医療費控除とは
医療費控除とは、1月から12月までの1年間に支払った医療費が10万円(総所得金額200万円未満なら総所得金額等の5%)を超えたとき、確定申告をすることで所得税の一部を取り戻せる制度です。
「総所得金額200万円」とは、会社員やパートタイマーなどの給与所得者なら年収311万6000円未満が目安。この年収を下回る場合は、1年間の医療費が10万円以下でも医療費控除の申請を検討するとよいでしょう。
なお、医療費は本人の分だけでなく、同一生計の家族の分も合算が可能です。同一生計とは必ずしも同居している必要はなく、たとえば遠くに住んでいる親に仕送りをして扶養している場合も当てはまります。
申請場所
医療費控除を申請するには、かかった医療費の情報をまとめた明細書と確定申告書を提出しなければいけません。提出先はお住まいの地域を管轄する税務署です。
書類は自宅で書いて郵送で提出することもできますし、税務署に行ってその場で作成し提出という手段もあります。また、自宅にPCがある人であれば、電子申告(e-tax)を利用することも可能です。
確定申告シーズンになると税務署に確定申告会場が設けられるので、直接相談しながら作成したい人は足を運んでみるとよいでしょう。ただ、時期によっては混雑しており、待ち時間が長くなる可能性があるので注意してください。
なお、管轄の税務署がわからなければ、国税庁のサイトで調べられます。
提出時期
確定申告の期間は通常2月16日~3月15日。曜日によっては多少前後します。ただし、会社員やパートタイマーなどの給与所得者で確定申告の義務がない人が「還付申告」をするなら、2月16日まで待つ必要はありません。
還付申告とは、払い過ぎた所得税を取り戻すために必要な手続き。医療費控除など年末調整で処理ができない所得控除を受けることで、毎月の給料から天引きされていた所得税が精算され、所得税の一部を還付金としてもらえるのです。
たとえば平成28年分の医療費について確定申告をしたいなら、年明けの平成29年1月から平成33年12月末まで提出が可能。3月15日を過ぎてもよいのです。また、過去5年までさかのぼって医療費控除を申請することもできます。5年間の猶予期間があるともいえます。
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm,2018年11月28日最終閲覧)
医療費控除の対象になるもの、ならないもの
医療費であれば何でも医療費控除の対象になるわけではありません。ここでは特に妊娠・出産でかかる医療費について、医療費控除の対象になるもの・ならないもの例をご紹介します。
簡単な判断基準を先にお伝えすると、「治療目的かそうでないか」です。国税庁のウェブサイトには、以下のように記載されています。
風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。 出典: www.nta.go.jp
医療費控除の対象になるもの
医療費控除の対象になるものは以下の通りです。いずれも健康保険などで補てんされた金額は差し引いて考えます。
- 妊婦健診の費用
- 分娩費・入院費
- 診察代・治療費
- 治療に必要な薬代
- 出産時などのタクシー代(緊急の場合のみ)
- 公共交通機関を使った通院費 など
医療費控除の対象にならないもの
次に、医療費控除の対象にならないものは以下の通りです。いずれも治療目的ではないことがわかります。
- 妊娠検査薬
- 出産準備のために購入したパジャマなど身の回りの品
- 自ら希望した場合の差額ベッド代
- 里帰り出産の際の帰省費用
- 赤ちゃんのおむつやミルク代 など
インフルエンザ・ロタウイルスの予防接種代は原則、対象外
インフルエンザの流行に備えて、秋口から予防接種を受けるお子さんは多いでしょう。任意なので公費は適用されず、全額自己負担で受けることになります。
インフルエンザに限らず、予防接種代は原則として医療費控除の対象外です。なぜならあくまで予防を目的とした医療費だからです。
0歳児のうちに任意で接種することが多いロタウイルスの予防接種代も医療費控除の対象外です。特にロタウイルスワクチンは1回1万円超など高価でですが、医療費控除に含まれないのは残念ですね。おたふく風邪や水痘の予防接種代についても同様です。
任意の予防接種でも医療費控除の対象となる場合あり
ただし、医師の判断により、インフルエンザの予防接種が医療費控除の対象となる場合があります。
例えば、「もともと疾患を持っており抵抗力が低下しているため、インフルエンザにかかりやすい場合」や、「インフルエンザにかかってしまうと持病が悪化して身体に悪影響を及ぼす場合がある」などです。
インフルエンザに感染することがとてもリスクな場合など、医師が必要と判断した際には医療費控除の対象となる場合があります。
ただし、赤ちゃんの健康状態によっては、医師から治療の一環として予防接種を薦められる場合も。たとえばB型肝炎が挙げられます。B型肝炎ワクチンは平成28年10月以降に定期接種化されましたが、それ以前に医師の薦めで受けた場合は、医療費控除の対象になる可能性があります。
- 国税庁「No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1124.htm,2018年11月28日最終閲覧)
- MBK連合健康保険組合「インフルエンザ予防接種費用補助事業Q&A」(http://www.mbk-rengo-kenpo.or.jp/hoken/influenza_qa.html#Anchor-10401,2018年11月28日最終閲覧)
きちんと調べて医療費控除を受けよう
妊娠・出産をした年には医療費をたくさん負担していると思われます。医療費控除の対象範囲や手続き方法を把握して、スムーズに申告できるようにしておきましょう。
年間で10万円にもならないとあきらめがちですが、家族の部分も合算すれば10万円を超えるかしれません。また、年収によっては年間の医療費が10万円以下でも医療費控除を受けられる可能性があります。
医療費の領収書はなくさずに保管しておき、手が空いた時に計算してみることをおすすめします。思いがけない節税のチャンスかもしれませんよ。