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赤ちゃんを抱っこした一人の女性
遠くから見ても明らかに薄着の女性は、泣いてる赤ちゃんを抱っこひもで抱え寝かしつけていました。体を揺らしても、背中をトントンしても、泣きやむようすがない赤ちゃん。
泣き声からして生後数か月。気になって近くを通り、横目で見た彼女の顔色は真っ青で「薄着だったから」という理由だけではないことは、現在進行形で子育てをしている私にははっきりわかりました。通り過ぎてから振り返ったときの彼女の体は止まって、トントンしていた手に力は入っていませんでした。
月明かりに照らされた彼女は、今にも壊れてしまいそうでした。まるで当時の私を見ているようで…思わず戻って声をかけました。もし、このとき立ち去っていたら「声をかければ良かった」そう後悔していたと思います。
突然泣き出す女性
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私は、数か月前何をしても寝ない娘とともにそのまま朝を向かえたことを思い出しました。心も体も疲れ切って、「何で寝てくれないの?」「泣きたいのは私の方だよ」と言葉も分からない娘を心の中で責めては自己嫌悪になった、あの日々のことを。半分当時の私に重ねて「お疲れさまです」そう言うと…彼女の瞳にたまった最初の涙が流れ落ちました。
そして彼女からボロボロと大粒の涙がとめどなくあふれては落ちていきました。声も上げず、ただ涙を流す彼女を見ると、胸が苦しくなりました。こんなふうに“他人の私の前でさえ涙を抑えられない状態”になってしまう程、頑張ってきたのでしょう。
「母親」ってなに?
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2人出産した私も、泣いている娘の言葉が分かればいいのに…そう何度も思いました。「寒い?暑い?」「おなかがすいたの?」「眠たいの?」と、泣くことでしか意思を伝える術を知らない娘に対し話しかけていた当時の私は、自分の無力さにいつも泣いていました。
今、目の前にいる彼女は、まるで当時の私の様でした。子どもを産んだ以上子育てをして「当たり前」、親になった以上子育てに伴う頑張りは当たり前、そんな呪いの様な呪文をいつも唱えていました。しかし、今でこそ思うのは、その頑張りは「当たり前にできること」ではないということです。
寝ない子どもを何時間も抱っこすること、自分の意志と関係なく母乳が出る人がいること、ひたすら赤ちゃんが泣き続けることを…出産するまで私は知りませんでした。
母親になった瞬間「全てをこなしてください」と言われたとして、誰が完璧にできるでしょうか。だからこそ、風邪をひかない様に防寒対策すること、授乳に影響しない様に母親が飲食に気を遣うこと、赤ちゃんに寄り添うこと、ひとつできていれば十分“母親”だと私は思うのです。
執筆:ぼめそ
2児の母として子育てに励みながら、インスタグラムにて日々のできごとを漫画で発信しています。