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監修:平野翔大

いよいよ始まった不妊治療の保険適用。年齢制限や回数制限について、産婦人科医が解説します

この4月より、不妊治療の保険適用が開始されました。保険適用になると安くなるなどのメリットが言われている反面、いろいろな変化が起き、人によってはデメリットになる事もありえます。前回は不妊治療の保険適用について、総論的に解説しました。今回はママリの中でも質問も多かった、生殖補助医療の「年齢制限」と「移行期の取扱い」について解説していきます。なお、本記事の内容は執筆時点での情報です。最新情報は、厚生労働省のホームページなどで確認してください。

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生殖補助医療の年齢制限

不妊治療が保険適応になるにあたり、教えていただきたいことがあります。

「治療開始時点での女性の年齢が◯歳」とありますが、治療開始とはどの状態のことを指すのか、知りたいです。
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「不妊治療保険適応リーフレット」より作成 ©厚生労働省

今回の保険適用においては、一般不妊治療では年齢制限が特にないものの、生殖補助医療においては年齢制限が設けられました。ここで「40歳」「43歳」という2つの年齢がキーとなります。それぞれ年度ではなく、誕生日を境目としたカウントである事には注意してください。

まず生殖補助医療を行うベースとなる、生殖補助医療管理料が「開始日において43歳未満であること」が条件とされました。生殖補助医療の「一連の治療」は、下図の「生殖補助医療」の、「採卵」の前に行う「採卵準備の薬品投与など」から、「胚移植・妊娠確認」までを指すとされており、つまり「採卵準備の開始」が「開始日」ということになります。
つまり、43歳未満でなければ生殖補助医療のいずれも保険診療で行うことはできない、ということになります。

「不妊治療保険適応リーフレット」より作成 ©厚生労働省

治療開始時点での年齢によって、回数制限がある治療も

胚移植は回数制限が設けられ、治療開始日が40歳未満なら6回まで、43歳未満なら3回まで保険診療で行えるとされました。この「回数」は「移植回数」でカウントされ、「採卵や体外受精・顕微授精の回数」ではありません。これは採卵や体外受精をしてもそれが移植できる胚にならなければ胚移植は行えず、採卵や体外受精・顕微授精の回数と胚移植の回数は一致しないためだと考えられます。採卵や体外受精・顕微授精には回数制限が設けられていませんが、特に採卵は女性への負担が大きいので、「最小限に留める」こととされています。

なお回数カウントについての細則として、以下の2つが重要です。
妊娠後の取扱について、胚移植により一度妊娠した後、再度胚移植をする場合はカウントはリセットされることとなりました。この回数は「女性1人あたり」ではなく、「1人の子どもあたり」ということになります。

また3月までに行った分や、4月以降に自費で行う分をこの回数制限に含むかについては、保険適用前のものや、自費で行うものとは通算しない、とされました。これまで生殖補助医療を行われていた方も、年齢などの条件を満たせば保険適用で不妊治療を行うことが可能です。

移行期間の取り扱い

国の指標だと採卵から移植、判定までが3月から4月跨ぐ場合移行期間で助成金が1回だけ使えるとか言ってますが、
保健所も市役所も4月になってみないと分かりませんっていわれちゃいました🥲
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「令和4年度診療報酬改定の概要 不妊Ⅰ」より作成 ©厚生労働省

保険適用になるにあたり、2022年4月1日~9月30日は「移行期間」としていくつかの特例が用意されています。

まず助成金に関わる経過措置として、年度をまたぐ1回の治療は助成金の対象とされています。保険診療で行う場合には、採卵から胚移植までの一連の治療が全て保険診療で行われる必要があり、「採卵は保険適応前に行ったが、胚移植を保険適用で行う」というのは原則認められません。

このため、採卵から胚移植までが年度をまたぐ治療について、1回を助成金の対象として4月以降も支給可能とする、ということでスムーズに移行できるようにされています。

ただし保険適応以前に凍結した胚であっても、条件を満たせば保険適用での移植は可能とされており、これらを使えなくなることがないように配慮がされています。(なお、この移植は保険適用の上限回数にカウントされます。)

また移行期に年齢制限を超える女性についても特例があります。

4月1日~9月29日に43歳に達する女性(4月2日~9月30日が43歳の誕生日である女性)は、43歳に達してからの治療であっても、9月30日までに治療を開始していれば、1回の治療を保険診療で行えるとされました。同様に、40歳に達した後であっても、その後6回の治療を算定可能とされています。

保険適用外とされた治療について

最後に、今回保険適用が認められなかった治療についても解説していきます。今回の保険適用は、生殖医学会の生殖医学ガイドラインの推奨度に合わせて決められており、また特定不妊治療費助成事業と運用の原則は同一です。

今回保険適用または先進医療として認められなかった治療については、全て保険適用外ということになります。これらを行う場合は、一連の治療が全て自費となるため、「認められていない分だけ自費で行う」というのは認められず、「これに関わる採卵~胚移植の全てが自費」ということになります。

またこれらの治療は「不妊症」に対してのみ認められたものです。不妊症の診断はされていないが、将来の妊娠に備えて行う卵子凍結などの治療は対象になりません。ただし小児や若年女性のがんに伴う治療で妊孕性温存が必要な場合は、「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性 温存療法研究促進事業」における支援の対象となります。

※妊孕性(妊よう性):妊娠するために必要な能力(臓器と機能)のこと

妊娠を目的としていない胚凍結保存

これと同様に、「妊娠を目的としていない胚凍結保存」も保険診療の対象外です。例えば第一子を妊娠した後に、第二子を希望する事が決まっていれば、その間の胚凍結保存は保険で行えますが、意向が決まっていない場合の胚凍結保存は保険適用外になります。

なお、特定不妊治療費助成事業に引き続き、第三者の精子・卵子を用いた生殖補助医療、つまり非配偶者間人工授精(AID)、配偶子(卵子・精子)提供などは対象外です。

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まとめ

2回に分けて不妊治療の保険適用について解説しました。

不妊治療の保険適用は、多くの方にとって費用的負担の軽減につながる可能性があります。特に一般不妊治療については、これまで助成金もなかったものが保険適応となるため、大幅な負担軽減が見込めます。しかし、保険適用が決められるという事は、「適応でないものは全て自費」となり、この様な治療を行っていた方には負担増にもなりかねません。

また医療機関は「必ず保険適用しなければならない」というわけではありません。保険で行うクリニック、患者に応じて保険と自費を切り替えるクリニック、全て自費で行うクリニックが存在することになります。それぞれにメリット・デメリットが存在するので、事前に調べていく事がより重要になります。

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記事の監修

産婦人科医・産業医・医療ライター

平野翔大

医学部卒業後、急性期病院にて初期研修医・産婦人科医として勤務。現在はフリーランス医師として勤務しながら、医療ライターとしても活動。現在は父親の育児/育休支援をライフワークとしつつ、女性の健康・睡眠・ヘルスケアベンチャーなど様々な活動に携わる。

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