アートを通して学ぶ、レッジョ・エミリア教育
近年、世界各国の有名な教育機関で注目を浴びているレッジョ・エミリア教育。イタリア発祥のこの教育アプローチを取り入れた学校が世界の最優良校ベスト10にも名前を連ね、そのすごさが注目されています。だんだんと日本でも実践する保育園や幼稚園が出てきました。
始まり
レッジョ・エミリア教育の「レッジョ・エミリア」とはイタリア北部の小さな街の名前です。この街で第二次世界大戦後に始まった幼児教育への取り組みが、現在レッジョ・エミリア教育として知られるようになりました。
戦後の大変な環境の中、自分の子どもたちの教育のために、この街の人たちは協力して自力で幼稚園を建てました。
鉄くずやリサイクルごみの廃材、自然素材などをたくさん使ってアートを通して子どもたちの表現したい気持ちを自由に表現できる環境を整えました。そして親たちが協力し率先的に教育にかかわっていったのです。
これがレッジョ・エミリア教育の原点です。今でもこのアートを通して自由に表現し学ぶということが教育のアプローチとして使われています。
教育方針
レッジョ・エミリア教育では、アトリエリスタと呼ばれる芸術家が積極的に保育活動に参加します。そして教育の根底にあるのが、「子どもは100人いれば100人の個性があり、100の可能性がある」という信念です。子どもの個性を尊重しそれを最大限に生かす教育を行っているのが、レッジョ・エミリア教育なのです。
子どもが主体
レッジョ・エミリア教育では、子どもが主体となって学びます。「自然」や「雪」、「世界」などの大きなテーマの中で、具体的に何を学ぶかは、子供が発言したことや子どもが興味を持ったことを元に決められることが多くあります。
先生が一方的に雪について説明するのではなく、絵や文字、音などを通して、雪について自分が学んだことを表現し、発表していきます。自分が感じたことを表現するのに、アートがたくさん用いられています。
探求心をフル活用
乳幼児期の子どもは、自分が興味があることには、驚くぐらい集中し、いろいろなことを知りたがります。この探求心が「学びたい」につながると考えるのが、レッジョ・エミリア教育です。
何かについて発見し、答えを見つけ、また発見して、答えを見つけるという繰り返しで学んでいきます。子どもが自分から進んで、知りたいことをじっくりと学ぶということを大切に考えているのがレッジョ・エミリア教育なのですね。
教育アプローチ
子どもが主体となり、探求心をフル活用させて学ぶことは、どのように行われるのでしょう?
学習材料としてアートを使う
レッジョ・エミリア教育で、アートは教育の中心的な存在です。アートは、子どもが見たり感じたりしたことを表現するものとして、たくさん使われています。また、様々な質感や色、模様のアート材料が身の回りにあることで、子どもの新たな好奇心を引き出し、学びの機会を作っていきます。
アートは単に絵を描くだけではなく、拾ってきた落ち葉をさわってみたり、火山の模型に絵の具のマグマを流してみたりという実験なども含まれています。実際に触り、目で見ることで、楽しく学ぶ機会になるのです。
プロジェクト活動
レッジョ・エミリア教育の中心にあるのがプロジェクト活動です。プロジェクトには様々なテーマがあり、長い時間の中で、お友達と一緒に考え、話し合って進めていきます。何かをじっくり観察したり、間違いをみつけたり、また話し合ったりして、プロジェクトが進んでいきます。
たとえば、お遊戯をする時も、お遊戯のテーマに関した話を聞き、そのテーマの遊びをし、お遊戯のストーリーを子供たちが考え、お遊戯をし、お互いに見て楽しむというように、共同作業で学んでいきます。
毎日の活動記録
子どもの毎日の成長を把握するために、活動の様子を記録に残していきます。今日発した言葉、興味を持ったこと、普段とは違った表情などを、メモや動画、録音でしっかりと記録を残します。
このような毎日の記録から、今、子どもが興味を持っていることや得意分野、学んだことや考えたことなどをしっかりと把握することができ、それを伸ばすことができるのです。また、この記録をもとに、次の日のカリキュラムが考えられたりします。
毎日の活動記録を残すことで子どもの関心分野を把握し、それが学びに生かされているというのは家庭でもマネしたいアプローチですね。
日本でのレッジョ・エミリア教育
子どもが主体になり、探求心で学んでいくというレッジョ・エミリア教育は、近年日本でも広がってきています。
大和幼稚園
東京・中野にあるレッジョ・エミリオ教育を取り入れている幼稚園です。都内にあっても、自然とふれあいやお外での遊びを中心にした活動がたくさんあります。プロジェクト活動が盛んで、子どもたちが一緒に学ぶことを大切にしています。
今までには、大きなケーキ作りの工作や、ちびくろサンボの本をもとにしたジャングル作りを行いました。お米作りやじゃが芋ほりなどの自然の中での学びもたくさんあります。
まちの保育園
子どもたちのために、園、親、地域の人が対話し、交流する環境が大切だと考える保育園。なんと保育園の入り口においしいパンやランチを楽しめるレストランカフェがあります!地域の人や保護者と保育園が一体となり、子どもの成長を支えている保育園です。
保育時間も、月180時間、月220時間などの時間制で、開園時間内で好きな時にお見送り、お迎えができるユニークなシステムを取り入れています。小竹向原、六本木、吉祥寺に3園あります。
代沢インターナショナルスクール
東京・代沢にあるインターナショナルスクール。18か月から6歳までの保育をしていて、代沢と大山にキャンパスがあります。子どもたちが学校に合わせて学ぶのではなく、学校が子供たちに合わせて教育をしていくことを重視しています。英語のほか、音楽、サイエンス、運動、アート、数学、野外アクティビィなど、プログラムも豊富です。
子どもが主体になり、探求心で学ぶ
子どもはなぜ?なぜ?という探求心のかたまりで、興味がわけば自然と自分からいろんなことを学んでいきます。学校や先生が今日はこれを学ぶという枠を決めるのではなく、子どもが自ら学ぼうとする環境を作ってあげることが、実は1番いい学びのサポートなのかもしれません。
レッジョ・エミリア教育は、そんなサポート環境が整っている教育アプローチのようです。レッジョ・エミリア教育はまだまだ日本では新しい教育アプローチですが、子供がすくすくと成長できる幼稚園や保育園がもっと増えていくといいですね。