している
- 火災保険や傷害保険に加入している
- 全労災、市民共済などに加入している
- 会社等の構成員向けの団体保険に加入している
このような条件に当てはまる場合は、保険証書を確認し、賠償責任の特約に加入しているかどうかを確認してみて下さい。補償される金額などは加入している保険によって異なりますが、既に入っていたとしたら一安心ですね。もし加入していなくても、特約があれば加入手続きをすれば完了です。
他にも、TSマークが貼られている自転車であれば、TSマークに保険が付帯されており、既に保険に入っている扱いになります。また、お手持ちのクレジットカードに保険が付帯している場合もありますので、当てはまるものがないか確認してみましょう。
これらの条件にあてはまらない場合は、新規で自転車保険に加入することが必要です。自転車保険は、数百円で加入できるものが多くあり、携帯キャリア会社やコンビニで申し込みができるものなど、選択肢がたくさんあるため、ご家庭にあった内容の保険を調べてみて下さいね。
- 三井住友海上火災保険「自賠責保険」(http://www.ms-ins.com/personal/car/jibaiseki/,2017年6月22日最終閲覧)
- 損害保険ジャパン日本興亜「自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)とは」(http://www.sjnk.co.jp/kinsurance/automobile/jibaiseki/,2017年6月22日最終閲覧)
- 兵庫県庁「「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」について」(https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk15/jitensyajyourei.html,2017年6月22日最終閲覧)
- 大阪府「 大阪府自転車条例」(http://www.pref.osaka.lg.jp/dorokankyo/osakajitensha/,2017年6月22日最終閲覧)
- 日本交通管理技術協会「TSマーク」(https://www.tmt.or.jp/safety/index2.html,2017年6月22日最終閲覧)
- 三井住友海上火災保険「セブン-イレブンで入る保険」(http://ehokenstore.com/,2017年6月22日最終閲覧)
- NTTドコモ「ドコモ サイクル保険」(https://www.nttdocomo.co.jp/service/insurance/cycle_insurance/index.html?icid=CRP_PRD_kids_junior_rec4_cycle_insurance,2017年6月22日最終閲覧)
- au損害保険「自転車向け保険 Bycle」(http://www.au-sonpo.co.jp/pc/bycle/,2017年6月22日最終閲覧)
保険加入は万が一への備え、正しい自転車の乗り方を教えてあげよう
自転車保険は、万が一事故を起こしてしまった場合の備え。備えはもちろん大切ですが、それよりも大切なのはきちんとした交通ルールを教えて事故を起こさないようにすること。一時停止などの標識や走行のルールをきちんと教えてあげることが、事故を起こさないようにする第一歩です。
さらに、子供の自転車が安全に乗ることができる状態かどうかを確認したり、積極的に自転車の講習を受けたりする姿勢を見せることが、子供への注意喚起になるでしょう。子供が小さいうちから、ルールを守ることの大切さを教えてあげられるとよいですね。