キー閉じ込み事案の救援は後を絶ちません
車の中に鍵を置いたままロックをかけてしまう「キー閉じ込み」事案。最近は、鍵の抜き忘れを防ぐ機能や、スマートキーなどと呼ばれる、鍵が手元になくても自動でロックや解除ができるものがあるため、キー閉じ込み事案は少なくなっていると考えられています。
けれど、車種によってはまだまだキー閉じ込みが起こる危険性があり、実際に事案は起きています。
JAF(一般社団法人日本自動車連盟)によると、2018年8月1日~8月31日の1ヶ月間で、JAFが出動した「キー閉じ込み」の救援のうち、子供が車内に残されたままだったケースは全国で246件あったそうです。
その中で、緊急度の高さから通常の開錠作業ではなく、ガラス戸を割って子供を一刻も早く助け出さなければならない状態だった事例は8件でした。
決して少ない数字ではない246台のキー閉じ込み案件
この「全国で246件」という数字をどのようにとらえるべきでしょうか。
日本で登録されている自動車の保有台数は、8,170万台(平成30年4月末現在・一般財団法人自動車検査登録情報協会調べ)。そのうちの246台はとても少ない数に思えるかもしれません。
しかし台数自体は少ないけれど、1ヶ月の間に246もの子供の命が危険にさらされた、ということに筆者も驚くばかりです。
- 一般財団法人 自動車検査登録情報協会「最新の自動車保有台数」(https://www.airia.or.jp/publish/statistics/number.html,2018年8月2日最終閲覧)
- JAF「車内熱中症に注意!子どもを車内に残したままのキー閉じ込み 昨年の8月は1ヶ月で246件!」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000635.000003128.html,2019年7月31日最終閲覧)
JAFが調査!真夏の車内温度、短時間で熱中症の危険
ここからは、なぜ夏場のキー閉じ込み案件が危険なのかを説明します。
JAF(一般社団法人 日本自動車連盟)では、ドライバーの安全を守るため定期的に実車を使用した実験を行い、その検査結果を広く周知する活動も行っています。
今回紹介する実験は、午後12時から4時間、駐車条件の異なる車両(ミニバン)を5台用意し、炎天下における車内温度を測定したもの。その条件は次の通りです。
- 対策なし(黒のミニバン)
- 対策なし(白のミニバン)
- サンシェード装着
- 窓開け(3cm)
- エアコン作動
- 調査実施日:2012年8月22日・23日
- 実施場所:彩湖・道満グリーンパーク駐車場(埼玉県戸田市)
- 天候:晴れ
- 気温:35度
- 一般社団法人日本自動車連盟調べ
調査1.サンシェード装着や窓開けなどの対策で、車内温度の上昇は防げる?
©JAF
真夏の気温が高い状況下で5つのシチュエーションを作り、車を4時間放置した場合の車内温度の変化を調べた結果、熱を吸収しやすい色味の黒い車の車内温度は50度以上にもなりました。サンシェードをつけ、熱を反射する白い車でも車内温度は50度を超えることがわかります。
わずかな窓開けといった工夫で、車内温度が50度を超えるほどの高温になることは防げますが、それでも40度は超えており、暑さ対策をしているとは言い難い結果となりました。
実験結果を見ると、エアコンを付けている間は温度を一定に保つことができるようです。しかしエアコンはエンジンをかけていないと動きません。エンジンをかけたままロックをしてしまったとしても、エンジンがいつ切れてしまうかわかりません。エアコンをつけていれば大丈夫とは必ずしも言えないでしょう。
「どんな車でも高温になる」ととらえるべきだと思いました
筆者自身、車の色はおしゃれや個性のひとつだととらえていました。けれど「熱を吸収しやすい色」という観点でいえば、黒いボディの車内温度が上昇しやすいのもうなづけます。
今回はエアコンの作動が有益という結果も出ていますが、エンジンが切れてしまえば5分後には車内温度が上昇することがわかっています。
どんな対策をとっていても、「車内温度の上昇による危険性は変わらない」ととらえなければいけないなと思いました。
調査2.短時間であれば、子供を車内に残しても安全?
©JAF
コンビニやスーパーの駐車場に子供を乗せたまま駐車したと想定して、熱中症の危険度を調べました。
熱中症指標計を用いて、車内のWBGT(熱中症指数)を調べました。その結果、エアコン停止後5分後には熱中症警戒レベルに達し、15分後には危険レベルに到達しています。
この結果を見ると、真夏に子供やペットを残した状態でキー閉じ込みをしてしまうと危険ということに気づくのではないでしょうか。
「寝ているから」などというような理由で、車内に子供を残すのは大変危険。また、高齢者や個人の体力によっても危険度が増しますので注意が必要です。
短時間で車内温度上昇の危険
先の実験結果と照らし合わせてみてほしいのですが、エアコンを止めたミニバンの30分後の車内温度は40度を超えることがわかっています。
熱中症指数は10分後には厳重警戒レベルに到達することからも、ごく短時間で車内温度が高くなることがわかります。筆者自身もこの危険性だけは覚えておくべきだと思いました。
調査3.ダッシュボードに物を置いても大丈夫?
ダッシュボードにスマートフォンやクレヨン、ライターなどを置き、時間経過と状況変化を調べました。
クレヨンは1時間後に黒色から溶け出し、1時間20分後には全て流れて溶け出しました。100円ライターは2~3時間でケースに亀裂が生じ、ガスが抜けました。
スマートフォンは「高温注意」の警告画面に変わり、一部の機能を除いて使用不可能になりました。
レシートと消せるボールペンは筆者も経験アリ
実は、筆者も車内に感熱タイプのレシートと消せるボールペンでのメモ書きを放置してしまった経験があります。レシートは黒く変色してしまいましたし、メモ書きは退色していました。
CDなども車のダッシュボードに入れっぱなしにすることがあるので、これからは都度車から持ち出すようにしたいと思いました。
- 一般社団法人日本自動車連盟「真夏の車内温度-短時間で熱中症の危険!」(http://www.jaf.or.jp/eco-safety/safety/usertest/temperature/detail2.htm,2018年8月2日最終閲覧)
車内には子供を残さないようにしましょう
駐車場に止めている車は、夏場にドアを開けて乗り込むとシートが熱く、ハンドルが持てないということも多々あります。
漠然と「車内は熱くなる」ということはわかっていましたが、今回の実験結果を見て、わずかな時間でも車内温度は40度以上に上昇することがわかりました。これからは「5分後には熱中症警戒レベルの温度」であることを意識して、子供や物を放置しないことを守っていきたいです。
また、窓開けやサンシェードなど対策は講じたほうが良いこともわかりましたが、無意味に近いという結果も出ているので、常に危険と隣り合わせということも覚えておきたいと思いました。
また、「キー閉じ込み」を防ぐ方法も各々考えなければいけませんね。うっかりとしたミスが子供を危険にさらしてしまうので、気持ちを引き締めて車を利用しましょう。