「こども保険」を通じて社会で子供を育てる大切さを伝えたい
話題の「こども保険」について詳しくお伺いしてみました。資料だけでは受け取ることのできない村井氏の想いを感じたように思います。
永続的に子育て世代をサポートするのが「こども保険」
ーー話題の「こども保険」についてお伺いします。この政策を打ち出した経緯を教えてください。
村井氏:現在若者世代は、その前の世代に比べ経済的な余裕がありません。また、核家族化が進み家族からのサポートが少ない環境の中で子育てをしています。その状況で子供を生み育ててください、と言っても厳しい問題です。そこで我々は社会全体を通して子育てしやすい環境を整えようという選択をしました。
その上で、予算に余裕がある時に子育て世代に何かしら使うかではなく、新しい社会保険の仕組みを作ることによって、永続的に子育て・若者世代への社会で助け合えるものをやらなければならないと考えました。時間・資金・子育て環境を考えた時に、まず我々政府ができることは資金的に手当をすることであると思っております。
ーーなるほど。若者世代へのメッセージでもあるわけですね。
村井氏:はい、若者世代へ政府が本気で少子化対策を行おうとしているということが伝わるとよいな、と考えております。
ーーなぜ、対象が就学前の子育て家庭なのでしょうか。
村井氏:さまざまなアンケートやデータに基づき、就学前の子育て世代は保育料への負担が大きいと言われています。また人生100年時代と言われ、なくなっていく職業が多くなってくる中で子供たちは将来的に非認知能力が必要となってくると言われています。これらは世界的な研究で基本的に、幼児期に身に付くことが多いと言われています。
その他は、少子化対策としてすでに子供を育てている家庭が、経済的な余裕があればもう1人考えようかな、と思ってくれることがあることを受け、それらの世帯を支えることは少子化の直接的な対策になります。これら3つを含めて考えたところ、就学前の幼児教育時期に力を入れるべきであることに至りました。
社会全体を通して負担をお願いしたい
ーーこども保険の財源確保についてお伺いさせてください。世の中的に負担が大きい、高齢者はなぜ負担がないのかという声が多くありました。
村井氏:そうですね、社会保険の仕組みとして受益と供給のバランスが必要だと考えております。負担する人は、受ける側でもあるべきだという考え方です。
こども保険に関してですが、三世代に分けてお話しすると、就学前の子供を育てている世代は受益と供給があっています。次に小学生以降の子供を育てている世代から65歳前後までは直接的な便益はなくとも、子供が増えることによって医療や介護の充実した便益を受けることができるので、保険料の負担をお願いしたいと考えております。しかし65歳以降の高齢者は、子供が生まれてから社会保険料を納めることができるまでに約20年かかります。つまり社会保険の仕組み上、高齢者にお願いするのが難しいと考えました。
ーー社会保険の仕組みによって厳しいということですね。その他の手段として高齢者に負担させる方法は考えていないのでしょうか?
村井氏:いえ、そんなことはありません。現在、社会保険としてみなさんがお支払いただいている年金の保険料は、現状の9.15%から上ががりません。医療と介護に関しては、これからも上がっていくと言われています。
しかし我々としては、全体の保険料を上げずにこども保険の財源を確保していきたいと考えております、そのため、医療と介護の部分を削減しつつ、こども保険の負担額をあげようと考えております。医療と介護の徴収減になることで、実質的に高齢者に負担がかかってくることで、社会全体で支えていこうと思っています。
子育てに対して国は中立的な立場であるべき
ーーこども保険の使い道に関して、議論が大きくあるようです。なぜ待機児童に使わないのか、という声を多く聞きましたがどうお考えでしょうか。
村井氏:現状、使い道は決まりきっておらず議論中ですが、メインとしては幼児教育の無償化です。細分化したニーズのあることは理解しておりますが、今困っている人たちを助けることが先手だと考えました。待機児童が先なのでは、という声を多くいただきましたが待機児童問題は都市部のみであって、地方の人たちは待機児童に財源を使うことに関して反対の声があります。全国から予算を徴収して、都市部の社会問題として使うことは、政府としてできかねます。
子育ての仕方に関して、国は中立的であるべきだと考えています。保育園だけに政府が加担するわけにもいきません。幼稚園に行かせたいと考えている親御さんや、幼稚園も考えていない人もいるかもしれません。このように、さまざまな子育ての仕方を考えてあげなければなりません。
ーーそうですね。待機児童が身近なだけに、どうしても保育園を増やして欲しいと思ってしまいました。
村井氏:多くのニーズにできる限り応えたいです。保育園の在り方についても考えなければならない時期だと感じております。今の保育園は保護者に保育ができるか、できないか、この2択しかありません。ただ、時短で働きたい人や週3〜4で働きたい人など、多様な働き方を政府としては応援していきたいと思っています。
少子化は子供を望まない人にも関わる日本の危機
ーー「少子高齢化である」と数十年前から言われていますが、それらの原因を教えてください。
村井氏:少子化の原因は「子育て環境の変化」です。ご存知の通り、30年前に比べて子育て環境が大きく変わってきています。3世代同居が普通で専業主婦も多くいました。しかし、現在は子育て世代の半分以上が共働き家庭、また年収も平均50万ほど下がっています。そのため先ほども言いましたが若者、子育て世代の精神的・資金的・時間的な余裕がなくなってきております。それらが大きな原因ではないかと考えております。
ーー少子化の危機感についてお伺いします。結婚しない、子供を生まないという選択をする人が増えてきている中、少子化の危機感を世の中的に感じられていない現状かと思います。政府はどのようにお考えですか。
村井氏:我々は少子化に経済、社会保障、財政の面から大変な危機感を持っています。これらは、政治側がこれまでに有効な手当を取ってこなかった不作為だと感じております。少子化の1番の危機はやはり「経済面」です。しかし知らない人が多いのですが、日本の年金の仕組みとして出生率が上がると自動的に将来受け取ることのできる年金の取り分も上がるようになっております。
ーー出生率と年金受給額は比例しているのですね。知りませんでした。
村井氏:はい。ですから子供を希望しないまた子供のいない方の将来支払われる年金は、子育てしている方が年金の底上げをしていることを理解してもらいたいと考えております。
ーー少子化に関して、子育て世代も含め関心がないように感じています。政治的に関心を持ってもらうために考えていることはありますか。
村井氏:そうですね、世の関心のないことが少子化の危機でもあると感じております。これらは私たち政治家の問題であり、発信の仕方を学ばなければならないと考えております。そんな中で、今回提案した「こども保険」を通して少子化や医療・介護について世の中の方が食いついてくれ、問題定義してくれたことはある意味で大きな成果となりました。
これが漢字の多く並ぶ政策名だとしたら、また難しいこと言ってる、と流されていたでしょう。これからも発信方法を考え、若者世代がもっと政治に関心を持ってもらえるようにしていきたいです。
子育ては外部経済
ーー最後に、子育てをしている方々へメッセージをいただいてもよろしいでしょうか。
村井氏:私も2歳と0歳の息子がいます。子育てってつらいですよね。大したことをやっているわけではありませんが、仕事を終えて帰ってから夜泣きしている子供を朝方まで抱きながら、何しているんだろう、なぜこんなにつらい思いをしないといけないんだろうかと思っています。
もちろん、我が子はかわいい。ただこんな思いをするくらいなら、子供のいない選択をした方が合理的だとも考えてしまうことがあります。しかし、私は子育ては外部経済だと考えています。自分自身のプラスマイナスはよくわからないが、社会にとってはプラスである。30年前と比べて子育ての環境が大変厳しい状況の中、子供を産んで育てていることに対してただただ感謝しています。
取材後記
交通機関でのベビーカー論争や、公共の場での泣き声、保育園開園時に多い騒音問題…今は子供や子育てを取り巻く環境にはさまざまな壁が存在します。世が思う子供の存在感に、心苦しくなるニュースばかりです。正直私は経済面よりも、このような社会環境を変えることが、子供を産み育てやすくするための第一歩ではないかと私は感じています。
村井氏は、日本の閉塞感は全て少子化からきているのではないかと言います。単純かもしれないが、子供が増えたら日本はより明るくなると感じているようで、出生率が1.4%から1.7%に上がると世の中の雰囲気が絶対に変わると。
私自身、少子化の実感はありません。子供を望まない人はもっと実感がないのではないでしょうか。年金をもらうことができないのであれば、自分で貯めるという人もいるかと思います。そこがとても難しい、と村井氏は話します。
ただ、村井氏はお母さんたちに「子育ては、社会貢献である」ということを伝えたいと言います。もちろん子供や家族のためだが、それと同時に社会のためになっていることも理解して欲しいと思っています。手触り感はないと思うが、我々としては皆さんを応援するために社会全体として支えていきたいと考えていると話しました。