©ママリ
👉【1話から読む】新1年生になった娘は登校拒否児なりかけだった
先生との二人三脚ミッションが始まる朝。期待と不安を胸に下駄箱へ向かうと、先生は約束通り笑顔で待っていた。先生はユイの興味を引く言葉で「一緒に行こう!」と誘ってくれる。そして、遂に訪れた奇跡の瞬間が訪れたのだった。
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バトンタッチの朝、揺れる心
先生に「やりましょう!」と力強く言ってもらえた翌朝。私の心は、期待と不安でぐちゃぐちゃだった。
(本当に先生は来てくれる? ユイは行ってくれるかな…)
希望と恐怖が交互に押し寄せる。
いつも通りユイの手を引き家を出る。今日のミッションは「下駄箱まで」。そこからは先生にバトンタッチだ。
ユイの足取りは重いが、私の足は少し軽い。でも心臓は昨日より激しくドキドキしていた。
そして、運命の下駄箱へ。周囲を見回すと――いた!メンタルケアの先生が、優しい笑顔で立って待っていてくれたのだ!
「おはようございます、お母さん、ユイさん!」
その笑顔に、張り詰めていた糸が少し緩んだ気がした。
小さな抵抗と、母の覚悟
先生は私に目配せし、ユイの前にしゃがみ込む。
「ユイさん、おはよう!元気に来たね!」
ユイは私の後ろに隠れ、先生を警戒している。まあ、そう簡単にはいかない。
先生は「教室まで一緒に行こうか!」と優しく言った後、
「今日はね、1時間目に校庭で春の草花を探すんだって!楽しみだね!」
と声を弾ませた。
ユイが少しピクッと反応した。草花はユイの好きなものだ。
でも、やっぱり
「……やだ。ママと、いく……」
と小さな声で私の足にしがみつく。ああ、ダメか…心が揺らぐ。
先生は諦めず
「ママはお仕事だから、先生と行こう?草花探し、先生も一緒にするから!」
とユイの気持ちを受け止めつつ導こうとしてくれる。私も心を鬼にし
「ユイ、先生と頑張って。ママはバイバイだよ」
と必死で言い聞かせた。
奇跡の一歩!涙で見送る小さな背中
そんなやり取りを数日繰り返しただろうか。
ユイの抵抗は相変わらずだったが、先生の粘り強い声かけと私の(内心グラグラの)毅然とした態度が効いてきたのか、ある朝、奇跡が起きた。
先生「ユイさん、おはよう!今日は図書室に新しい動物の大きな絵本が入ったんだって!見に行ってみない?」
その言葉に、ユイの目がキラッと光った気がした。そして、私にしがみつく力が、ほんの少しだけ弱まった。
先生「さあ、行こうか!」
先生がそっと手を差し出すと、ユイは……ためらいながらも、その手を、小さな手で握り返したのだ!
「……!」
息をのむ私を尻目に、先生は「じゃあ、お母さん、行ってきますね!」と私に笑顔を向け、ユイの手を引いてゆっくりと教室の方へ歩き始めた。
ユイは、まだ少し不安そうな顔で何度も私を振り返ったけれど、足を止めることはなかった。
先生と、小さなユイの後ろ姿が、廊下の向こうに消えていく。
その光景を見届けた瞬間、私の目から、ぶわっと涙が溢れ出した。止まらなかった。
(行った……!ユイが、私がいなくても、教室に向かって歩いて行った……!)
ほんの数メートル。されど、それは私とユイにとって、とてつもなく大きな、大きな一歩だった。
連携が生んだ、確かな前進
母親と先生の粘り強い連携、そして諦めない姿勢が、ついにユイさんの心に確かな変化をもたらしました。
母親から離れ、先生と手をつないで教室へ向かったその一歩は、小さなものに見えても、親子にとって計り知れないほど大きな前進です。
周囲の温かいサポートと適切な働きかけが、子どもの中に秘められた力を引き出し、成長を促すことをこの場面は教えてくれます。
完全な解決には至らずとも、この成功体験が、今後の困難を乗り越えるための大きな希望の光となることでしょう。